わかれた尻尾

狂ってしまえば楽になれる　けれど
完全に狂ってしまうには理性が邪魔しすぎている
貶されて叱責されて
今を遠めに見ても正常でいられるはずはないのに

ストレスかな　甘いものが無性に食べたいな
（猫に甘いものは厳禁！）
仕事も付き合いも全部投げ出してしまいたい
（飲み会なんて大変だぁ）
知り合いも知らない人もみんないなくなってしまえばいい
（縄張り守備も楽じゃにゃい）
それくらい全てが嫌になっている　それでも
僕は化け猫　人間のフリをするために手拭いを頭に被り
必死で踊り続けるんだ

周りを誤魔化して生きてはいける　けれど
完全になり切るには力が不足しすぎている
猫の時はあんなに可愛がられたのにと
過去に遠い目をやっても後悔すらわかないで
 
ストレスだな　あー強い酒を浴びたい
（マタタビだけじゃ酔えにゃいよ）
家事も面倒事も全部投げ出してしまいたい
（ご飯は猫まんまでいいよね）
家族も大事な人もみんないなくなってしまえばいい
（守るものなんて全てにゃくなって）
そんなくらい全てが無意味になっている　それなのに
僕は化け猫　人間のフリをするために手拭いを頭に被り
必死で踊り続けるんだ

生まれた時からそうだったわけじゃない
本能のままに生き続けた　ただそれだけなんだ
なんで人間のフリしてるんだっけ？
そんな疑問が入り込む余地もないくらい　ただそれだけなんだ
気が付けば尻尾はわかれ　言葉を理解し　人間になろうとしていた
猫と人間ならば猫のほうが楽しく暮らせただろうに
生への執着が作り出したこの暮らしは
ただ　僕を苦しめる　それでも
 
僕は化け猫　人間の言葉を喋り　毎日服を着て　必死に生き続ける
どれだけストレスでも　全て投げ出してしまいたくても
どこかに大切なものがきっとあるから
全てが嫌になっても　どれだけ無意味に感じても
ドクドクとまだ心臓が動き続けるから
僕は化け猫　人間のフリをするために手拭いを頭に被り
必死で踊り続けるんだ