予約制があるのはなぜ?
事務局のハラマルです。
自動運転について、私にでも分かるような資料があると、誰かの役に立つのではないか?ということで、関係者の方などに聞いて私なりに理解した内容を、できるだけ分かりやすく伝えていくというチャレンジです。
今回も、個人的な視点から意見や感想を述べさせてもらっています。
どちらが正しいでしょう?
とある会議室。
関係者が集まり、喧々諤々(けんけんがくがく)の議論が交わされている。
「普通、路線バスに乗るときには予約なんてしないですよね。予約しないと乗車できないってなったら、ちょっとしっくりこないんですけれど…。他の方はどう思われますか?」
「でも、通常の路線バスと違って、乗客の定員が約10名なので、すぐに満車になってしまいますよ。乗ろうと思って待っていたら、乗車できなかったということになってしまうことが予想されます。予約制にした方が、混乱がなくて良いのではないでしょうか?」
「予約って、多分、ネットですよね?それを条件にしてしまうと、子どもとか高齢者が乗車できる機会が減ってしまう気がします。個人的には、もっと気軽に乗車して欲しいと思います。予約制はちょっと…。」
「今回、自動運転バスの乗車自体を目的に来られる方が多いと思うんですよね。そういう方が、せっかっく来たのに、満車で乗れなかったっていうことになってしまわないか心配です。そう考えると、確実に乗車できるよう、予約制にした方が良いと思います。私は。」
どうやら、自動運転バスの乗車について、予約制にするかどうかの議論がされているようである。
どちら側の意見も、確かに、と思う部分がある。
これは簡単には結論が出そうにないな、というのが正直な感想だった。
「…答えが出ませんね…、どうしたものか…。う~ん。そういえば、せっかく来ているんだから、ハラマルさんはどう思いますか?」
「え?私?私は、勉強のために会議を見学に来ただけなんですけれど…。え、本当に意見言った方が良いですか?う~ん、どっちの意見も正しいと思います。だから…両方試したらどうですか?」
「両方試す???」
曜日別で予約制を実証します
というようなやり取りがあって、今回の自動運転の実証では、曜日別に予約がある日/ない日を設定し、両方を試してみることになりました。
私も、まさか自分の意見が通ってしまうとは思っていなかったので、びっくりしましたが、冷静に考えると、これも実証することに大きな意義があります。
予約制があった方が良いのか、ない方が良いのか、それはサービス提供者側としても、しっかり考えるべきことです。
しかし、その考えた結果が、住民の皆さんにきちんと受け入れてもらえるものなのかどうか、これは机上の検討だけではなかなか分からないものです。
このため、予約制のある日・ない日の利用者の方から、それぞれの感想をいただき、今後の導入について検討することとなりました。
今回の実証では、単に、自動運転バスが安全に運行できるかという技術的なところだけでなく、今後、住民の皆さんにより良いサービスとして利用しやすいものにするためにどうしたらいいか、この点もしっかり実証していきたいと思います。
予約制の詳細です
予約制について、具体的には、
日・月・火曜日は、予約制はありません。予約の必要なく、通常の路線バスのように、先着順で乗車できます。
水・木・金・土曜日は、予約制があります。Webで予約をされた方は優先的に乗車できます。予約が埋まっていなければ、予約なしでも飛び込みで乗車することができます。
また、各便の始発駅(往路は徳山駅、復路は徳山動物園)の出発15分前まで受付をしています。
これは、出発時には、その便の予約者数を確定しておき、何名が予約なしで飛び込み乗車できるのかを明確にするためです。
運行中に「いつの間にか予約が入っていた」ということになったら、予約なしで乗車していただいた方に降りていただかないといけないことになってしまいますもんね。
予約制、入れるのは良いとして、入れるのであれば、こんなところにも気を遣わないといけないんですね。勉強になりました。
ここで活躍するデジタルサービス
曜日別に実証することにはなりましたが、そうは言っても、予約制のある・なしで、関係者たちが懸念していた課題が解決されたわけではありません。
このため、デジタルサービスを使って、この辺りをフォローしていきたいと考えています。
まず、予約制がない日・月・火曜日です。
乗客定員が9名なので、「バス停でバスを待っていたけれど満車で乗れなかった」という事態が生じることが考えられます。
「路線バスだって、満車だったら乗車できないんだから、仕方ない」という考え方もあるかもしれませんが、できるだけ避けたい事態です。
このため、現在のバスの乗客数を可視化する取組をしてみます。
https://shunan-autonomousbus.busyohou.jp/#/top
こちらのサイトを見ていただくと、直近のバス停の位置が検索でき、そのバス停で乗車できる便が表示されます。また、それぞれの便の現在の乗客数が表示されます。
当然、バスなので、途中のバス停での乗り降りがあります。自分が待っているバス停に来るまでにどうなるかは分かりませんが、一つの目安として使えるのではないかと思います。
特に、日曜日は動物園に行くお客さんもかなりいると思います。
「ちょい乗り100円バス」が継続して運行されていますので、状況によっては、こちらの乗車を検討いただくと良いかもしれません。
バスの現在地や時刻表なども確認できますし、かわいらしい画面なので、是非、皆さん、こちらのサイトも見てみてください。
次に、水・木・金・土曜日です。
こちらは単純に予約サイトということなんですが、懸念点としては、難しいと使えない人が多くなってしまうことです。
というわけで、私も、「やまぐちDX推進拠点『Y-BASE』」と一緒に、いろいろなサービスを探し回って、一番分かりやすくて使い易そうな予約サービスを選定しました。
こちらのサイトから予約してください。
今回、非常に悩ましかったのは、予約の仕方の設計の部分です。
探し回ったサービスの中には、新幹線の指定席のように、乗車駅・降車駅を指定して予約するものもありました。が、そこまで厳密にすると、慣れていないと逆に利用しづらいのでは?と思いました。
例えば、「あ、やっぱりもう一つ先のバス停まで乗っておこうかな」ということができなくなります。「お客様の予約はここまでなので、ここで降りてください。」なんてことは、バスには馴染まないような気がしますよね。
また、空席を探すときに、とても複雑になります。例えば、予約状況によっては、自分が乗りたい区間が満席でも、「一つ手前のバス停で降車するなら空きがある」という状況があり得ます。検索条件を変えて、何度か検索したら、そこに行き着くかもしれません。が、今回の実証でちょっと乗ってみようかな、というユーザーを想定するのであれば、少し利用者に負荷をかけ過ぎのような気がします。
そこで、今回の実証では、予約の単位を「往路(駅→動物園)」または「復路(動物園→駅)」とすることにしました。
「往路」「復路」のそれぞれの区間内であれば、どこのバス停でも自由に乗り降りできます。気軽に乗れるバスを目指すのであれば、これくらい自由度があった方が良い気がしますよね。
「往路」と「復路」をまたいで乗車する場合は、それぞれの予約を取ってください。駅から動物園に行って、また駅に戻るような方は、例え、動物園で降りずに、そのまま連続して乗車して駅に戻るとしても、往路と復路の予約をお願いします。
私もサービス選定の場に立ち会わせていただきましたが、世の中に、こんなに便利なサービスがあるんだ、というのは非常に勉強になりました。
そして、こうしたデジタルサービスを使うメリットは、もう一つ。
それは、「簡単に乗り換えることができる」ということです。
仮に、自分たちでこうしたサービスを構築した場合、実証の結果、もっとこんな機能が必要と分かったら、また追加で開発する必要が出てきます。この機能が不要と分かれば、無駄な投資だった、ということもあるかもしれません。
が、既存のデジタルサービスであれば、最初の設定費用と月額利用料を支払えば利用できますし、機能の追加・削除は、オプション機能の追加契約や解約だけで、あるいは他社サービスに乗り換えるだけで実現できるかもしれません。
実は、私も「Y-BASE」の運営において、リリース後すぐに予約サービスを変えたという経験があります。
当然、サービスを選定する際には、「利用者の方はこういう使い方をするから、こういう機能があるこのサービスが良いに違いない」ということを徹底的に考えるわけですが、いざ蓋を開けると、想定と違った、ということはあり得ます。
そういう時に、「いや、もうお金をかけて構築しちゃったから、しばらくこれで我慢してください」となるか、柔軟に変更できるか、というのは、利用者にとっては大きな違いになります。
どちらが利便性が高いかは、言うまでもありません。
徳山駅前にも注目です!
また、デジタルサービスが良いものだといっても、自分でネットを使うのが苦手な方もいらっしゃいますし、自分でそのサイトを開こうと思うに至らない方もいらっしゃると思います。
そうした方にも、今回の実証について、より良く知っていただくため、バスの運行情報や時刻表、お知らせなどを、一元化して見ることができる「スマートバス停」を徳山駅前に仮設置し、実証します。
このスマートバス停、県内の交通事業者の方にも非常に興味を持っていただいていますので、徳山駅前で実際にどのような使われ方をしているのかを見ていただき、県内各地での導入につながると良いな、という思いも持って実証させていただきます。
「仮設置」という言葉が気になった方もいるかと思います。
実は、スマートバス停を設置するに当たっては、電気配線や設置工事が必要になります。
他の実証と同じで、利用者の方に好評だったら、次のステップで本設置ということになるかと思いますが、まずは実証の段階ですので、今ある配線を使うということにしていますし、躯体も、何と、ベンダーさん(YEデジタル社様)から無償でお借りしています。
また、電気代は、徳山銀座商店街振興組合様にご負担いただいています。
様々な方のご協力をいただいて仮設置させていただいています。
貴重な機会ですので、皆さん、徳山駅前で是非、一度ご覧いただければと思います。
目立つ場所に設置予定ですので、通りすがりにでも見ていただけると幸いです。
我々も、この実証で効果や必要性をしっかり見極めて行きたいと思います。
まとめ
自動運転バスの実証では、単なる技術的な部分を確かめているわけではありません。それであれば、自動運転バスの開発企業が実施すれば良いことです。
そうではなくて、自動運転バスを地域に根差していくために、何が必要で、どのようなことをすべきか、そうした観点から、予約や、バス運行情報の可視化などにも取り組み、実証していきます。
良ければ継続や改善をしていきますし、悪ければ他の方法を検討していきます。そうした御意見をお聞きするのが、今回の実証で最も大事な部分だと思います。
皆さんには、是非、一度、自動運転バスに乗車いただき、また、予約サービスや運行情報可視化サービスを体験いただき、いろいろな御意見をいただければと思います。
自動運転バスの社会実証ですが、これが「社会実証のモデル」にもなれば良いなという思いで、取り組んでいきたいです。