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水中の小さな泡がウイルスを倒す!? 〜マイクロバブルとナノバブルの不思議

担当:Ume

みなさま、こんにちは、Umeです。
暖かなお正月でしたが、みなさまはどのようにお過ごしになられたでしょうか。
Umeは毎年恒例、近所のお寺で大晦日に除夜の鐘つきに参加して、おごそかな鐘の音を聞きながら新しい年を迎えておりました。

さて今回は「泡」のお話をさせていただきます。
泡と菌の意外な関係。インフルエンザも流行っていますので、今回の話がご参考になれば嬉しいです。

 
普段、私たちが何気なく目にしている「泡」。
お風呂や炭酸飲料で見かける泡は、すぐに水面に上がって消えてしまいます。

でもこの泡の中には、私たちの生活や健康、さらには環境を劇的に変える可能性を秘めた特別な泡があります。

それが「マイクロバブル」と「ナノバブル」。
 

マイクロバブルとナノバブルとは?

泡と聞いてイメージするのは、大きくて目で見える普通の泡だと思います。
 
一方、マイクロバブルはそれよりはるかに小さく、直径が0.1ミリメートル以下で、顕微鏡を使わないと見えないほどの大きさです。
 さらにナノバブルは、ナノメートル単位(1ナノメートル=1ミリメートルの100万分の1)の大きさしかありません。
 
これほど小さなミクロの世界の泡になると、普通の泡とはまったく違う振る舞いや性質を持つようになります。
 
特に、マイクロバブルやナノバブルは「菌やウイルスを引き寄せて破壊する力」を持つことで注目されていて、この現象は、農業や医療、さらには環境分野においても応用が期待されています。
 

泡がウイルスを引き寄せる仕組み

現在、インフルエンザやさまざまな感染症が話題になっていますが、その原因となるウイルスや菌は目に見えないほど小さく、非常に厄介な存在です。
 
でも、マイクロバブルはこの菌やウイルスを「電気の力」で引き寄せることができるのです。
 
マイクロバブルの表面は「負の電荷(マイナス)」を帯びています。一方、ウイルスや菌の表面には「正の電荷(プラス)」や「異なる電荷」が含まれている場合が多く、これにより、マイクロバブルはまるで磁石のようにウイルスを引き寄せて表面にくっつけます。
 
この「静電気的な引力」が、泡の消毒効果の第一歩です。

■消える瞬間に生まれる力

そしてマイクロバブルの真の力は、泡が消える瞬間に発揮されます。

 普通の泡が消えるとき、特に何も起きないように見えますが、マイクロバブルが消滅する際には非常に特殊な現象が起こるのです。 泡が消える瞬間、内部では「太陽の表面に匹敵する高温(摂氏数千度)」と、「深海底以上の高圧」が一瞬だけ発生するのです。 

この状態は非常にエネルギーが高く、ウイルスはその存在が危ぶまれる環境に身を置くことになります。

さらには化学反応が起こりやすい条件となって、「フリーラジカル」と呼ばれる反応性の高い分子が生成されます。

 ■フリーラジカルの働きとペアの性質

フリーラジカルは分子の中の電子がペアになっていないので、不安定で非常に反応しやすい状態にあるというちょっとユニークな分子です。 

この不安定さゆえに、近くの分子や原子とすぐに化学反応を起こし、電子を奪ったり他の分子を壊したりします。 

通常、電子は2つ1組の「ペア」を作って安定します。このペアの状態では、電子は落ち着いていて、周囲の分子や原子に影響を与えません。フリーラジカルは、「電子が足りない」という状態なので、何かとくっついて足りない部分を補おうと必死です。

そのため、近くにある菌やウイルスなどの分子にすぐに反応して、分子を壊してしまいます。 インフルエンザの菌も分子でできていますので、フリーラジカルがその菌の「細胞膜」(バリアみたいな部分)を壊すことで、菌は生きられなくなってしまうのです。

 ウイルスや菌の細胞膜や内部構造が破壊されてしまうので、フリーラジカルは「分子を壊す力」を持った非常に強力な化学的兵器といえます。

 
さらに小さな泡、ナノバブル

最近注目されている、マイクロバブルよりもさらに小さな泡がナノバブルです。

ナノバブルは直径が数十ナノメートル程度で、水中に数カ月間も安定して存在するという特徴があります。

この特性により、ナノバブルは長期間にわたって水の消毒や改良に利用することができます。
 
農業分野で、ナノバブルを含む水を使うことで植物の成長を促進できることもわかってきました。ナノバブルが溶けた水には、植物が吸収しやすい硝酸イオンが増えるため、土壌に肥料を追加することなく作物の育成をサポートできるのです。
 
また、ナノバブルは水の浄化にも役立ちます。汚染された河川や池にナノバブルを加えることで、微生物や化学物質を分解し、水質を改善することが可能です。
 
実はディレカを通して発生する泡も、最大頻出粒子径が0.0876マイクロメートルの、「ナノバブル」と呼ばれるサイズに近いことが実験を通してわかっています。
 
ディレカがデビューするきっかけになったのも、ディレカを取り付けている一般住宅の排水溝が綺麗になっていたことがわかり、これが注目されてというものでしたが、ナノバブル効果が一端を担っていたのかもしれません。

当時の写真です。かなり汚れ方が違います!


■泡の力で広がる未来

マイクロバブルやナノバブルの技術は、医療や農業、さらには環境分野において多くの可能性を秘めています。 

医療分野では、感染症対策のために空気や水の除菌システムが開発されており、これにより病院内での感染拡大を防ぐことができるのも可能となるでしょう。 さらに、汚染された水の浄化技術としても注目されており、世界中で安全な飲み水を提供するためのソリューションになる可能性があります。

 その他、農業や水産の分野で牡蠣(カキ)の養殖や農作物の成長を促進する研究が進められています。これらの技術は、地球環境を守りながら、私たちの生活を豊かにする手段として期待されています。 

日常的に見かける泡が、これほど大きな可能性を秘めているとは驚きですよね。

科学は、私たちの見えない世界を解明し、それを応用して暮らしを改善する力を持っています。

マイクロバブルやナノバブルの研究はまだ発展途上ですが、未来の技術として私たちの生活や地球環境を支える存在になるでしょう。
 
水が持つ可能性を活用して、インフルエンザなどの感染症対策や環境問題の解決に役立つ日が来ることを楽しみにしたいと思います。

ディレカに関わっているとどうしても物理化学の広範囲な知識が必要で、それも机上の知識ではなく実体験から獲得する学びがとにかく重要。この本はそんな私の欲求に十二分に応えてくれる内容の本です。電位差、磁気、電気と超苦手な分野にこの歳で足を踏み込むことになるとは思わなかった・・・


 

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