MLBのDHの話。ユニバーサルDHとは？
こんにちは。アメリカで子供がリトルリーグで野球をやっています。今回はリトルリーグではなくMLBについての小ネタを。
ユニバーサルDHとは？
昨年暮れに巨人原監督がセリーグにDH制を導入することを提言したことが話題になりましたが、実はMLBでもその話はあります。
現在MLBではアメリカン・リーグには1973年以降DH制が導入されていますがナショナル・リーグにはされていません。ナ・リーグにDH制を導入することをユニバーサルDHと言います。
この数年ナショナル・リーグにもDH制を導入しようという動きがあり、最近では現在のMLBの労使協定が２０２１年に期限切れになるので、その翌年２０２２年からの導入されるのではないかというのが有力説でした。
しかし今年に入ってかつてレッズとナショナルズのGM職につき現在は野球評論家でコラムニストのジム・ボーデンさんがナ・リーグのGM連中の間にはDH制が早ければ2021年に制定化されるだろうという説が強まっているとツイートしました。ジム・ボーデンさんはかなりの情報通で彼の情報は信憑性が高いことで有名です。
There is a growing belief amongst NL GM’s that the DH will be instituted for NL as early as 2021. FWIW.
— Jim Bowden (@JimBowdenGM) January 27, 2020
現役メジャー選手も興味津々
先日YouTubeにMLB公式サイトからレッズのロレンゼン、メッツのシンダーガード、カージナルスのフラハティ、Dバックスのデュプランティアの対談動画があがっていましたが、そこでの最初のお題が皆はユニバーサルDHについてどう思うでした。それだけ話題になっているという証拠です。ちなみにこの４人は全員ピッチャーで、特にロレンゼンは二刀流(two-way player)ですし、シンダーガードもバッティングが良いことで知られている選手なので、全員がユニバーサルDHには反対していました。
ナショナルリーグとアメリカンリーグの力関係
原監督のセリーグへのDH導入案の背景にはこの何年間かパリーグが交流戦と日本シリーズでセリーグを圧倒していることがあり、DH制を導入することによりセリーグを強くしたいという考えがあります。この２０年間の日本シリーズの成績はパリーグの１４勝６敗です。
ではMLBではどうでしょう。全てのワールドシリーズの歴史を見るとアメリカン・リーグが優勢ですが、それはかつてヤンキースが圧倒的な戦力を持って連覇した時代があったからで、この２０年間をみるとちょうど１０勝１０敗のイーブンです。
交流戦(インターリーグ)はア・リーグの１６勝４敗。ただしこの２年間はナ・リーグが勝っています。
オールスターゲームはア・リーグの１７勝３敗ですが、まあお祭りなのでここでは無視します。
では何故ユニバーサルDHを導入するのか？
ですのでナ・リーグにDH制を導入するのは力の均衡を取るのが一番の理由ではありません。そもそもユニバーサルDHは選手側からのリクエストのようです。強打が売りだが守備が苦手な選手、特に年を取ってきて打撃は衰えてないが守備が衰えてきた選手はDHとして生き残るしかありません。ナ・リーグがDH制を採用すれば枠は倍に増えます。特にここ数年FAした３０歳半ばの選手の契約が決まらないケースが増えてきていますが、ユニバーサルDHが実現すればDH枠の選手がメジャーで生き残る確率が高まります。もし実現しなければ日本や韓国に大物メジャーリーガーが行くことが増えるでしょう。
ユニバーサルDHが実現すればナ・リーグの打撃が活発化しホームランも増えます。これは現MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏が目指す野球人気復興のためにホームランの多い派手な打ち合いをする試合を多くすることにも合致します。
アメリカは高校・大学野球もDH制
アメリカでは高校野球と大学野球でもDH制を採用しています。アメリカではピッチャー以外やらない選手のことをピッチャー・オンリー、略してPOと言います。
ピッチャーとして凄く才能のある選手は15歳くらいからPOになり、そうすると一切バッティングと走塁の練習もしなくなります。万遍なく全てのことをやらせる日本式の育成方法と、その選手の得意分野での才能を最大限伸ばそうというアメリカ式の育成方法の違いかもしれません。ピッチャーに苦手なバッティングや走塁を無理にさせて怪我するリスクを回避する意味もあるようです。
実現する可能性は
ユニバーサルDHが実現する可能性は正直言って全く分かりません。この話題はずっと前から議論されていてもうすぐ実現されると言われていはいるが結局されないという歴史を辿ってきています。
ただし現MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏はとても積極的に改革をしていて、今年から採用されるワンポイントリリーフの廃止(３バッターミニマムルール)だったり、他にもプレイオフのフォーマット変更もプランにあるようです。ですのでマンフレッド氏がユニバーサルDHを採択する可能性はかなり高いのではと私は考えています。
おわりに
以上MLBのユニバーサルDHについてでした。もしこれが実現したらセリーグのDH制導入の強力な後押しになりますね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。この記事が皆さんのご参考になれば幸いです。