
駿府城(静岡県静岡市)の登城の前に知っておきたい歴史・地理・文化ガイド #DJ094
駿府城を起点とした旅行を満足度の高いものにするために、事前に知っておきたい歴史、地理、文化について詳しくまとめました。
駿府城の歴史
地理(静岡市の地勢、気候、交通アクセスなど)
文化(静岡市の伝統、特産品、地元の食文化)
駿府城を訪れる際にご活用ください。
1. 駿府城の歴史

駿府城の成り立ちと築城の経緯
現在の駿府城の所在地には、室町時代に駿河国の守護大名・今川氏の居館(今川館)が置かれていました。戦国時代になると今川氏は衰退し、1568年(永禄11年)には武田信玄の侵攻で今川館と城下町が焼き払われ、正確な位置も分からなくなります。
その後、織田信長から駿河国を与えられた徳川家康が1585年(天正13年)に駿府城の築城を開始し、1589年(天正17年)に二の丸までの城郭が完成しました。家康が幼少期に人質として過ごした今川館の跡地に築かれた城であり、家康にとって縁の深い地でした。
しかし完成からわずか翌年の1590年、当時天下人だった豊臣秀吉の命により家康は関東へ国替えとなり、築城直後の駿府城を離れます。代わりに豊臣家臣の中村一氏が入城し、以後約10年間駿府城主として城下の治水や経営に努めました。
徳川家康と駿府城の関係

1600年の関ヶ原の戦い後、駿府城には家康の血縁である内藤信成が城代として入りましたが、1605年に将軍職を秀忠へ譲った家康は、翌1606年から駿府城の大改修と城下町の整備に着手します。
この時、城は三重の堀を巡らせ現在見られる輪郭(郭が同心円状に配置された形式)を備えた壮大な平城となり、本丸北西隅には五重七階の天守閣も築かれました。1607年(慶長12年)には家康自身が駿府城へ隠居として移り住み、以後「大御所」として駿府城から幕政に大きな影響力を及ぼします。
駿府は江戸に次ぐ政治・経済の中心地として繁栄し、家康は駿府城で外交や統治を続けました。1616年(元和2年)、家康は75歳で駿府城にてその生涯を閉じ、遺骸は遺言に従って久能山に葬られます。
江戸時代~明治以降の駿府城の変遷

家康の死後しばらくは、十男の徳川頼宣が駿府藩主となり50万石で入封しましたが、その後秀忠の三男・徳川忠長(家康の孫)が1624年に駿府に入りました。しかし忠長は素行が悪く1631年(寛永8年)に改易され、以降明治の廃城まで駿府城に定まった城主は置かれず、幕府直轄領(天領)として城代(駿府城代)が駐在する形となります。
江戸時代には火災や地震が相次ぎ、1635年(寛永12年)には城下の大火が天守・御殿・櫓・門を焼失させました。幕府直轄で城主不在だったため天守は再建されず、城内建造物は縮小されます。その後も1707年(宝永4年)の大地震や1854年(安政元年)の安政地震で石垣や建物の多くが崩壊し、江戸期の遺構はわずかとなりました。
明治維新期には一時旧幕府の徳川慶喜が静岡(駿府)藩主として入りますが、廃藩置県により城は1871年までに廃城となります。1869年(明治2年)に駿府は「静岡」と改称され、以降城内の建物は順次取り壊されました。三の丸の外堀は埋め立てられて学校や官庁用地となり、南側には静岡県庁が建てられます。
1891年に城跡は市に払い下げられて公園となり、1896年(明治29年)には陸軍歩兵第34連隊駐屯のため本丸の内堀も埋められ、残っていた城郭施設もすべて撤去されました。こうして一度は姿を消した駿府城ですが、昭和24年(1949年)以降は再び市民の公園として整備され、平成に入ってから巽櫓(1989年)や東御門(1996年)などが伝統工法で復元されています。現在、かつての本丸・二の丸跡地は「駿府城公園」として整備され、往時を偲ぶ史跡と市民の憩いの場になっています。
2. 地理

静岡市の地勢と気候
静岡市は南に駿河湾、北に南アルプス(赤石山脈)の山々を抱えた地域で、豊かな自然に恵まれています。市街地は安倍川が運ぶ土砂でできた扇状地の上に広がっており、平坦で歩きやすい地形です。南アルプスから駿河湾まで続く特異な地形と温暖な気候のおかげで、お茶をはじめ多くの農産物や海産物が育まれてきました。
気候は一年を通じて比較的温暖で、冬は他地域よりも暖かく晴天の日が多い傾向にあります。冬季の平均気温は約0~18℃と過ごしやすく、雪も平野部ではほとんど積もりません。一方、夏は高温多湿で雨が多く、平均気温は21~32℃、月間降水量は280~305mmにもなります。梅雨時や台風シーズンには大雨になることもありますが、春と秋は気温・湿度ともに快適で観光に適した季節と言えます。
春先は雨がやや多いものの、3月下旬~4月上旬には市内各所で桜が満開となり、気候も穏やかです。特に駿府城公園は静岡市屈指の桜の名所で、毎年桜の見頃に合わせて「静岡まつり」が4月初旬に開催され、華やかな花見行列やパレードで賑わいます。
秋も晴天の日が多く、富士山が綺麗に望める澄んだ空気の日が増えるため、景色を楽しむ旅行には最適です。冬季も温暖で晴れた日が多いので、厚手の防寒をしなくても観光しやすいでしょう。静岡はこのように年間を通じて比較的過ごしやすい気候で、四季折々の自然と祭り・行事を楽しめる魅力的な土地です。
駿府城周辺の交通アクセス
鉄道: 駿府城公園(駿府城跡)は静岡市の中心部に位置し、JR静岡駅から徒歩約15分(約1.5km)とアクセス良好です。JR静岡駅は東海道新幹線および東海道本線の主要駅で、東京駅から新幹線で約1時間、新大阪からも約2時間半で到着できます。
駅北口から地下道を通り、市役所方面へ真っ直ぐ進めば迷わず公園に到達できるでしょう。また、新静岡駅(静岡鉄道静岡清水線のターミナル)からも徒歩約12分と近く、市内各所から電車やバスで気軽に訪れることができます。
バス: 静岡駅北口バスターミナルからは、主要観光地を巡回する「駿府浪漫バス」が運行されています。この循環バスを利用すれば、JR静岡駅から駿府城東御門前や巽櫓近くのバス停まで約15分で行くことができます。帰りの便は浅間神社や城北公園など市内名所を経由するルートになっており、車窓から静岡市街の観光スポットを一巡することもできます。
一般路線バスも多数あり、静岡駅から浅間神社、日本平ロープウェイ駅、久能山下など駿府城周辺観光地への直通・乗換えルートが整備されています。
自動車: 東名高速道路の静岡ICから市街地までは約17分、新東名高速の新静岡ICからは約18分で駿府城公園周辺に到着します。
公園付近には市営駐車場や民間駐車場が点在しており、車で訪れても駐車は比較的容易です(ただし平日昼間は官公庁利用者で混雑する場合があります)。レンタサイクルやタクシーを利用する場合も、静岡駅前で借りられるサービスがあり、市内観光に便利です。
旅行に適した季節と気候のポイント

静岡市は一年を通して観光しやすい気候ですが、特に春と秋がベストシーズンとされます。春(3~5月)は気温15~20℃前後と過ごしやすく、市内は桜や新緑に彩られます。前述のとおり駿府城公園の桜は見事で、毎年4月最初の週末に開催される「静岡まつり」では、大名行列を模した大御所花見行列や市民有志による総踊り的な夜桜乱舞など華やかな催しが行われ、観光客も地元の人も一緒に桜の下で賑やかに楽しめます。
秋(9~11月)も平均気温が20℃前後と穏やかで、湿度も下がり快適です。晴天率が高くなるため富士山を望むには絶好の時期で、日本平や三保松原などから雪化粧した富士山の絶景が楽しめます。駿府城公園や郊外の山間では紅葉も見られ、静岡浅間神社の木々も色づきます。
冬(12~2月)は寒さが厳しいイメージがありますが、静岡市は冬でも極端に冷え込む日が少なく、日中は10℃前後まで気温が上がる穏やかな日もあります。空気が乾燥し澄むため富士山のビューポイント巡りには適しており、また各所で新年の祭礼やいちご狩り(久能の石垣いちごは有名)など冬ならではの体験も可能です。
夏(6~8月)は平均気温が25℃以上、最高気温は30℃を超える日もあり湿度も高いため、熱中症対策が必要です。6月~7月は梅雨の時期で雨の日が多く、9月頃までは台風シーズンでもあるため、天気予報を確認しつつ旅程に余裕を持つと安心です。しかし夏季には安倍川花火大会(例年7月下旬)など大規模なイベントも開催され、市内繁華街はビアガーデンが開かれるなど活気があります。総じて静岡市は年間を通じて比較的穏やかな気候で、「いつ訪れても楽しめる」土地と言えるでしょう。
3. 文化

静岡市の伝統文化・風習
静岡市は古くから東海道の要衝・城下町として栄え、多彩な伝統文化が受け継がれています。特にお茶文化は静岡を語る上で欠かせません。静岡県は日本一の緑茶生産地で、市内各地に茶畑が広がり、市民の生活にも深く根付いています。
静岡茶の新茶シーズン(4月~5月頃)には茶摘み体験や製茶工場の見学イベントが催され、茶処ならではの文化体験が可能です。お茶席や野点も市のイベントで行われることがあり、旅の途中で名産のお茶と和菓子で一服するのも風情があります。
徳川家康が駿府に隠居したことで、静岡市には職人文化も花開きました。家康は駿河の総鎮守である静岡浅間神社の造営にあたり全国から多くの職人を呼び集めたとされ、その流れで駿河漆器や駿河竹千筋細工(するがたけせんすじざいく)などの伝統工芸が発展しました。
駿河漆器は安土桃山時代から続く漆塗り・蒔絵の技術で、華やかな調度品や茶道具を生み出しました。また駿河竹千筋細工は江戸時代初期に考案された細やかな竹細工で、薄い竹ひごを幾百本も組んで作る精巧な工芸品です。これらは経済産業大臣指定の伝統的工芸品にもなっており、市内の工房や静岡市立博物館などで作品や制作実演を見ることができます。
他にも、江戸より伝わった駿河雛人形や駿河塗下駄、染物など多彩な手工芸が受け継がれ、「ものづくりの町・静岡」としての側面も持っています。近年ではプラモデル(模型)産業が盛んなことでも知られますが、これも江戸期の木工玩具や駿河凧などの伝統工芸から発展したものといわれています。
風習や年中行事では、市民に長く親しまれている静岡まつりが代表的です。桜の名所である駿府城公園を中心に毎年春に開催される祭で、家康公が花見をした故事にちなみ「大御所花見行列」と称する時代絵巻のパレードが繰り広げられます。甲冑や華やかな衣装に身を包んだ市民が練り歩き、夜には提灯行列や大踊りも行われ、城下町らしい情緒と活気にあふれます。
夏には安倍川花火大会(約2万発の花火が夜空を彩る大イベント)や静岡八幡宮例祭、秋には大道芸ワールドカップ(世界的なストリートパフォーマーの祭典)があり、四季折々で伝統と現代が融合した行事を楽しめます。総じて静岡市は、徳川家康ゆかりの歴史文化と、豊かな風土に育まれた職人技や祭りが息づく土地柄であり、旅行者もこれらに触れることで地域への理解が一層深まるでしょう。
駿府城周辺の特産品・郷土料理
静岡市には歴史に育まれた名物グルメが数多くあり、駿府城周辺でも土地ならではの味覚を楽しめます。静岡おでんはその代表で、市民のソウルフード的存在です。真っ黒な濃口醤油ベースの出汁で牛すじや大根、卵など様々な具材を煮込んだおでんで、特徴的なのが「黒はんぺん」という黒っぽい練り物が入っていること。黒はんぺんはイワシやサバなど青魚のすり身から作られる静岡独特のはんぺんで、コクのある出汁との相性も抜群です。食べる際には青のりやだし粉(魚粉)をたっぷり振りかけるスタイルも静岡流で、香ばしい風味が食欲をそそります。

静岡市中心街の青葉おでん街(青葉横丁)にはおでん屋が軒を連ね、昭和の屋台村のような雰囲気の中で名物おでんを味わうことができます。地元の人との触れ合いを楽しみながら、一串ずつカウンターで頬張るおでんは旅行の忘れられない思い出になるでしょう。
安倍川もちも駿府の名物菓子として有名です。安倍川もちとは、つきたてのお餅にたっぷりのきな粉(砂糖入りの炒り大豆粉)をまぶした素朴な和菓子で、江戸時代から東海道筋の名物でした。府中宿(現在の静岡市街地)では、西へ向かう旅人たちが難所・大井川に入る前に安倍川を渡りますが、その手前で腹ごしらえに名物の安倍川もちを頬張ったと伝えられます。
駿府城址近くの老舗「石部屋(せきべや)」は創業400年以上を誇り、当時と変わらぬ製法で安倍川もちを提供しています。黄金色のきな粉をまぶした様子から、かつては「きんとき餅」「金な粉餅」とも呼ばれた由緒ある一品で、現在もお土産や茶席のお茶請けに大人気です。
駿府城を起点に少し足を延ばすと、静岡ならではの海の幸も味わえます。駿河湾で獲れる桜えび(サクラエビ)は全国でもここだけで漁獲される希少な小エビで、透き通った桜色が美しい名産です。春(3月下旬~6月)と秋(10~12月)の漁期に水揚げされた新鮮な桜えびは、生の刺身やかき揚げ、沖漬けなどで提供され、ぷりぷりとした食感と甘みを楽しめます。
市内の由比港や用宗港周辺には桜えび料理を出す食事処があり、桜えびのかき揚げ丼はぜひ試したい逸品です。また駿河湾のシラス(白いちりめんじゃこ)も有名で、生シラス丼や釜揚げシラスは静岡ならではの海鮮グルメです。徳川家康も愛したと言われる安倍川のり(安倍川で採れた川海苔)を使った佃煮や、駿河湾名産の塩辛・からすみなど海の幸も豊富です。久能山麓の石垣いちごや葉生姜、志太系ラーメン、富士宮やきそば(隣接地域のB級グルメ)など、挙げればキリがありません。
旅の際は駿府城周辺の郷土料理店や市場、食堂に立ち寄り、多彩な静岡の味覚を堪能してください。お茶と食文化が融合した静岡おでん茶飯(おでんの汁で炊いたお茶ご飯)や抹茶スイーツなどもあり、新旧のグルメが楽しめるのも静岡旅行の醍醐味です。

周辺の観光スポット
駿府城を中心に静岡市には魅力的な観光スポットが点在しています。徳川家康ゆかりの史跡から富士山を望む絶景ポイントまで、多彩な名所を巡ってみましょう。
久能山東照宮(くのうざん とうしょうぐう): 静岡市駿河区にある神社で、徳川家康公を祀る東照宮です。家康は駿府城で亡くなった後、「遺骸は久能山に埋葬せよ」と遺命し、二代将軍秀忠によって久能山山頂に墓所と神社が造営されました。
日本平(にほんだいら): 久能山の北側に広がる標高約300メートルの丘陵地で、東海地域有数の景勝地として知られます。
静岡浅間神社(しずおかせんげんじんじゃ): 駿府城公園から北東へ約2km、賤機山(しずはたやま)の麓に鎮座する古社で、静岡市の総鎮守(氏神様)として崇敬を集めています。
このほかにも、駿府城周辺には魅力的な見どころが多数あります。世界遺産の三保の松原(羽衣伝説で知られる松林と海岸、美しい富士山の遠景が望めます)や、登呂遺跡(弥生時代集落跡の史跡公園)、静岡市歴史博物館(駿府城の歴史や徳川家康に関する展示が充実)など、興味に応じて巡ってみると良いでしょう。
駿府城を起点に静岡市内を巡る旅は、戦国・江戸の歴史ロマンと豊かな自然、美食と伝統文化を一度に味わえる贅沢な体験となるはずです。事前にこれらの歴史・地理・文化の知識を知って訪れれば、現地で見る景色や建造物、食べ物一つひとつに深みが増し、きっと満足度の高い旅になることでしょう。ぜひ静岡の魅力を存分に味わってください。
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