音楽は、悲しいことを悲しいままにしておける
音楽は、悲しいことを悲しいままにしておける。
物語は何かを正す必要がある。
物語のそれは、
正義が悪を滅ぼすことかもしれないし、
誰かと誰かが結ばれることかもしれないし、
大切な人を失った悲しみを乗り越えることかもしれない。
何かはわからないけど、何かが終わったり、何かが変化しないと、物語は終われない。
一方で音楽は悲しいことを悲しいままにしておける。
悲しくて、悲しくて悲しくて、悲しいです、って言って終われる。
それがいいなって思う。
悲しみなんて、そう簡単に癒されるもんじゃない。
何年も、何十年もかかることだってある。
その間ずっと悲しんでなんていられない。
楽しく過ごしているその時も、感情の波の底の方を流れている冷たい水に、気づかないふりをしている。
前向きなことなんて何もなくて、布団の中で丸くなって、悲しむことでしか癒されないことだってある。
悲しくて悲しくて、悲しいです、っていうだけの音楽を聴いて、それでやっと、ああ、悲しんでもいいんだ、って思える。
音楽は心臓に温かい銃口を刺して、引き金を引いてくれる。
背中を流れる冷たい血液がずっと自分の中にあったことを気づかせてくれる。
その冷たさが自分を生かしていたことにも。
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