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ザ・ウィークエンドの新作は、計25曲を全米1位に導いた、マックス・マーティンを起用! The Weeknd - Dawn FM (2022)

2020年に発表したThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)4枚目のアルバム「After Hours」は、世界20カ国のチャートで首位を獲得、その中でもシングル「Blinding Lights」は2020年に世界で最も売れたシングルとなり、全米チャートで1年間トップ10に入り続けるという前代未聞の快挙を成し遂げました。

そんな彼が、新年早々に待望のニューアルバム「Down FM」(2022)をドロップ。

前述した「Blinding Lights」をはじめ、数々のポップソングを手掛けたMax Martin(マックス・マーティン)がエグゼクティブ・プロデューサーを務める本作には、近年流行している80年代風のダンサブルなナンバーが多く収録されています。

ここでは、ヒットメーカーマックス・マーティンと、近年の音楽シーンについて解説します。

レーベル  :    Republic Records & XO Records
リリース日 : 2022年1月7日
名前    : The Weeknd
本名    : The Weeknd / Abel Makkonen Tesfaye
年齢    : The Weeknd 31歳


出身地   :    The Weeknd カナダ、トロント

The Weeknd - Out of Time (2022)

キャリア初期

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スウェーデンのストックホルム出身のマックス・マーティンは、もともと自身もシンガーとして、さまざまなバンドを渡り歩いていました。彼の人生が大きく変わったのは、BMG傘下のプロデューサーDenniz PoP(デニス・ポップ)のレーベルCheiron Recordsとレコード契約を結んだ時です。

マックス・マーティンのアルバム「Earthquake Visions」(1993)は世界30カ国で発売されましたが、3万枚という不本意な売れ行きで終わってしまいました。しかし、デニス・ポップは彼とのコラボレーションを経て、ポップソングを書く彼の才能を見出し、彼をマックス・マーティンと名付け、弟子入りさせました。

マックス・マーティン/デニス・ポップ

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1990年代に大ブレーク

師から音楽について多くを学んだマックス・マーティンは、1995年にスウェーデンのグループ、Ace of Base(エイス・オブ・ベイス)のアルバム「The Bridge」を手掛け、これが世界的にヒットし、500万枚を超えるセールスを記録。

1996年にはアメリカのボーイズバンドBackstreet Boys(バックストリート・ボーイズ)のデビューアルバム「Backstreet Boys」を手掛け、全世界で800万枚を超えるセールスを記録。

また、サードアルバム「Millennium」(1999)では、12曲中7曲を共同作曲・共同プロデュースし「I Want It That Way」は25カ国のチャートで1位を獲得、グラミー賞3部門にノミネートされる大ヒットとなりました。

Backstreet Boys - I Want It That Way (1999)

しかしアルバム発売の前年1998年にデニス・ポップが胃がんのため35歳の若さで亡くなり、多くの関係者が悲しみに暮れました。バックストリート・ボーイズ「Show Me the Meaning of Being Lonely」デニス・ポップに捧げられ、MVの冒頭で「このビデオはデニス・ポップと、大切な人を亡くした全ての人に捧げます」と彼の死に触れています。

Backstreet Boys - Show Me The Meaning Of Being Lonely (1999)

また、Britney Spears(ブリトニー・スピアーズ)のデビューシングル「...Baby One More Time」(1998)でもプロデューサーに抜擢されたマックス・マーティン。この曲は、ヨーロッパでチャートインした全ての国で首位を獲得し、全世界では1000万枚以上のセールスを記録。10代によるLPとしては史上最高の売り上げを記録し、ブリトニーの人気を世界中に知らしめたナンバーになりました。

マックス・マーティンについて、ブリトニーは次のように明かしています。

マーティンは、私が音楽的に何を望んでいて、何を望んでいないのかを伝えると、正確に理解してくれるんだ。
彼のメロディーは素晴らしいし、いつも変な音を出してくるから、それが好きで...。
スタジオでこれほど気持ちよくコラボレーションできる人は他にいないよ。

Britney Spears - ...Baby One More Time (1998)

2000年〜その後の活躍

マックス・マーティンの巧みなプロデュースワークは、常にその時々の音楽を取り入れており、Katy Perry(ケイティー・ペリー)のシングル「I Kissed a Girl」(2008)「Teenage Dream」(2010)「Last Friday Night (T.G.I.F.)」(2011)など8曲で全米チャート1位を獲得。

その後もTaylor Swift(テイラー・スウィフト)「We Are Never Ever Getting Back Together」(2012)「Shake It Off」など、皆の記憶に残る数々のナンバーワンシングルを生み出し、 キャリア累計25曲を全米1位に導いて来ました。
これは、Paul McCartney(ポール・マッカートニー(32曲)、John Lennon(ジョン・レノン)(26曲)に続く全米ナンバーワン・シングルの獲得数であります。

これまでの彼のシングルの売り上げは1億3500万ドル以上といわれ、アメリカ作曲家協会(ASCAP)のポップミュージックアワードで「ソングライター・オブザイヤー賞」を11回受賞するなど、世界最高のプロデューサーとして知られています。

Down FM

前作のアルバム「After Hours」が大ヒットしたザ・ウィークエンドは、今作をリリースする前に次のように明かしています。

コロナが落ち着いた頃には、もう1枚アルバムを用意しているかもしれない。前作を上回りたいと思うやましい気持ちがあるんだ。

さらに、雑誌のインタビューでは"前作が深夜だとしたら、夜明けが来るんだ "と語っており、ニューアルバムのコンセプトは、前作からの続編になっているようです。

またニューアルバムのコンセプトはラジオ番組の形で、アルバムの冒頭から映画「マスク」に主演し、カナダ出身の俳優Jim Carrey(ジム・キャリー)がホストを務めています。

ジム・キャリー

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そんな「Dawn FM」が世界中のパンデミックに苦しむ聴衆に向けられたナレーションで始まるのも印象的です。

You've been in the dark for way too long
It's time to walk into the light
And accept your fate with open arms

君はあまりにも長い間、暗闇の中にいたね
今こそ、光の中へ歩を進める時
そして運命を素直に受け入れよう

昨今の傾向

イギリス出身のDua Lipa(デュア・リパ)が2020年に発表したアルバム「Future Nostalgia」には、リードシングル「Don't Start Now」をはじめ、ディスコ調の楽曲が多く収録されています。これは彼女が幼少期に聴いた80年代のダンスポップにインスパイアされたもので、中でも「Levitating」は往年のダンスクラシックスを連想させ、MVは新しさとエモーショナルが同居する不思議な雰囲気に仕上がっています。
このアルバムは、31カ国でトップ10にチャートインし、グラミー賞の「最優秀ポップボーカルアルバム賞」を受賞する大ヒットとなりました。

Dua Lipa feat. DaBaby - Levitating (2020)

同じく、80年代のサウンドをオマージュしたザ・ウィークエンドAriana Grande(アリアナ・グランデ)のシングル「Save Your Tears Remix」(2021)も、見事全米チャート1位を獲得。年間グローバルチャートでは「Levitating」に次ぐ2位となり、多くのオーディエンスが80年代サウンドへの回帰を受け入れていることが伺えます。

The Weeknd & Ariana Grande - Save Your Tears Remix (2021)

同じく80’sをモチーフにした、倍速ドラムに派手なシンセが鳴り響くザ・ウィークエンドのロングヒットシングル「Blinding Lights」(2020)は、A-haの名曲「Take On Me」(1984)を思い起こさせます。

「Blinding Lights」「Save Your Tears Remix」は、どちらもマックス・マーティンが手掛けており、彼こそが80’s回帰ブームの立役者と言えるでしょう。

The Weeknd - Blinding Lights (2020)

a-ha - Take On Me (1984)

アメリカを中心にヒップホップがメインストリームに押し上げられる中、イギリスやヨーロッパのラッパーはなかなかバイラルヒットを飛ばせずにいます。

ヨーロッパはもともとハウスやポップスのテイストが強く、2010年頃のEDM全盛期には、多くのアメリカのラッパーやシンガーが、David GuettaCalivin Harrisといったプロデューサーと共にチャートを賑わせました。

しかしその時期は長くは続かず、DrakeCardi BKendrick Lamarなどがブレイクし、純粋なラップミュージックが世界のチャートを席巻するようになると、音楽市場は一気にひっくり返りました。

そんな中、ヨーロッパ市場(その中でもイギリス)では、ヒップホップにこだわらず、ダンスミュージックの原点回帰として見直され、デュア・リパを筆頭に新たなムーブメントを生み出しているようです。

終わりに

ザ・ウィークエンドは前作がヒットし、世界中のオーディエンスから大きな期待を寄せられていた中、ダンスポップを軸とした、よりメインストリームに近いサウンドを採用しました。

その背景には、時代を超えてヒット曲をリリースしてきたマックス・マーティンの存在が大きくあるように感じます。早くも2022年のキーとなるであろう今作は必聴です!

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