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トレンドは投高打低?:数字で読み解くMLB2022年シーズン

2022年もやっぱり最高に楽しかったMLBでした。個々の選手レベルだとジャッジの歴史的快挙、ゴルシュミのMVP級活躍、プホルスのこれ以上ない見事な引退の花道、我らが大谷選手のダブル規定達成、バーランダーのTJからの復帰からのCY賞、それ以外にもさまざまな新しいタレントとの出会いと盛り沢山でございました。そして何といってもポストシーズンの盛り上がり。個人的ハイライトはブライス・ハーパーがNLCSで放った逆転ホームランでしたが、それ以外にも見どころ満載のシーズンでした。

では少し俯瞰してMLB2022年シーズンとはこの10年程の流れの中でどの様な年であったのかを数字で読み解っていきたいと思います。

バッティング

この何年かの打率低下傾向が今年も継続し2010年以降では最低打率を記録

皆さんが応援しているチームにも何でこんなに打率が低いのに試合に出れてんだよと不思議に思う選手がいたと思いますが、特に2020年以降に顕著になってきたようです。

こちらは規定打席に達した中で打率が1割台(青)2割2分以下(オレンジ)の打者の数

OBPも2010年以降最低、OPSは下から2番目

ホームランは2019年に史上最高の6776本を記録した後に徐々に減少傾向。2020年は60試合の短縮シーズンだったため通常シーズンの162試合と比較するために2.7掛けた数字を使っています(以下同様)。

三振もホームランと同じく2019年に最高値を記録した後に徐々に減少傾向

この数字から明らかなように2014年が最も投高打低が顕著な年でそれ以降打者が盛り返していきましたが、それにはフライボール革命が関係していたのではと推測されます。フライボール革命では打率より長打を重視するので打率はそこまで上がらないが長打率が上がりホームラン数が増えOPSも上がった。しかし2020年以降打者成績は低下しています。2020年以降の投高打低傾向は何に起因するのか気になるところで次に2010年以降のピッチングについて見ていきます。

ピッチング

防御率

ご覧の通りフライボール革命と同時に4点台に悪化した防御率でしたが2022年は6年振りに3点台に減少

こちらは規定投球回数に達した先発投手の中で防護率1点台と2点台の投手数ですが、ご覧の通り今年は2014年に次いで多い年でした。

球種割合

この何年かほぼ横ばい傾向のフォーシームですが今年は少し減少。2シーム・シンカーはフライボール革命で減りましたが、その後ほぼ同じ割合を維持しています。最も大きな変化はスライダーで2022年初めて20%を超えました。この数字には縦スラ、横スラ、スイーパーなど全てのタイプのスライダーが含まれています。チェンジアップ、カーブ、スプリットはほぼ横ばいでカッターは少し増えています。もしかすると数年後にはフォーシームが30%を割りスライダーが25%を超えるかもしれません。

球速

次にフォーシームの球速ですが、この何年かずっと上昇傾向にあります。2022年の平均はキロ換算だと約151キロ。

平均球速

そしてこちらが100マイルを超える球速を投げる投手数と投球数

見てお分かりのように100マイルを超える速球を投げる投手の数が去年から急激に増え、投球数が初めて2000球を超えました。

今年最も100マイル超えの速球を投げたのはツインズのヨアン・デュラン投手で392球。

67.2イニングを投げて防護率1.86奪三振89と素晴らしい活躍でした。

チーム別だとカブスとブリュワーズを除いた28チームに最低一人は100マイル以上の速球を投げるピッチャーがいました。ほぼ各チームに最低一人はいると言って良いでしょう。

何気に2016年も2000近い球数で凄いのですが、この時はチャップマン一人で572球投げていました。そのチャップマンの全盛期が終わりを告げた2022年に100マイル超えの新たなチャプターに入ったのは何とも皮肉であり象徴的です。

ポストシーズンを見ていた方はほとんどのチームの勝ちパターンのリリーフに100マイルを超える速球を投げる投手が次から次に出てくる印象を持たれたと思います。ちなみに2022年ポストシーズンでの速球の平均球速は95.3マイル(153.4キロ)。リリーフは100マイル超えの速球を投げるのが当たり前な時代が到来しています。

回転数

こちらはフォーシームの回転数が2700以上の投球数。2022年はぐっと下がっているのは粘着物質取り締まりの影響でしょう。そう考えると回転数と球速は強い相関関係がないと言えます。

2020年はエライことになっていますが(短縮シーズンだったので通常シーズンと同じになるように補正してます)その20%以上をこの年CY賞を取ったトレバー・バウアーが占めています。2021年のシーズン途中から粘着物質取り締まりが始まりましたが、取り締まり開始前に2700以上の高いスピンレートを連発していたのもバウアーでした。その後私生活の問題で出場停止になってしまったのはご存知の通り。

高速スライダー

こちらは150キロ以上のスライダーの投球数。ご覧の通り2016年に爆上がりして(そのうちの多くは今年エンゼルスに在籍したロレンゼン)その後少し落ち込みましたが、2019年以降安定して多く投げられています。最も多く投げているのはデグロム様ですが、それ以外の多くの投手もものにしつつあるようです。これも今後増加していくと思われます。

デグロム様高速スライダー


今回調べることは出来ませんでしたが変化量も以前より増しているのではと推測されます。特にスライダーに関しては大谷選手も投げるスイーパーと呼ばれるベースの内から外まで大きく動くタイプの球を投げる投手が増えてきているよう。

まとめ

以上見てきたここ数年のピッチングパフォーマンスの向上は科学的トレーニングによるフィジカルの強化に加え、最新テクノロジーを使用したトレーニングにより投球メカニクスやピッチデザインをインプルーブした結果であるのではないでしょうか。またフライボール革命への対策としてホップ成分の強いフォーシームを持っている投手は高めに投げることを徹底させたり、VAAを意識したりと投手側からフライボール革命にどうアプローチしたら良いのか取り組んだ結果だと推測します。

こちらはミネソタツインズのジョー・ライアン投手の4シームの分布図ですが綺麗に高め中心に集まっています。ライアン投手は全投球の約7割が4シームで球速は平均92マイルとメジャー平均以下ですが被打率.174という不思議な投手。成功の理由は低いリリースポイントから高めに投げることで打者に浮き上がっているように見えることと分析されています。

Joe Ryan 4Seam

こちらは実際の投球動画。4シームを高めに投げておけば打たれない感じが良く分かります。しかも結構真ん中に行ってても空振り取れてますね。

脱線しましたが、要はこのような打者と投手の熾烈な争いが野球全体の技術を向上させていくのでしょう。

ルール改正

ここからは補足としてグラウンド外の出来事を少し。2015年にコミッショナーに就任したロブ・マンフレッド氏がMLBの人気回復の為に目指すのは試合時間の短縮化と活発な打撃戦で、その為に多くのルール改正をこれまで行っております。幾つか挙げればワンポイントピッチャーの廃止、ユニバーサルDH、投球時の粘着物質使用禁止、監督とコーチがマウンドに行く回数の制限など。しかし試合時間に関しては成果は上がらず2021年にはこれまでで最長を記録してしまいましたが、2022年は僅かながらではありますが短縮化に成功しています。

活発な打撃戦に関しては2019年を頂点に成功したともいえます。ただしこれに関してはフライボール革命の影響でしょう。そしてここ数年はまた投手が優勢になってきているのはこれまで見てきた通りであります。

来年からはシフトの禁止とピッチクロックの導入が始まります。ピッチクロックで試合時間は短縮するでしょうが、シフト禁止のせいでヒットが多くなることも予想されるのでトータルとしてどうなるかは分かりません。

MLB機構の陰謀?

MLB機構としてルール改正以外で出来ることはボールの変更です。MLBの全ての試合ではローリングス製のボールが使われていますが、ローリングスは数年前にMLBに買収されているのでボールの変更などお手の物でしょう。ボールの反発係数を変えたり縫い目の高さや大きさを変えることで打者有利にも投手有利にすることが可能。数年前にはボールが以前より飛ぶようになったと言われていましたが、今年は飛ばないボールが使われたと言われています。個人的にはなぜ今年は飛ばないボールになったのかがとても興味深い。とにかく時間短縮を目指しているのか、もしくは粘着物質取り締まりで投手が不利になったので、その分ボールを飛ばなくして投打のバランスを取ったのか?まあ真相は私には分かりませんが必ず何かしらの狙いがあってのことだと思われます。

まあその中で本塁打記録を達成したジャッジは凄いのですが、最近の記事では今年使われたボールは3種類あって、そのうち飛ぶボールがオールスターゲームやポストシーズンとレギュラーシーズンでのヤンキースタジアムで多く使われていたのではないかというものがあり事態をややこしくしています。個人的にはこの件に関しては余り興味がないのでこのへんでやめておきます。

最後に

最後まで読んでいただきありがとうございました。またどこかの球場でお会いしましょう。


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