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最高の演奏と、フェスの難しさ

「モントルー・ジャズ・フェスティバル・ジャパン2024」の2日目に行ってきた。

お目当ては、菅野よう子率いる「SEATBELTS」。名作アニメ『カウボーイビバップ』の音楽を作ったバンド。何もアニメを知らない一般人でも、テレビのBGMなどで「Tank!」は聞いたことがあるだろう。

カウボーイビバップのサントラCDは、人生の中で聞いた回数がトップクラスに多いCD。中学生のころ、何周したことだろうか。深夜のテスト勉強のお供だった。

本当は、金曜日のハービー・ハンコックと一緒に見たかったのだが…SEATBELTSが出るということで、抽選になるくらいの人気かと思い(実際抽選販売は行われた)、「抽選で何枚もチケット買うのはさすがに…」と思ってしまい、スルーしていた。

まさかの当日券が発売されるくらいの空き具合であることを、把握したのが金曜深夜。間に合わず。ということで、2日目に参加してきた。


最高の演奏

もう、SEATBELTSの演奏はさすがだった。

自分が初めて好きになったスタジオミュージシャン、今堀恒雄のギター。最高のパーカッション、キレキレのドラム。そした本田雅人のキレキレのサックス。憧れていた演奏がそこにあった。レジェンドたちだけでなく、若いトランペットの子の演奏も最高だった。

カウボーイビバップの楽曲を、一番聞いていた1枚目のサントラから多く演奏してくれたのも嬉しい。「Car 24」なんて、ちょいマイナーな楽曲もきけるとは。あの楽曲のサックスソロ、めっちゃ好きなんだ。

SEATBELTSサイトより。

カウボーイビバップだけでなく、攻殻機動隊の楽曲も演奏してくれたのも嬉しい誤算。「inner universe」が生で聞けるとは。バンドアレンジでも聞きたかった。そして一番好きな「Tank!」も、最高のアレンジで、思わず声が出るくらいのクオリティだった。


本当に、菅野よう子ファンとして、たまらない1時間だった。

もう、このバンドの感想だけで、1,000文字くらいは語れる。セトリに入ってないけど、この曲もやってほしかった、なんてトークになれば、もっと書けるだろう。

それくらい素晴らしい演奏だった。改めて、復活してくれたSEATBELTSの皆様に、感謝を捧げたい。生演奏できけて、本当によかった。


フェス自体について

「SEATBELTS」については、最高という感想しかないのだが、このフェス自体については、思うところが色々とあった。あくまで個人の意見だが、少し物申したい。楽しい意見だけ聞きたい人は、ここでブラウザバック。





まず、当日券の販売について。情報収集が不足して、事前に券を購入できていなかった自分が一番悪いのだけれども、それにしてもずさんな対応だった。

開演30分前の15時には、入場券の待機列に並びはじめた。前に並んでいる人は20人いないくらい。まぁ、この様子なら、問題なく、開演の少し前には、席に落ち着いて座ってられるだろうなと思っていた。 


しかし、驚くほど列が進まない。一人購入するのに、1分~2分はかかっている。「チケットぴあ」などの電子チケットでの事前購入は不可、お支払いは現金のみという、かなり縛られた条件にも関わらず、である。

後からわかったが、受付は一人で、しかもその場で座席表とにらめっこしながら席を決定して販売していた。なぜ、事前に当日券分の席を決めていないのだろうか…?
オンラインでの購入も可能なら、最新状況を確認しながら販売する必要があるのは分かるが、もう当日券分のスペースは確保しているはずではないか。

結局、自分が入場できたのは、15時40分くらい。1曲目は聞くことができなかった。着席しても、先程のずさんな対応へのイライラでしばらく集中して見られなかった。

この時点でかなりこのフェスの心象は悪かった。


そして、もう1つの不満が、ラインナップ。1日目のハービー・ハンコックをトリに据えたラインナップはまだ問題ない。しかし、自分が参加した2日目。SEATBELTS以外のバンドは、全く知らなかった。まぁこれは、自分の勉強不足だとして。
(何度もブルーノートに通うJAZZ好きの友人もほとんど知らないとは言っていたが。)

彼らのやってる音楽について。別に演奏がどうのこうの、というわけではない。素人の自分が聴く限りでは、そんなに演奏は悪くなかった。

問題は、音楽のジャンルとして、このフェスに彼らのバンドが合ってるか、という話である。


これはもう残酷な話だけども、集客力としては2日目の要となるのは、「SEABELTS」が要だろう。あのラインナップで、他に人が集められるとは思えない。

多くの人が、「SEABELTS」の演奏を聴きに来ていた。自分のように、普段JAZZのライブに行かない人たちも、多くいたと思う。そのことを、運営は意識して出演バンドをオファーしていたのだろうか。

もしかしたら、始めて本格的なJAZZバンドに来ているのかもしれない。そして、「Tank!」のような、熱くてノレる音楽を期待していたのかもしれない。そういう想像をしたら、あのラインナップにはしないと思うのだが…

小難しそうなノリのバンドだったり、ましてやDJをメインステージに呼ぶだろうか…


自分の印象だけでなく、チケットの結果として、ぴあアリーナという大きな箱で開催していて、当日でも全席に空席がある状態は、非常にやばい結果だと思う。興行的にも失敗だろう。

いくら本家モントルー・ジャズフェスが、何でもありのフェスになっているとは言え、「ジャズ・フェス」って名前であのラインナップはなぁ…という感触。じゃあJAZZの括りから外れて見たとしても、フェスとして魅力あるかと言うとそうでもないし…

よく考えると、「色んなバンドが集まっているけど、楽しい」という状態を作り出さなきゃいけない音楽フェスっていうのは、本当に難しい。今まで行ったフェス、全部楽しかったけれども、それって相当にすごいことだったんだなと、改めて実感した。


とは言え、菅野よう子が率いる、「SEATBELTS」にオファーし、彼らを見れるステージを作ってくれたのは、感謝している。「ジャズフェス」という名前のフェスは、日本国内では非常に少なくなっているから、めげずにリベンジしてほしいものだ。

以上、「楽しいフェス」ってのを開催することの難しさを実感した日記でした。



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