第3回 物流×デジタル(前編)
「物流の逆襲・ロジスティクスの未来」について第3回目となります。前回までは、ビジネスにおいて花形であるマーケティングと比較して、これまで裏方として、あまり日の目を見なかった物流における重要性をお伝えいたしましたが、いかがでしたでしょうか。需要を想像し、お客様の欲しいモノを企画し、伝えるマーケティングに対して、物流は、その需要を遂行するため、お客様が欲しい時に、欲しいタイミングで、欲しい場所に届けます。モノの機能による差別化は、コモディティー化し、価格競争となりやすい中で、モノの届け方がひとつの価値となる。誰もが知るAmazonこそ、売っているものは、どこにでもあるモノを圧倒的な品揃えと、物流における利便性でお客様から選ばれています。まさに物流戦略がアマゾンを絶対的な付加価値となっています。
その物流そのものが、Amazon同様に進化しています。まさにDXと言われるデジタル化が進んでいます。物流におけるロボティクスなどの話を聞いたことがある方も多いのではと思います。今回は「物流×デジタル」をテーマに、これからの物流のデジタル化についてお伝えいたします。
物流の進化における変遷
いきなりロボティクスの話をする前に、物流のこれまでの進化の変遷を振り返ってみたいと思います。物流の進化を、尊敬するローランドベルガーの小野塚さんの著書「ロジスティクス4.0」でも書かれています。
19世紀の産業革命によって蒸気機関の実用化は、「輸送の機械化」による大量輸送を実現します。ロジスティクス1.0の始まりです。そして、1950年代には、大量に輸送によって積み込む荷物の荷積みや荷下ろしにフォークリフトなどを活用した「荷役の自動化」(ロジスティクス2.0)が進みます。中でも、コンテナBOXは物流における最大の発明とも言われています。
コンテナBOXは、大量輸送の積み下ろし時間のコストを大幅に改善し、統一された鉄の箱のコンテナで運ぶことで、船から鉄道やトラックと分かれていた物流をシームレスにつなぐことが可能になりました。また、輸送途中での盗難の心配もなくなることで、貿易をより手軽で身近な仕組みとして世界中に広げていきました。それによって、これまで輸送のため、港の近くに位置していた製造業の立地を変え、さらには、都市のあり方も変え、よりグローバルな経済へと変えていきました。
実は、日本の高度成長期に、当時ベトナム戦争中であったアメリカが軍事物資をアメリカからベトナムに輸送するコンテナの空の戻り便を活用することで、コストを抑えることができ、対米輸出貿易が急激に伸びるきっかけのひとつとなりました。
話をコンテナから物流の進化の変遷に戻すと、1970年代に第3の革新「管理・処理のシステム化」(ロジスティクス3.0)は、台帳などを使って人手に頼っていたモノの移動に関する管理をシステム化しました。WMS(物流管理システム)、TMS(輸配送管理システム)などの物流システムもこの時代に生まれました。その点では、このあたりから物流のデジタル化と言えそうです。そして、そのデジタル化をさらに進化させたのが、「物流の装置産業化」(ロジスティクス4.0)と言うことになります。
ロジスティクス4.0
Amazonの倉庫の中で人の代わりに動くルンバのようなロボットの映像を見た方もいるかと思いますが、まさにロボットなどによる物流の技術革新がロジスティクス4.0になります。そこでは、自動運転なども含まれ、輸送するトラックの運転を自動化することで不足するドライバ問題の解決策となります。
これまで大量の労働力や時間がかかっていたモノの移動を、ロジスティクス1.0では大量輸送を実現し、ロジスティクス2.0でその積み下ろしや積み替えなどの効率化し、ロジスティクス3.0でその管理をデジタル化してきましたが、いよいよそれらの作業を人から機械へと変わる変革期となります。
とは言え、全てが機械に変わるわけではないので、「省人化」とも呼ばれますが、物流現場における多くの仕事の機械化が進んでいます。これにより、これまで物流は多くの労働力を必要とする労働集約型でしたが、自動車の製造現場などにも見られるようなロボットアームが動く世界、装置産業型へとシフトすることを意味し、物流業界の、ディスラプション(破壊的革新)が求められています。
さらには、ロボットなどのハード面だけでなく、デジタルトランスフォーメーションでは、ソフト面であるデータを活用した物流の効率化が加速するのではと思います。今、アパレル商品のタグなどに埋め込まれているRFIDという電子タグなどは、これまでのバーコードによる処理を高速にするだけでなく、データを管理することでモノの流れを清流化し、デマンドチェーンと言われる購買情報を上流である製造工程や企画にフィードバックすることで在庫の最適化や需要予測に活用しようとしています。
また、これもAmazonネタですが、Amazonのお店でレジいらずで、そのまま持ち帰り、後からスマホで決済する映像をユーチューブなで見た方もいらっしゃるかと思いますが、これは先ほどの電子タグではなく、店舗に設置したカメラからの画像認識の技術によって商品を判別し、さらには購買行動そのものをデータ化しています。
これまでのレジでのPOSデータだけと違い、手に取ったけど購入しなかった商品や、お客様の目線でよく見られている商品などの情報をもとに商品の品揃えやレイアウトを変えています。モノのデータであるソフトを利用して、購買行動そのものが替わろうとしています。
まさに今の時代は、ハードの進化だけでなくデータを活用したソフトの進化の時代であり、その流れは物流においても同じで、まさにディスラプション(破壊的革新)が起こっています。
とは言え、変革には痛みがともないます。これまでの流れを変えることで問題も発生しおり、次回第4回のコラムでは、デジタル化の変革を疎外する要因やその対策についてお伝えさせていただきます。今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。物流で世の中を住みやすく、豊かな世界にする、そんな世界を夢見て、物流の大切さを少しでも多くの方に知っていただければと思います。
◆この著者の記事
第1回 マーケティング VS 物流 前編
第2回 マーケティング VS 物流 後編
第4回 物流×デジタル(後編)
第5回 物流の逆襲・ロジスティクスの未来
株式会社リンクス
代表取締役 小橋 重信
アパレル会社での在職中に上場から倒産までを経験。そこでは、在庫が滞留することの怖さを経験。その後の物流会社で多くの荷主の物流をサポートし、「物流から荷主企業を元気にする」ことを目標に在庫管理の大切さを伝える活動を行う。3年間のIT企業での経験から、ITの知見もあり、「ファッション×IT×物流」トータルでのコンサルティング活動を行う。
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