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ドゥダメルとシモンボリバルユースオーケストラーMambo!ー

Youtubeでラヴェルのボレロを様々な演者で聴き比べていた時のこと。この作品はベジャールのバレエとしても有名で、バレエ公演の場合にはダンサーの望むテンポが優先されるからなのか、演者によって選択されるテンポの違いが顕著であった。速めのテンポで推進力のある演奏に合わせたキレのある踊りも格好良いし、遅めのテンポをチョイスすることによって生じる独特の緊張感も良い。聴き比べ、見比べるポイントとして主にテンポ、それからどこからエンジンをかけてクライマックスを築くのかに着目していた。
そんな時に偶然関連動画に上がってきたドゥダメルのボレロに出会い、他の演奏との違いに驚いた。テンポが速いとか遅いとか、そんなことは印象に残らなくて、とにかくソリスト1人1人の個性が際立つ音楽作りに耳を奪われたような感覚。他のオーケストラでは“オーケストラ”という1つの有機体として全員一丸となって音楽を展開しているように感じられたが、ドゥダメルの指揮するボレロでは、ソロを受け持つ奏者がボレロのリズムから逸脱はこそしないものの、そのリズムが持つ時間を目一杯使って濃密な表現をしていた。淡々と進むのではなく、ある意味スリリング。聴き慣れたボレロに新しい光を当ててくれたような、鮮烈な演奏だった。
ドゥダメルってどんな人?と思って他の動画も見てみたところ、出てきたのはシモンボリバルユースオーケストラとの『マンボ』。これには完全なるノックアウト。ノリノリのオーケストラにノリノリの聴衆!一体何者なんだろう。幸せ溢れる演奏にすっかり魅了され、彼らのバックグラウンドに興味が湧いた。少し調べてみると、彼らがクラシック奏者としては特異な環境からスターダムに駆け上がったということがわかった。
シモンボリバルユースオーケストラの母体になっているのはベネズエラで行われている『エルシステマ』という公的融資による音楽教育プログラムで、音楽家のアブレウ博士によって「音楽の社会運動」の名の下に設立された。エルシステマの生徒の中には元ストリートチルドレンで麻薬の密売や強盗を経験したものもいるが、この音楽教育プログラムはこうした子どもを放課後に音楽に従事させることで更生し、犯罪から守る役割も果たしている。モットーとして“奏でて戦う”という言葉を掲げているとのこと。
彼らの圧倒的なパワーの背景には、どん底を見た経験があったのだ。そして生命力溢れる演奏で“音楽は人生を変え得る”ということを証明してくれている。元気を出したいときには是非この演奏を!

https://youtu.be/NYvEvP2cmdk

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