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盛岡城(岩手県盛岡市)の登城の前に知っておきたい歴史・地理・文化ガイド #DJ090

盛岡城(岩手県盛岡市)を起点とした観光体験を満足したものにするために、事前に知っておきたい歴史、地理、文化の情報をまとめました。

  • 盛岡城の歴史的背景や見どころ

  • 周辺地域の地理的特徴と観光スポット

  • 盛岡の文化(食文化、伝統行事など)

    盛岡城を訪れる際にご活用ください。


1. 盛岡城の歴史

築城の経緯と南部藩の中心

盛岡城は、安土桃山時代末期から江戸時代初期にかけて南部氏によって築かれ、江戸時代を通じて盛岡藩(南部藩)の政庁となった城です​。天正19年(1591年)に南部信直(なんぶ のぶなお)が豊臣秀吉に所領を安堵され、従来の本拠地・三戸(さんのへ)から北上川流域の盛岡への拠点移転を決めたとされます​。

築城自体は信直の子・南部利直(としなお)が指揮し、2代藩主南部重直(しげなお)の寛永10年(1633年)に完成しました​。以後、廃藩置県まで約250年間にわたり南部藩主の居城として機能しました。明治維新後は廃城となり、1906年(明治39年)に「岩手公園」として一般開放され、春には桜の名所として親しまれています​。

城郭の構造と特徴

盛岡城は北上川、雫石川、中津川の合流点近くの花崗岩の丘陵を利用した平山城です​。三方を川で囲まれた自然の要害で、「不来方城(こずかたじょう)」とも呼ばれました(厳密には盛岡城築城前の古い城館の名称)​。城は本丸・二の丸・三の丸からなる連郭式で、本丸の北に二の丸(空堀と橋で接続)、さらに北に三の丸が配置され、周囲を腰曲輪や榊山曲輪などが囲む複雑な構造でした​。築城当初、幕府への遠慮から天守(天守閣)は造られず、本丸南隅に建てた三重櫓を事実上の天守代わりとしました​。なお一説には寛永10年の完成時に三重の天守があったものの翌年焼失し再建されなかったとも伝わります​。いずれにせよ近世盛岡城には石垣で固めた天守台はありましたが高層の天守閣はなく、代用の御三階櫓が後年「天守」と称されました​。

城の最大の特徴は、美しい白色花崗岩を積み上げた堅牢な石垣です。東北地方では石垣を多用した城は少ない中、盛岡城は良質な花崗岩に恵まれた地の利を活かし、高い石垣の城郭を築いています​。豊臣・徳川政権が南部氏に対し、南方の伊達氏への備えとして堅固な城郭築造を奨励したことも背景にあります​。

現在の遺構と復元状況

明治時代初期の廃城令により、盛岡城の建造物はほとんど撤去されました。現存するのは往時の壮麗な石垣と一部の曲輪の地形のみですが、その石垣は国の史跡に指定され保存されています​。建物では土蔵1棟が現存(城内で移築復元)し、かつての城門の一部は市内の寺院に移築保存されています​。城跡一帯は「盛岡城跡公園(岩手公園)」として整備され、園内には宮沢賢治や石川啄木の歌碑も立ち、市民の憩いの場となっています​。2006年(平成18年)には「日本100名城」に選定されるなど、歴史遺産としての評価も高まっています​。

2. 盛岡城周辺の地理的特徴

城周辺の地理とアクセス

盛岡城跡公園は盛岡市中心部、北上川と中津川の合流付近に位置しています。江戸時代、城の東南を中津川、本丸西側を北上川本流が流れ、自然の堀の役割を果たしました​。現在でも中津川が公園脇を流れ、川沿いには遊歩道が整備されています。JR盛岡駅から城跡公園までは徒歩約20分、または循環バス「でんでんむし」で約10分とアクセスも良好です。公園南口近くには市役所やバスセンターがあり、市街地観光の起点に適しています。

周辺の名所と自然スポット

石割桜(いしわりざくら)は城跡から徒歩5分ほど、盛岡地方裁判所敷地内にある有名な天然記念物です。幹回り4.3m、高さ10m、樹齢360年とも言われるエドヒガンザクラの巨木が、周囲21mの花崗岩の巨石を割って生育しており、その生命力あふれる姿に圧倒されます​。毎年4月中旬に淡紅色の花を満開に咲かせ、市民や観光客で賑わう桜の名所です​(夜間ライトアップもあり)。1923年に国の天然記念物に指定されており、盛岡を訪れたらぜひ見ておきたいスポットです​。

城の東を流れる中津川は、市街地にありながら水の透明度が高く、秋には鮭(サケ)が遡上することで知られています。10月上旬~11月下旬頃、中津川に架かる上ノ橋や中ノ橋から、数千キロの旅を経て産卵に戻ってきた鮭が泳ぐ姿を間近に観察できます​。川を遡る距離は河口から約200kmにも及び、日本で最長級の遡上距離とされています​。都市中心部で鮭の遡上が見られるのは全国的にも珍しく、秋の盛岡ならではの光景です。

城跡公園自体も四季折々の自然が楽しめます。は約200本のソメイヨシノなどが咲き誇り、「盛岡さくらまつり」期間中は夜間ライトアップも行われます​。は青葉やアジサイが彩り​、はモミジやイチョウが公園全体を鮮やかな紅葉で包みます​。冬は雪化粧した石垣が荘厳で、美しい写真スポットになります。公園内には梅林もあり、早春には白梅・紅梅が可憐な花をつけます。季節ごとの表情を見せる盛岡城跡公園は、一年を通じて訪れる価値があります。

近隣の観光スポット

盛岡城跡を中心に歩いて行ける範囲にも見どころが点在しています。城跡公園南口に隣接する櫻山神社は、盛岡藩ゆかりの神社で地元のお祭りの舞台です。公園西側には明治時代建築の岩手銀行赤レンガ館(旧第九十銀行本店、本館は国指定重要文化財)があり、レトロな洋風建築を公開しています。文学好きなら石川啄木・宮沢賢治青春館(旧盛岡高等農林学校本館)で二人の詩人にまつわる展示を見るのも良いでしょう。城下町の面影を残す「寺町通り」には藩政時代創建の寺院が並び、その一つ報恩寺には五百羅漢像が安置され見応えがあります。これら周辺スポットも組み合わせれば、盛岡の歴史文化を深く味わえるでしょう。

3. 盛岡の文化・伝統

盛岡の食文化(三大麺と郷土食)

盛岡はユニークな麺料理を三種類楽しめることで有名で、「盛岡三大麺」と称されています​。一つ目はわんこそば。小さなお椀に一口分ずつ盛られた温かい蕎麦を給仕さんの掛け声「はい、どんどん!」とともに次々とおかわりし、何杯食べられるか挑戦する独特のスタイルです。元々はお殿様へのおもてなし料理が起源とされ、現在では観光客向けにお椀を重ねながら楽しむ食文化として親しまれています。平均で男性50~60杯、女性30~40杯ほど食べると言われ、箸休めの薬味も豊富なので飽きずに楽しめます。盛岡市内の老舗「東家」や「初駒」などで体験できますが、満腹になったらお椀に蓋をして終了の合図にしましょう。

二つ目は盛岡じゃじゃ麺。茹でた平打ちうどんに、肉味噌・きゅうり・ネギ・生姜・ニンニクなどを載せ、自分でよく混ぜて食べる汁無し麺です。戦後に旧満州から引き揚げた方が現地の「炸醤麺(ジャージャー麺)」をアレンジして広めたのが始まりで、盛岡市内の名物となりました​。コクのある肉味噌と酢やラー油で味変しながらいただき、食べ終わりには器に生卵を割り入れ、茹で汁を加えて「チータンタン」というスープにして締める独特の流儀があります。元祖と言われる「白龍(パイロン)」本店などが有名で、地元のソウルフード的存在です。

三つ目は盛岡冷麺。コシの強い透き通った冷たい麺に、ピリ辛の牛骨ベース冷スープ、キムチ、ゆで卵、果物(スイカや梨)などを添えた清涼感ある一品です。もともと朝鮮半島の冷麺をルーツに、1954年に盛岡の焼肉店「食道園」が提供したのが発祥と言われます。麺は芋のでんぷんを使うため独特の強い歯ごたえがあり、スープの辛さは店ごとに選べます。夏はもちろん一年中人気で、現在は「ぴょんぴょん舎」など市内各所で名店の味を楽しめます。

この三大麺以外にも、南部せんべい汁やひっつみ(すいとん)など岩手の郷土料理を出すお店、地元の老舗パン屋「福田パン」のコッペパン、甘味では「ごま摺り団子」なども評判です。旅の合間に盛岡の味をいろいろ試してみましょう。

伝統行事・祭り

盛岡では昔ながらの祭りや行事も受け継がれており、旅行日程が合えばぜひ見学したいところです。初夏の風物詩がチャグチャグ馬コ(チャグチャグうまっこ)です。毎年6月第2土曜日に開催され、色とりどりの豪華な装束と鈴で飾り付けられた約100頭の馬が滝沢市の鬼越蒼前神社から盛岡八幡宮まで約13kmを練り歩きます​。

農耕馬に感謝し豊作を祈る行事で、「チャグチャグ」という名称は馬に付けた鈴の音に由来します​。この祭りは1978年に国の選択無形民俗文化財に指定され、馬の鈴の音は「日本の音風景100選」にも選ばれています​。青空の下、のどかに聞こえる鈴の音と絢爛な馬の行列は、一見の価値があります。

真夏の一大イベントが盛岡さんさ踊りです。毎年8月1日~4日の夜に開催され、東北五大祭りの一つに数えられる盛岡の代表的夏祭りです​。市内大通りを会場に、太鼓を打ち鳴らしながら踊る大パレードが連日行われ、その参加者数は延べ3万数千人とも言われます​。特に太鼓の出演者数は世界最大規模で、「和太鼓同時演奏の世界記録」を持つほどです(ギネス記録では太鼓奏者3,437人が同時演奏)​。

さんさ踊りには「鬼の手形岩」の伝説が由来しており、悪さをした鬼を退治した人々が「さんさ(幸々)」と囃しながら踊ったのが起源とされています​。勇壮な太鼓と笛の音色、色鮮やかな浴衣姿の踊り手たちが織りなす光景は迫力満点で、観客も一緒に踊れる輪踊りタイムも設けられ大いに盛り上がります。夜風に包まれながら見るさんさ踊りは、盛岡の夏の思い出になるでしょう。

このほか、旧暦の七夕に近い8月7日に盛岡八幡宮で行われる盛岡八幡宮例大祭(山車の巡行や神輿渡御)、秋には盛岡秋祭り(神輿と山車)、冬には火防祈願の裸参り(1月)、雪あかりを灯すもりおか雪あかり(2月)など、四季を通じて様々な行事があります。旅の時期に合わせて地元の祭りを楽しめれば、より一層思い出深い旅となるでしょう。

体験型の観光アクティビティ

盛岡では文化や伝統工芸に触れる体験プログラムも充実しています。特に有名なのが南部鉄器の製作現場見学です。南部鉄器は盛岡藩の時代から続く鉄器工芸で、鉄瓶や風鈴などが全国的にも知られます。盛岡市内の老舗鋳物工房「岩鋳(いわちゅう)」や「鈴木盛久工房」では、熟練の釜師たちによる鋳造の作業工程を見学することができます​。

重厚な鉄が真紅に溶けて型に流し込まれる様子や、表面を削り出す繊細な手仕事は必見です。工房併設のギャラリーでは伝統とモダンが融合した鉄器製品の展示販売もあり、お土産にも最適でしょう。

さらに、多様な地場産業の技に触れられる施設として盛岡手づくり村があります。ここは岩手山麓に点在する工芸工房を集めた観光施設で、職人の作業風景を見学できるほか、実際にものづくり体験もできます​。陶芸のろくろ体験や陶器への絵付け、伝統の藍染め、竹細工やわら細工、機織り(はたおり)といった様々な手仕事に挑戦できます​。
※一部メニューは休止の場合あり​。

自分で作った作品は旅の思い出になりますし、職人さんとの触れ合いから地域文化を肌で感じられるでしょう。また、手づくり村内には南部曲り家(馬と人が同じ屋根の下で暮らすL字型古民家)の移築展示もあり、南部地方の昔の暮らしぶりを体感できます​。

食の体験では、盛岡の地酒蔵を見学するツアーがおすすめです。市内の老舗酒蔵あさ開(あさびらき)では、伝統的な手仕込みと最新設備を併用する酒造りの現場を無料で案内しています​。麹の香り漂う仕込み蔵や巨大なタンクが並ぶ様子をガイド付きで見学し、日本酒ができるまでの工程を学べます​。見学後にはできたての日本酒の試飲も用意されており、銘酒の味を堪能できます。事前予約制ですが所要30分程度で気軽に参加できるので、日本酒好きの旅行者には見逃せません。

そのほか、南部せんべいの手焼き体験(手づくり村内で実施​)や、郷土芸能のさんさ踊り体験講座​なども用意されています。盛岡ならではの体験を通じて、旅を一層思い出深いものにしましょう。

旅行の豆知識とモデルコース提案

  • 豆知識:ニューヨーク・タイムズが選ぶ「訪れるべき場所52選」第2位 – 近年、盛岡市はその魅力が海外からも注目されています。2023年には米紙ニューヨーク・タイムズの「52 Places to Go (52カ所の旅行先)」リストで世界第2位に選ばれました​。歴史的街並みや工芸、カフェ文化などが評価されたもので、盛岡城跡を中心とした街歩きが“今行くべき旅”として高く評価されたのです。この話題を知っていれば、旅先で地元の人との会話も弾むかもしれません。

  • 豆知識:盛岡の地名の由来 – 「盛岡」の名は城下町建設の際に信直が「盛り上がる岡」にちなみ命名したとも言われます。それ以前は「不来方(こずかた)」と呼ばれましたが、アイヌ語由来説や「敵が来ない堅固な地」の意とも伝わります。石川啄木の有名な短歌にも「不来方(こずかた)のお城の草に寝ころびて…」と詠まれており​、旧名の由来を感じさせます。旅の予備知識として覚えておくと、城跡の碑文なども興味深く読めるでしょう。

  • モデルコース:盛岡城跡と周辺を巡る半日コース

    1. 盛岡城跡公園 – 朝一番に城跡公園を散策。石垣の上から盛岡市街や背後の岩手山を眺め、歴史に思いを馳せます。園内の啄木歌碑や賢治詩碑にも立ち寄りましょう。

    2. 櫻山神社 – 公園南口すぐ。盛岡藩士たちも参拝した由緒ある神社で、勝守などオリジナル御守も人気です。

    3. 岩手銀行赤レンガ館 – 神社横にある赤レンガの洋館を見学(9:00開館)。明治期の銀行建築で館内は郷土資料館になっています。レトロな写真スポットとしても◎。

    4. 石割桜 – 徒歩5分ほど裁判所前の石割桜へ。巨大な岩から咲く一本桜を間近で観賞​。開花期以外でも岩と木の迫力ある姿は必見です。

    5. もりおか歴史文化館(時間に余裕があれば) – 石割桜から徒歩2分。南部藩や盛岡の歴史を映像や模型でわかりやすく紹介する博物館です。祭りの衣装や城下町ジオラマなど見応え充分。

    6. 昼食:三大麺に挑戦 – 城下町散策の締めくくりに名物ランチを。わんこそば老舗の「東家本店」は徒歩圏内、中ノ橋たもとの「直利庵」では蕎麦やひっつみ定食も楽しめます。じゃじゃ麺派ならバスで10分の「白龍」本店へ足を延ばす手も。冷麺は駅ビル内の店などでも手軽に味わえます。

  • モデルコース:盛岡満喫1泊2日プラン
    〈1日目〉上記半日コースをベースに市内観光。昼食後、市内の盛岡手づくり村へ移動(車で約30分、バスもあり)し午後は手作り体験や工房見学​。南部鉄器の絵付け体験やせんべい手焼き体験で盛岡の伝統に触れます。

    夕方に市内へ戻り、老舗酒蔵あさ開の蔵元見学と試飲でほろ酔い気分に​。夜は地酒と炉端焼きが評判の居酒屋で岩手の山海の幸に舌鼓を打ち、盛岡に宿泊。

    〈2日目〉朝食はホテルで郷土食のひっつみ汁を味わい、レンタカーまたはツアーで郊外へ。盛岡駅から車で30分の小岩井農場へ行き、雄大な牧場風景やジャージー牛のソフトクリームを楽しみます。天気が良ければ岩手山をバックに記念撮影を。

    午後は盛岡市街に戻り、時間が許せば盛岡八幡宮や啄木新婚の家などを訪ねつつお土産ショッピング。南部鉄器の急須や「ゆべし」などのお菓子、前出の三大麺を乾麺セットで買うのも喜ばれます。最後に駅ビルフェザンで駅弁「牛肉どまん中」を購入し、新幹線で帰路につきましょう。

上記は一例ですが、盛岡城を起点に歴史・自然・食・文化をバランス良く組み込むことで、盛岡の魅力を余すところなく満喫できる旅行プランとなります。

事前に本稿で紹介した知識を頭に入れて訪れれば、現地での発見や感動も一層深まるはずです。ぜひ準備万端で盛岡の旅に出かけ、城下町ならではの情緒とおもてなしを存分に味わってください。良い旅を!​

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