福島県浜通り 2 第1原発
福島第1原発の謎
プロローグ
伝手があり、福島第一原発を訪れた。
福島県の食の魅力に取り憑かれた自分は、
”あの震災から11年経過した福島”に殊更に重きを置いた目線で、
福島に向き合う気はない。
しかし、一方で、
福島に関わる方々とのおつきあいが広がり
深まる中で、
この県のステータスをきちんと受け止め直すことの重要性も強く感じ始めている。
そのような中、仕事仲間を通じてそのチャンスが巡り、今回の訪問に。
原発事故のなぜ
東電は今、慎重に廃炉作業を進めつつある。
多くの福島県在住の方が
その苛酷な作業に携わっている。
第1号機から第6号機まで、
それぞれの原子炉の状況は異なる。
廃炉作業が進め方もそれぞれ異なっている。
第5、第6号機は、やや標高が高いところにあり、当時稼働していなかったため、致命的な損傷には遭わず、廃炉作業自体は当分先送りの状況になっている。
人災
今回の大事故の着眼点その1。
M9の激震の揺れでも原子炉は平常運転を保つことができたということ。通常の電気回路はダウンしたが、非常用のディーゼル発電回路が作動した。
着眼点その2。
その後の想像を絶する大津波によって、
非常用の電源供給もストップしてしまい、
原子炉建屋内の冷却がストップ。
急激な温度上昇と
それに伴う水素ガスの大量発生により、
第1、第3号機が爆発。
引火して第4号機も爆発を起こしてしまう。
原子炉建屋内の放射能が外部にダダ漏れしていった…。
参照:燃料デブリとは
燃料デブリとは、元々の燃料(放射性物質)が加熱して炉内の構造物を溶かして冷えた後に出来上がった個体物。恐ろしい放射能を放つ個体物のこと。
爆発後に各原子炉建屋内にこの燃料デブリが出来上がった。
https://www.tepco.co.jp/decommission/towards_decommissioning/Things_you_should_know_more_about_decommissioning/answer-18-j.html
汚染水を処理水に
原子炉建屋内に雨が降り、地下水が入り込む。
すると、その水たちは汚染水になる。
放っておけば、その水は溢れ出し、
すぐに海に流れ出してしまう。
汚染水の放射性物質濃度低減は、
火急の解決課題だった。
調べると、
2013年度から浄化処理を実施がスタートし、
2015年度まで不安定な状態(安定的に線量を低減できない状態)が続く。
2016年度からは処理能力が大幅に拡大し、濃度限度超過の発生割合が少なくなった。
その後も安定した安全性は確保されず。
沿岸水産物への不安感が未だ払拭されない状況を生み出している。
放射性物質のさらなる低減のために
多核種除去設備(advanced liquid processing system、ALPS)による
再処理が行われ、貯蔵タンクに処理水を貯めることで現在に至っている。
処理水の貯蔵タンクの設置は完了しているが、
2021年8月段階で保管量が95%程度になっており、予断を許さない状況。一応2023年春頃までで満杯になると予測している。それからどうするんでしょうね。
ALPS処理水によって処理された水は、すでに安全基準をクリアしており、β線系の放射能はほぼ完全に除去され、Γ系放射能トリチウムが極微量残存する、という説明を経産省の方がしていた。
そして、2023年春から海洋放出が始まる予定となっています。
https://www.buzzfeed.com/jp/yutochiba/syorisui-2021-04-13
科学的に正しく理解するために
経産省と東電はタッグを組んで、取り返しのつかない事故への対応に日々取り組んでいるように見えます。
しかし、素人が見ていても、起きてしまった問題の内容の難しさ(はっきり目に見えないもどかしさ)と、実際の善後策の解決力の不安定さが目についてしまいます。
風評被害が起きてしまう原因をもっと突きつめて考えた方が良いと思う。処理水の海洋放水について、当然、立場ごとの意見の違いが際立っている。最も重要なことは?目を背けて生きて行ける多くの日本人たちの理解をどう勝ち取るか。頭で正しく理解することと気持ちの上で受け容れられるようになることは、それぞれ全く異なった文脈の中にあり、この事故に直接的間接的に関わる全ての人たちの気持ちの文脈に沿った伝え方をコミュニケーションのベースの考え方に置かなければならない。いわんや、正しく理解しようという無関心派にまで届かせることは極めて困難な道のりのように思える。心ある人たちの時間も金も熱意もまだまだ必要である、と思う。
蛇足ですが。
仕事柄、コミュニケーション、特に広報戦略の組み立て(ターゲットよ伝え方)がますます重要になってくると感じましたね。
エピローグ
今回の第1原発見学を通じて、勉強が全く足りない私でさえ、思ったことがある。
「日本国内に原発インフラを安全に建設できる土地はない」のでは?
想像力の欠如なのか、
読みの甘さなのか、
東電の致命的なミステイクは、
「岩盤の強さを求めて、津波のリスクを考えなかったこと」
だから改めて書こう。これは人災。
想定外を作らないインフラコンセプト開発創造がまず必要。
日本の原発建設は、インフラのデザイン・設計・実現できる技術力・研究開発力、さらには最終的には廃炉を描いたシナリオの想定までを具体的に描けぬままに建設を進めてきたことが実情のように見える。
周辺地域の経済活性化と引き換えに、
地元住民を巻き添えにして大災害の種を蒔いてきたのではないだろうか?
現在も、福島原発廃炉作業に携わる大半は福島県人だ。
裁判は既に結審されている。
東電の現場の人々はこれからも半永久的にこの十字架を背負って行くことになる。
そして、犠牲になられた方々は戻ってはこない。