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初任給の動向

確かに、1990年8月の提言によって、初任給が据え置かれ、「安い労働力」となったという分析は「その通り」というほかにない。
企業は、研究機関としての「大学」ではなく、「勤勉さ・従順さ」の篩(ふるい)としての「大学」に期待した。
だからこそ、社内で教育することを前提に「何物でもない学生」を最も安い賃金で調達することを選んだ、という事実は、企業人で後輩を何人か見てきた人であれば、自然な受け止めであるとも言える。
一方で今年、「初任給」が瞬く間に引きあがった。
初任給上げラッシュ、30万円台も 国際競争備え(産経新聞) - Yahoo!ニュース
大林組、ベア平均2万円で賃上げ6% 初任給5000円上げ - 日本経済新聞 (nikkei.com)
極洋、年収2割引き上げ 大卒初任給は3割増の27万円台に - 日本経済新聞 (nikkei.com)
大手銀行は初任給25万円超え、なぜ大幅アップ? - 日本経済新聞 (nikkei.com)


上記のニュースから抜粋した大卒初任給

  • セガ 30万円台

  • ユニクロ 39万円

  • 任天堂 25万6千円

  • DMG森精機 30万円(大学院博士47万5千円)

  • 三井住友銀行 25万5千円

  • みずほFG 26万円

  • 大林組 25万円

  • 極洋 27万円


2023年は、連合の集中回答日の3月15日を待たない報道が相次いだ年であったという印象も強い。産業や個々の企業によって、労使関係の文化そのものは大きく異なるが、2017年と同様に、組合側の要求を超える回答を提示した会社もあるようである。
島津製作所 4月から平均5・7%昇給(産経新聞) - Yahoo!ニュース
JR西、初任給2万~3万円引き上げへ 満額回答 3年ぶりのベアも(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

以下は、2017年12月の記事である。官製団交と呼ばれ始めたころであって、安倍首相は経済界に対し「3%の賃上げ」を要請し、2018年度税制改正では賃上げ促進税制の拡充を図ったが、それでも経済界も労働界も冷ややかであったことは記憶に新しい。
目指すべき賃上げ率は定昇込みなら4%だ | 政策 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

一方、海外に目をやると「どこ吹く風」である。
確かに、若い人に「どこでも暮らしていく自信」さえあれば、国内の教育を受け、就労する意味など、まったくないのである。
【シンガポール】大卒初任給が上昇、経営大が月49万円で最高(NNA) - Yahoo!ニュース

2024年度春に大学を卒業する学生向けの採用が、この3月1日に解禁された。今は大学を卒業すれば、「リモートでどこでも働ける」という職種に就ける権利を得る。
かつての「安い労働力」としての新卒は、RPAを代表する自動化に代えることができる。
本当の意味で、若く柔軟な発想を持っている人材としての「何物でもない学生」に、期待が集まっているのかもしれない。
新潟 就活解禁 人手不足で売り手市場 初任給引き上げも | NHK
採用説明会解禁 理系人材争奪戦へ…半導体業界は好待遇提示:地域ニュース : 読売新聞 (yomiuri.co.jp)


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