業務アプリ開発におけるUIリサーチ
こんにちわ、UX/UIデザイナーの樋口です。
UIリサーチをテーマに、調査手法や得られた学びについて書いていきます。
はじめに
今回私が参画したプロジェクトは、モバイル端末で利用できる業務アプリを開発するプロジェクトでした。業務アプリとは、生産管理や会計業務など、業務遂行を目的として用いられるアプリを指します。
一方で、業務遂行を目的としない、個人が娯楽目的で利用するアプリはコンシューマー向けアプリと呼ばれます。SNSやゲーム、日記など、普段の生活に身近なアプリの多くはこちらに分類されます。
UIリサーチ実施の背景
アプリの開発にあたり、私たちは「利用者の現状を知るため」「アイデアの需要を知るため」など様々な目的で調査を行います。
今回は「私たちが検討している業務アプリでは、どのようなUIが好ましいのか?」について、世の中にあるアプリから洞察を得るために調査を実施しました。
とはいえ、業務アプリは純粋にインターネット上で検索をしても、思い通りの結果を得られないことがほとんどです。また、「実際に利用してみたい」と思っても、多くの障壁があります。これらの背景から、今回のUIリサーチは、コンシューマー向けアプリから洞察を得ることにしました。
もちろん、コンシューマー向けアプリと業務アプリは利用する動機や、利用シーンが異なるので、コンシューマー向けアプリと業務アプリの違いは整理・理解した上で調査を実施しています。
UIリサーチの流れ
コンシューマー向けアプリは特定の用途に特化したものも多く、「今検討しているアイデアや機能を全て兼ね備えたアプリ」を探し出すのは困難です。そのため、機能ごとに調査するアプローチとしました。
① 実現すべきアイデアを機能ごとに分類し、調査対象を決める
まずはアイデアを機能ごとに分類します。
調査期間にもよりますが、多数ある場合は重要な機能や実現確度が高そうな機能に絞ります。
② 機能の特徴や、キーとなる行動を探る
リサーチ対象を決めたら、「どんな情報を入力するのか/見たいのか?」など、その機能の特徴や利用する際の行動を探ります。
「打刻をする」であれば「開始と終了を入力する」など、抽象化を行うことで、コンシューマー向けアプリに置き換えやすい状況を作ります。
③ コンシューマー向けアプリに置き換える
「開始と終了を入力する」アプリにはどんなものが考えられるか、検討します。パッと思いつくものはタイマーアプリでしょうか。
勉強する時や運動する時など、どんなときに時間を入力する必要があるかを考えていくと、選択肢がどんどん広がります。
④ UIリサーチの実施・結果をまとめる
該当しそうなアプリが見えてきたら、後は調査するだけです。探せば探すほど見つかるので、時間や件数など終わりの目安を設けておく方が気持ちの面で楽になります。
結果をまとめる際は、アプリの使用感だけでなく「これから作るアプリに取り入れたいところ」をメモしておくのもおすすめです。実際にUI設計をする際など、後から見返したときに参考にしやすくなります。
UIリサーチを終えて、思うこと
部分的に他のアプリやサービスを参考にする機会はありましたが、機能に特化した調査は初めての経験でした。多くの学びが得られた中でも、下記については特にメリットを感じることができました。
多数のアプリを調査することができる
複数人で実施したこともあり、短期間で約100件ものアプリをリサーチすることができました。様々な選択肢の中から検討できるので納得感が増すだけでなく、UIに関するアイデアの引き出しが増えるので、設計する際にも役立ちました。チームで足並みを揃えることができる
日頃使っているアプリや、これまでに携わったアプリなど、個人の経験を持ち寄ることもありますが、「利用したことがない」「ネガティブな感情を持った」など、相互理解が難しいこともあります。
調査の実施や結果を共有することで、個人の経験や知識に依存せず、お互いの経験や知識を補完しあうことができます。チームの足並みを揃える上でも有用な活動だったと実感しています。
最後に、UIリサーチを通して得た洞察を元に設計していく中で「リサーチ時点では良いと思ったけれど、実際に当てはめてみるとフィットしなかった」ということもありました。
リサーチの結果も大事ですが、それを絶対とはせず、「私たちが作るアプリ」に合わせてチューニングしていくことが大事だと思います。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!