メルマガ施策の改善ならメルマガ会員へのアンケートで
企業のカスタマーサポートセンターのコールや問合せフォームには、メルマガに関するものが少なくなく、「配信数が多い」「配信時間帯が夜遅い」「登録解除できない」などをメインに、マーケティング施策としては異例の量の苦情が集まってきます。
この企業側からの一方通行的な施策に対する見直しを求める声が上がる一方で、もちろんメルマガはユーザーに有用な情報をもたらす存在として、新着メルマガ・おすすめメルマガ・クーポンメルマガ・特集メルマガなどの利点は、よく認識されています。
メルマガ運営を考えるうえで難しいのは、何が不満要素で何がメリットかはユーザーによって異なることです。そのため、近年は顧客の志向性に基づく1to1の運営で配信を出し分ける取り組みなども進んでいますが、劇的に不満が減るほどではありません。
そこでおすすめしたいのが「メルマガ会員アンケート」を実施する方法です。メルマガはもともとアンケートを告知する手段でもあり、フォーム遷移のアクションに結びつきやすく、題材的にもユーザーが答えやすいテーマであり、相性の良さは抜群です。
今回は「メルマガ会員アンケート」の活用法を解説します。
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▼ メルマガ会員アンケートのモデルケース
メルマガ会員アンケートの企画メリットの企画メリットは、主に2つあります。
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①配信要件を最適化できる
メルマガ運営は企業都合の配信ルールになりやすい施策です。ユーザーに有益な情報をいち早くもたらす半面、配信数の多さや配信時間帯はユーザーから苦情が出やすく、数あるマーケティング施策の中でも群を抜いて不満を呼び込みやすい性質があります。
読者アンケートを使うと、メルマガを受信するユーザーの習慣や希望を知ることができます。その情報をもとにして、出てくる苦情に対して対処療法的に対応するのではなく、積極的に不満の要因を確認してビジネス要件との両立を模索することができます。
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②種別や内容を検討できる
メルマガ運営は過密ダイヤの鉄道路線のように1日や週を通じて目いっぱいのスケジュールが組まれます。配信枠は良い意味で固定的に運用されますが、ユーザー側からすると内容が一方的な告知ラッシュだとどれも同じに見えてすぐに見飽きてしまいます。
読者アンケートを使うと、メルマガの種類ごとに意義や効果を検証し、それぞれの役割を再考することができます。また、メルマガの内容がユーザー行動にどのような影響をもたらしたか、ウェブの導線を外れたアクションも分析に加えることができます。
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ここまで、メルマガ会員アンケートの企画メリットを説明してきました。前述の通りメルマガは運営自体が担当者業務の限界になりやすく、そのわりにはオートメーション化が進んでいたりするので、運営そのものが目的化しやすい業務特性があります。
読者アンケートを実施すると、ユーザー視点でメルマガ運営を見直す機会になります。高頻度では実施できないかもしれませんが、この重要施策を維持・発展させていくためには、ぜひ単独テーマのアンケートでユーザーの声を聞いてみることをお薦めします。
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▼ メルマガ会員アンケートのモデルケース
メルマガはもともとアンケート実施を告知する時に使用されるツールでもあるため、メルマガ運営をテーマとして読者アンケートを実施するのにも適しています。また最近では、メルマガ上でそのままシンプルなフィードバックを求めるケースも増えてきました。
以下では、メルマガ会員アンケートで代表的な3つのモデルケースを解説します。
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▼ ①実態把握モデル
実態把握モデルは、「顧客側のメルマガの存在感の確認に使う」調査モデルです。開封率やCTRなどメルマガ個別の反響は配信管理ツールで見ることができますが、アンケートではメルマガ単位の他にユーザーの習慣単位でも分析をすることができます。
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<質問構成>
①あなたは[○○](業態名称)の[○○](店舗・媒体・企業)から届くメールマガジンをどの程度見る習慣がありますか(単一回答)【一般的な閲読習慣】
②[○○](ブランド名称)から配信している[○○](メルマガ名称)を、あなたはどの程度見る習慣がありますか(単一回答)【種別の閲読頻度】
③[○○](ブランド名称)から配信している[○○](メルマガ名称)を、[○○](購入・利用・閲覧)にあたり、あなたはどの程度参考にしていますか(単一回答)【種別の参照状況】※閲読者対象
核となる質問構成は、①一般的な閲読習慣、②種別の閲読頻度、③種別の参照状況となります。
まず、①一般的な閲読習慣の質問を通じて、店舗・媒体・企業などの単位で、同じ業態のメルマガを見る習慣があるかどうかを尋ねます。これにより、自社ユーザーのケースにおけるメルマガ施策自体の粘着性(強い・弱い)を把握することができます。
次に、②種別の閲読頻度の質問で閲読習慣を定量的に確認しつつ、それぞれのメルマガの閲読者を対象にして③種別の参照状況の質問で評価を確認することで、顧客の意識ベースで有効性を吟味することができます(=内容的な評価を集めるのに有効)。
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ここでは、パリーグのプロ野球球団「オリックス・バファローズ」のメルマガ会員アンケートの例を見てみましょう。
<オリックス・バファローズ メルマガ会員アンケート>
①一般的な閲読習慣 Q.一般的なメルマガ閲読習慣は?(必ず読む/件名次第/クーポン・セール情報のみ/読んでいない)
②種別の閲読頻度 Q.メルマガの閲読頻度は?(いつも読む/ときどき読む/あまり読まない/まったく読まない)
③種別の参照状況 Q.メルマガの参照状況は?(参考になる/少し参考になる/あまり参考にならない/参考にならない/見ていない)
「オリックス・バファローズ」では、メルマガ会員を対象にメルマガ運営に関するアンケートを実施しており、①②③のような質問を尋ねていました。テーマをメルマガに絞っていることで、イベント・チケットなど全種類を調査対象に収めています。
特に①一般的な閲読習慣はアンケートならではのユーザー情報で、自社のメルマガを読むか読まないかではなく、一般的に球団のファンがメルマガに対してどんな志向性を持っているかを尋ねることで、施策の有効性を知る手がかりとしているようです。
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▼ ②希望聴取モデル
希望聴取モデルは、「メルマガ配信要件の最適化の検討に使う」調査モデルです。メルマガの実施頻度や配信時間はおおよそ事業の枠組みと運用成果によって決まりますが、アンケートを使うと読者の立場で最適な運用ルーティンを模索ことができます。
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<質問構成>
①[○○](メルマガ名称)の配信頻度として、あなたがちょうどいいと思うものをお選びください(単一回答)【希望頻度】
②[○○](メルマガ名称)の配信時間帯として、あなたがちょうどいいと思うものをお選びください(単一回答)【希望時間帯】
③[○○](メルマガ名称)をあまり見ていない理由としてあてはまるものをお選びください(複数回答)【障害要因】※未読スルーのメルマガ登録者対象
核となる質問構成は、①希望頻度、②希望時間帯、③障害要因となります。
希望聴取モデルでは、まず①希望頻度②希望時間帯の質問を通じて、読者にとってちょうどいい希望配信要件を確認していきます。もちろんこれはあくまでユーザー側の希望であり、運営上反映することが難しい場合もありますが、知っておきましょう。
次に、メルマガに登録しているけれど見ていない未読スルーの人を対象に、その理由を尋ねます。ここは上記のような実施要件や内容・情報のほかに、文字量などもよく挙がるので、定期的にフィードバックを受けることで離反を抑止する機会になります。
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ここでは、飲食・美容・病院などの店舗・施設情報を紹介するローカルサービスのネット予約アプリ「EPARK」のメルマガ読者アンケートの例を見てみましょう。
<EPARK メルマガ読者アンケート>
①不快経験 Q.不快と感じたことは?(はい)
②不快理由 Q.不快と感じたものは?(月間の配信数/特典の魅力/キャンペーン内容/配信時間)
「EPARK」では配信しているメルマガの中に不快度を確認するフィードバック機能を実装しています。各メルマガのヘッター付近には①不快経験を問う質問があり、「はい」を選択すると②不快理由を尋ねるアンケート画面に遷移する導線になっています。
そして②不快理由の質問では、配信数・特典・企画内容・配信時間などの実施要件あるいは構成要素を提示して、不快の原因を究明しつつ最適化を目指すヒアリングにしています。このステップがあることで退会・解除に至る前の予防線としているようです。
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▼ ③効果測定モデル
効果測定モデルは、「認知への寄与度や態度変容の確認に使う」調査モデルです。アンケートではウェブ行動解析データでは追い切れない範囲の情報チャネルやユーザーアクションを比較参照データに設定してメルマガの効果を総括することができます。
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<質問構成>
①あなたが[○○](ブランド名称)の[○○](商品・サービス)の情報を見るきっかけとなるものはどれですか(複数回答)【ブランドの情報源】
②[○○](ブランド名称)から配信するメルマガの内容は、どのようなものだと嬉しいですか(複数回答)【希望情報】
③[○○](ブランド名称)から配信するメルマガを見た後、行動面での変化は何かありましたか(複数回答)【行動変化】
核となる質問構成は、①ブランドの情報源、②希望情報、③行動変化となります。
まず、①ブランドの情報源の質問を通じて、ユーザーがブランド情報にアクセスする時のメルマガの寄与度を見極めます。近年は速報性に加えて記事性(特集記事のような表現法)も評価される要因になっており、寄与度はさらに高まる傾向にあります。
次に、②希望情報と③行動変化の質問を通じて、ユーザーがメルマガに求める情報と実際に取られたアクションを把握します。ユーザーへの情報発信では、近年はプッシュやSNSの貢献が伸びていますが、メルマガは商品サービスに強い誘導力があります。
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ここでは、実態把握モデルに続き再度「オリックス・バファローズ」のメルマガ読者アンケートの例を見てみましょう。
<オリックス・バファローズ メルマガ読者アンケート>
①ブランドの情報源 Q.ブランドの主な情報源は?(公式ホームページ/公式SNS/メルマガ/会報誌/アプリ/マスメディア…)
②希望情報 Q.メルマガで読みたい情報は?(チケット発売日/試合イベント/限定の画像や動画/選手の情報…)
③行動変化 Q.メルマガきっかけで取ったアクションは?(イベント参加/チケット購入/飲食購入/グッズ購入/ファンクラブ入会…)
今度はメルマガの内容面に焦点を当てた質問構成となっています。まず①ブランドの情報源の質問では、ホームページ・SNS・会報誌・アプリなど他の有力な顧客接点と共に選択肢を並べ、ブランドの情報認知に対するメルマガの有効性を計測しています。
次に、②希望情報の質問でメルマガで読みたい情報を尋ね、③行動変化の質問でメルマガが実際に事業運営にもたらした貢献を確認しています。アンケートでは③まで追跡できるほか、②③の質問間分析により最適なコンテンツを模索することができます。
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▼ 取材記事のお知らせ
データマーケティング・マガジン「マナミナ」にて、今回の記事テーマである「メルマガ会員アンケート」をテーマにしたインタビュー取材をしていただきました。実務での応用方法などはこちらでも解説していますので、よかったら併せてご覧ください。
▼ 企業のコアファンはメルマガに潜む?「メルマガ会員アンケート」の重要性|マナミナ(この記事の取材解説です)