最高打球速度王スタントンの牙城を崩すのはこの男-オニール・クルーズ
メジャーの各球場には2015年以来スタットキャストが設置され、いろいろなデータが計測されています。その中の一つに最高打球速度Exit Velocity、略してEVがありますが、計測が始まって以来ヤンキースのジャンカルロ・スタントン選手が7年連続でキングの座を守っています。
それ以外の選手だとジャッジ、トラウト、アロンゾ、そして勿論大谷選手などの現在メジャーを代表する強打者が高い数値を出しますが、こと最高打球速度に関してはスタントン選手を超える選手はいませんでした。
しかし今年ようやくその牙城を崩す選手が出てきました。ピッツバーグパイレーツのオニール・クルーズ選手です。
アメリカでのEV計測事情
クルーズ選手の前にEVに関して少し。日本ではどうか分からないのですがアメリカだとEVは非常に重要視されていて、ちょっと気の利いたトレーニング施設にはレーダーガンが設置されていて瞬時に打球速度が表示されるようになっています。
トレーニング施設での打球速度表示の例:
それ以外にもHitTraxという打球速度、角度、距離がシミュレート出来るソフトが入っている施設も多くあります。うちの子供のチームが練習していた施設にもHitTraxが入っていて、各選手は自分の自己ベストを出せるように練習しています。ゲーム感覚でチームメイトと競争出来るので、楽しみながら練習出来るのが良いところです。
HitTrax参考動画:
更にレベルが上がるとピッチングのトラッキングシステムで有名なRapsodoのヒッティング版で打球速度、角度、回転数、回転軸などを計測します。うちの子は来年13歳なのですが、来春から入る新しいチームの練習施設にRapsodoがあるので楽しみです。
EVの重要性
EVがなぜ重要視されているかと言うと強い打球を打つことが良い打者になる条件だと考えられているからでしょう。至極単純明快です。技術的にボールの下にバットを入れてバックスピンをかけることで飛距離を出すというやり方もあるとは思いますが、まずは早いスイングスピードでボールを強く叩くことがまず大前提だということです。
こちらは野球のトレーニングで有名なドライブラインによるEVの重要性の解説動画
この動画ではバッティングにとって最も重要なBIG3を挙げ、バットスピードがその中でも一番重要だと解説してます。バットスピードはEVに直結します。
2022年EVランキング(9月23日付)
2022年8月23日の試合でオニール・クルーズ選手がスタットキャスト計測以来最速の122.4mphを記録しました。
これを書いているのが9月23日でまだ試合は残されていますが、スタントン選手の7年連続EVキングの牙城が崩れることになりそうです。スタントン選手は今年も119.8マイルの打球を打っていてクルーズ選手のこの一打がなければ今年もキングの座を守っていたと思われます。
飛ばないボールの影響?
ご存知のように今年から飛ばないボールに変更されたと言われており、スタントン選手の最高打球速度も過去7年の平均と比較すると1.4マイル落ちています。他の有力選手も今年は少し去年に比べ速度が落ちているので、もしかするとボール変更が打球速度に影響している可能性はあるかと思われます。その中でクルーズ選手がスタットキャスト計測以来最高値を出したのはとても重要です。
日本人選手のEV
ちなみに日本人選手のEVはどうなっているかというと今年メジャーに来た鈴木誠也選手の最速EVは111.3マイル。筒香選手の最速EVは去年記録した111.1マイル。ほぼ同じ数値ですね。鈴木選手の最速EV値は2022年規定打席到達した249人中115位。日本の中では強打で知られた両選手ですがメジャーにはとんでもないモンスター級の選手がたくさんいるということです。
そして大谷選手の今年の最速EV値は119.1マイルでクルーズ選手とスタントン選手に次いで全体3位。狂ってます。
オニール・クルーズ選手について
ドミニカ出身の23歳。身長201cm体重99キロ。MLB史上最も背の高いショートだそうです。
2015年16歳の時にドジャースとインターナショナルFAで契約をして、その後2017年にパイレーツにトレードされて現在に至ります。昨年2021年にメジャーデビューを果たし、今年からショートのレギュラーで試合に出ています。
お父さんもプロの野球選手でしたがマイナー止まりでした。名前はヤンキースで活躍したポール・オニールから取ったそうです。
クルーズ選手の凄さは打球速度だけではなく肩もやばいです。ショートからファーストに最速157キロの送球を記録しています。
足も速く、今年メジャー出場選手中12位。
グローブはEaston製の12インチ。ほとんどのミドルインフィルダーは11.5か11.75インチのグローブを使いますが、背が高く手も大きいので12インチでもクルーズ選手がしていると大きく見えませんね。
バットはVictus V271モデル。メイプル製で34インチ31oz。ちなみに同じ身長のアーロン・ジャッジ選手は35インチのバットを使用しています。
クルーズ選手は走攻守全てにおいて高いポテンシャルを見せるフィジカルビースト。現時点で打率215本塁打17OPS.725とまだまだ粗削りの選手ですが、今後確実性を増していけば大化けするのではと期待しています。
最後に
ピッツバーグパイレーツの試合の中継を日本で見る機会はあまりないかもしれませんが、この記事でオニール・クルーズ選手のこと、そしてEVのことを知ってもらえたら嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。