
ニューアルバムをドロップ!!今さら聞けないPusha Tとは?!

Pusha T(プシャ・T)は2000年代に兄のNo Malice(ノー・マリス)とラップデュオClipse(クリプス)にて数々のクラブヒットを飛ばしましたが、2010年に活動休止を発表。
その後プシャ・Tは、Kanye West(カニエ・ウェスト)率いるレーベル "G.O.O.D. Music" と契約し、発表した3枚のアルバムは、全てR&B/Hip Hopチャートトップ5入りを果たすヒットを記録しています。
2015年にはカニエからレーベルの後継社長に指名され、カニエからの信頼が伺えます。
またDrake(ドレイク)とのビーフでも知られ、彼のプライベートにまで言及したラップは、あのドレイクが白旗をあげて負けを認める原因となりました。
ここでは、プシャ・Tの経歴について解説します。
レーベル : Def Jam Recordings, G.O.O.D. Music, The Island Def Jam Music Group, Universal Music Group
リリース日 : 2022年4月22日
名前 : Pusha T
本名 : Pusha T / Terrence LeVarr Thornton
年齢 : 44歳
出身地 : バージニア州バージニアビーチ
Clipseの結成には同郷のファレルの存在が大きかった!!

ニューヨークのブロンクスに生まれたプシャ・Tとノー・マリスは、バージニア州のバージニアビーチへと移り住んだのちに、兄のノー・マリスがラッパーのキャリアをスタートさせます。
そこで、同じくバージニア州出身のラッパー、プロデューサーPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)と出会い、彼らの運命が大きく変わることに。
ファレルは、ノー・マリスのリリックと、ある日からリリックを書き始めたプシャ・Tの才能に感銘を受け、2人にラップデュオを結成することを勧め、クリプスが誕生しました。
1996年、ファレルが橋渡しをしてElektra Recordsと契約。
デビューアルバムとなるはずの「Exclusive Audio Footage」をレコーディング後に、リードシングルとして「The Funeral」をリリース。
しかしこの曲の売れ行きが悪かったため、アルバムの話はなくなり、最終的にはレーベルを去ることになりました。
その後、2001年にファレルのレーベル "Star Trak Entertainment" の第1弾アーティストとしてArista Recordsと契約。
翌年に発表したデビューシングル「Grindin'」(2002)はR&B/Hip Hopチャート10位を記録し、音楽メディア誌ローリングストーンの「2000年代のベストソング」では84位に選出されるなど、批評家から高い評価を得ています。
Clipse - Grindin' (2002)
また同年にファレルとChad HugoによるプロダクションデュオThe Neptunesが全面プロデュースしたデビューアルバム「Lord Willin'」(2002)をリリースし、これが全米チャート4位を記録。
デラックスエディションには、Birdman、Lil Wayne、Sean Paulらが参加したリミックスが2バージョン収録されました。
Clipse feat. N.O.R.E, Birdman & Lil Wayne - Grindin' Remix
Clipse feat. Sean Paul, Bless & Kardinal Offishall - Grindin' Selector Remix
クリプスはアルバムツアーを経て、2003年末にセカンドアルバムのレコーディングを開始しましたが、当時所属していたレーベルであったArista Recordsが、ソニー・ミュージックエンタテインメントとBMGの合併に伴い、その姉妹レーベルであるJive Recordsに統合。
これによりアルバム制作は中断し、Star Trak EntertainmentはInterscope Recordsに移籍しましたが、契約上の問題からグループはJiveに留まることを余儀なくされました。
クリプスはアルバム制作を再開しましたが、Jive Recordsによってリリースが遅れたため、レーベル脱退の意志を伝えましたが、Jive Recordsが契約解除を拒否し、クリプスがレーベルを訴えるという問題に発展しました。
2006年にようやくリリースされたアルバム「Hell Hath No Fury」では、リードシングル「Mr. Me Too」でJive Recordsにへの言及が含まれており、プシャ・Tがアルバムが遅れたことをファンに謝罪し、レーベルの幹部をDisした内容をラップしています。
Clipse feat. Pharrell Williams - Mr. Me Too (2006)
この後、2人はいくつかのレコード会社と話し合いを始め、最終的に2007年にColumbia Recordsと契約し、移籍後にアルバム「Til the Casket Drops」(2009)をリリース。
それまでは、The Neptunesのみがプロデュースしてましたが、このアルバムには、後にEminem、Logicの楽曲を手掛けるDJ Khalilや、Jay-Zやニューヨーク勢のラッパーを手掛けたSean C & LVが制作に参加しています。
Clipse feat. Cam'ron - Popular Demand (Popeyes) (2009)
活動休止とカニエとの出会い

前述したアルバム「Til the Casket Drops」をリリース後、クリプスはそれぞれのソロキャリアを歩むため、活動休止を発表。
その直後、プシャ・Tは、カニエ率いるレーベルG.O.O.D. Musicと契約を結び、カニエの5枚目のアルバム「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」(2010)から「Runaway」でアルバムに参加。
Kanye West feat. Pusha T - Runaway (2010)
2011年にソロデビューEP「Fear of God II: Let Us Pray」を発表し、2013年に待望のアルバム「My Name Is My Name」をリリース。
カニエが収録曲の半分以上をプロデュースし、全米チャート4位を記録。
多くのメディアが「2013年のベストアルバム」に選出し、プシャ・Tの才能が本物であることが証明しました。
Pusha T feat. Kendrick Lamar - Nosetalgia (2013)
2015年、セカンドアルバム「King Push - Darkest Before Dawn: The Prelude」をリリース。
アルバムには前作から続けてカニエが手掛けたほか、J. Cole、 Timbaland、Q-Tip、Diddyなどがプロデュースしています。
Pusha T feat. Kanye West, A$AP ROCKY, The-Dream - M.P.A. (2015)
2018年、カニエをエグゼクティブプロデューサーに迎えたアルバム「Daytona」をリリース。全米チャート3位に輝き、彼のキャリアハイを記録。
グラミー賞「最優秀ラップアルバム」にもノミネートされ、NasやDiddyから「クラシックアルバム」と賞賛され、この10年で最高のアルバムのひとつとも言われています。
Pusha T - If You Know You Know (2018)
ドレイクに負けを認めさせた?!

プシャ・Tとドレイクは2012年から2017年にかけてお互いをディスり合い、前述のアルバム「Daytona」の収録曲「Infrared」で状況はさらにヒートアップ。
この曲で彼は多くのラッパーが本物ではないことを見抜き、ドレイクに関してはゴーストライターを雇っていると主張。
その後のインタビューで、次のように明かしています。
これはドレイクのレコード「Two Birds One Stone」に対するもので、彼がストリートに対する俺の信憑性を問うものなんだ。
それに対して俺がアンサーするのを、みんな待っていた。
考えてみれば、そんな会話はしたくもないが、
彼が質問を投げかけてきたから、それに関して自分の真実を話し、彼をどう見ているかを話しただけだ。
なぜならそれらは疑惑ですらなく、実際にゴーストライターがいて、彼が韻を踏んでいないという証拠もある。
Pusha T - Infrared (2018)
ドレイクはこの曲に対して1日も経たないうちに「Duppy Freestyle」と題した曲をリリースし、プシャ・Tとカニエの両方をディス。
曲中では、プシャ・Tを偽物のドラッグディーラーだと非難し、俺をディスるだけでレコードのセールスが上がると主張しています。
これにプシャ・Tは、Jay-Zのシングル「The Story of O.J.」(2017)をビートジャックした「The Story of Adidon」で応戦。
この曲では、ドレイクがポルノ女優の間に隠し子がいる噂を暴露するなど、ドレイクのプライベートまで言及しています。
ドレイクはその後のインタビューで「ラップという競技で初めての負けだった」と認め、後にドレイク自ら「Lemon Pepper Freestyle」(2021)で隠し子についてラップしています。
「Lemon Pepper Freestyle」(2021)の記事はこちら。
Pusha T - The Story of Adidon (2018)
終わりに
2019年、カニエのアルバム「Jesus Is King」でクリプスが再結成され、先日発表されたNigoのアルバムに2人が参加するなど、デュオとしても再始動したようです。
Nigoのアルバムについての記事はこちら。
このように、なかなか波乱万丈にラップ界を渡り歩いているプシャ・Tですが、今回のニューアルバムはレジェンドから旬のアーティストまでを客演に招き、またエグゼクティブプロデューサーにカニエとファレルを迎えた大変聴き応えのある作品となっています。
次回はそのアルバムについて解説します。
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