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地方企業の挑戦を支える FinanScope の未来を PdM の和田さんに訊く

どうも、デジタルキューブグループ 広報のタカバシです。

地方の中小企業が直面する事業承継や成長の壁。この課題に挑むデジタルキューブの新サービスが「FinanScope」(ファイナンスコープ)です。今回は、PdM(プロダクトマネージャー)としてこのサービスの立ち上げに携わった取締役 管理部長の和田拓馬さんにインタビューを行いました。

香川県出身の和田さんが、なぜ IPO 支援を通じて地方企業の未来を変えようと決意したのか。WordPress を主軸としてきたデジタルキューブが、なぜ金融テックの分野に進出したのか。そして、TPM(TOKYO PRO Market)という新しい選択肢が、どのように地方企業の可能性を広げるのか。

事業承継問題やコロナ禍でのリモートワーク普及など、地方を取り巻く環境が大きく変化する中、FinanScope に込められた想いを語っていただきました。地方創生に関心のある方、新しいキャリアにチャレンジしたい方にぜひ見ていただきたいインタビューです。

和田 拓馬(取締役 管理部長 / Board Director CFO)


── まずは FinanScope を立ち上げた理由、動機を教えていただけますか?

FinanScope を立ち上げた理由は、主に地方の中小企業の発展に貢献したいという思いからです。

IPO タスク管理ツール FinanScope

私は香川県の出身で、地方の人間として地元への愛着が強いです。香川を出て、京都で5年、香港で3年、そして再び京都で1年働いた後、30歳の時にUターンして香川に戻ってきたのですが、その時に地方の現状と可能性について、新たな視点が生まれると同時に、危機感を持ちました。

地元に帰ってみると、実は上場企業や魅力的な非上場企業がたくさんあることに気づきました。ただ、これらの企業は地域内では知られていても、他の地域ではほとんど認知されていません。

同時に、コロナ禍でリモートワークが一般的になり、地方にいながら都会の仕事ができるようになりました。これは良いことですが、一方で地元企業への貢献が限られてしまうという課題も感じました。

また、新規 IPO という観点では、2013年以来、長らく IPO 企業が出ていないという現状も知りました。持続可能な方法で成長していけるモデルを作らなければ、将来の若者が地方でも活躍できる場がなくなってしまうのではないかと思いました。

そこで、地元企業の支援、特に事業承継や成長戦略の面でサポートできないかと考えました。

── ひとりの活動ではなく、チームや組織でゴールを目指す形を取ったのはなぜですか?

チームで取り組んだ方が、より多くの企業の課題解決に貢献できるのではないかと考えたからです。

私はこれまで、会計事務所や M&A のコンサルティング会社で働いてきました。その経験を通じて、財務、会計、M&A、IPO などの分野で専門的な知識とスキルを培ってきました。これらは、企業の成長や事業承継において非常に重要な要素です。

一方で、広報やマーケティング、デザインといった分野は、私の専門外です。自分にできることを最大限に活かしつつも、チームで取り組むことでより良い結果が得られると考えました。

── サービスをデジタルキューブでつくろうと思ったのはなぜですか?

社長の小賀さんと縁があった、というのが何よりも大きいですが、それに加えてデジタルキューブには「常に学び続ける」という企業文化があり、新しいチャレンジを歓迎する雰囲気がありました。これは、新規事業を立ち上げる上で非常に重要な要素でした。

加えて、デジタルキューブは 2022年11月に M&A でヘプタゴンとグループ会社になった経験があります。この経験を直接活かせる環境があることも、FinanScope の開発に大きなメリットでした。

── 現在の FinanScope について、まずはチームの構成や雰囲気を教えてください。

FinanScope は当社グループの新規事業という位置づけで進めています。ただ、専任のスタッフがいるというよりは、プロジェクトに近い形で運営しています。必要なタイミングで必要なメンバーがアサインされて関わってもらうという形です。

関わっているメンバーとしては、経営陣、マーケティング・広報チーム、フロントエンドエンジニア、バックエンドエンジニア、デザイナーに加えて、外部の会計士コンサルタント、さらに管理部のメンバーにも入ってもらっています。

開発に関しては、関連会社のヘプタゴンから参加しているエンジニアたちの存在が大きいですね。彼らは高度な技術力を持ち、新しい挑戦に対して常に前向きです。

新規事業ということもあり、いい意味で失うものはあまりないですし、チャレンジさせてもらえる環境だと感じていますし、勢いのようなものを感じます。

現在はプロジェクトのような形で進めていますが、おかげさまでお客様も増えてきており、今後は本格的な事業として発展させていきたいと考えています。

── プロジェクトにバックオフィスである管理部のメンバーが入っているのはなぜですか?

FinanScope の実用性と使いやすさを向上させるためです。これには大きく2つの意図があります。まずは実際の使用感のフィードバックを受けるためです。

FinanScopeは、IPO や M&A の準備を支援するツールです。バックオフィス(企業の管理部門を指し、経理、人事、総務などの業務を担当する部門)のメンバーは、実際にこういった業務に携わる機会が多いため、彼らの視点からのフィードバックは非常に貴重です。例えば、「この機能は実務で使いやすい」とか「ここはもう少し改善の余地がある」といった意見をもらえます。

あとは顧客視点の理解もあります。FinanScope は、導入する企業のバックオフィス部門が主に使用することになります。そのため、我々のバックオフィスメンバーの意見は、実際の顧客の使用感を予測する上で非常に重要です。

特に重要なのは、FinanScope が「あったら便利」程度のツールではなく、実際に使われる必須のツールになることです。会計システムや給与計算システムのような必須のツールと違い、FinanScope は現時点では「あったら便利」な位置づけです。そのため、いかに使ってもらうか、「なくてはならない」と思ってもらえるかが重要になってきます。

バックオフィスのメンバーに参加してもらうことで、実際の業務フローに沿った機能改善や、使いやすさの向上につながります。これにより、FinanScope がより多くの企業で採用され、実際に活用されるツールになることを目指しています。

── これからの FinanScope について、どのような展開を考えていますか?

まず、業務範囲と機能面についてですが、究極的にはバックオフィス全般に関わる機能支援ができればと考えています。当面は上場準備(IPO)と M&A にフォーカスしていきますが、将来的にはより幅広い支援を行いたいと思っています。

現在提供しているサービスについてはユーザーの声を反映した改良、機能拡充はもちろんですし、さらに教育プラットフォームの構築を考えています。

教育プラットフォームの構築については、学習コンテンツや試験機能を組み込んだアカデミー機能を追加し、ユーザーのスキルアップを支援します。FinanScope を通じて学んだ人材が新しい会社に転職したり、上場準備をしている会社でチャレンジしたりする際のマッチングもできるようになればと考えています。逆に成長中の企業に CFO が不在の場合、適切な人材を紹介できるような仕組みも作りたいと思っています。

── 競合についてはどう考えていますか?

例えば IPO や M&A  のコンサルティングなどに関しては、大手コンサルティング会社や証券会社などが競合と言えるかもしれませんが、「FinanScope Management」のような IPO 準備を包括的に支援するクラウドツールという点では、現時点で直接的な競合はそれほど多くないと認識しています。
ただ、競合の存在を否定的に捉えているわけではありません。むしろ、プレイヤーが増えることはポジティブに捉えています。というのも、IPO や TPM(TOKYO PRO Market)上場の支援を行う企業が増えることで、この選択肢を検討する企業も増え、市場全体が拡大すると考えられるからです。

日本全国の企業をカバーするには、1社では限界がありますし、地域ごとに異なるニーズや課題に対応するには、複数のプレーヤーが必要です。企業によって求めるサービスや支援の内容は異なりますし、複数のプレーヤーがいることで、企業側の選択肢が増え、より適切なサポートを受けられる可能性が高まります。

我々の目標は、単にマーケットシェアを獲得することではなく、地方企業の発展と地域経済の活性化に貢献することです。競合の存在を意識しつつも、我々にしかできない支援の形を追求していきたいと思います。

── SaaS としての機能以外の部分ではいかがでしょうか?

各地域の金融機関、VC(ベンチャー・キャピタル)、事業会社、経営者、そして自治体などとの連携を深めていきたいと考えています。特に地方銀行との連携は重要です。例えば、佐賀銀行が TPM の支援免許「Jアドバイザー」を取得したように、地方金融機関が新たな取り組みを始めることで、地域経済の活性化につながると考えています。
(参考:佐賀銀行、東証プロ市場上場支援の資格取得 銀行では初 │ 日本経済新聞

事例としては、2025年には最初の FinanScope 利用企業の上場を予定しています。こういった成功事例を積み重ねることで、サービスの認知度と信頼性を高めていきたいと思います。

環境予測としては、スタートアップ支援の動きが活発化しており、政府も2027年までにユニコーン企業100社の創出、スタートアップ10万社の創出を目指しています。
(参考:PDF スタートアップ育成5か年計画(案)│ 内閣官房

この流れに乗って、起業家の増加とともにバックオフィス支援のニーズも高まると予想しています。
同時に、事業承継の問題も依然として大きな課題です。特に地方において、後継者不在の企業が多く存在しています。
この両面からマーケットの成長が期待できると考えています。

── 3〜5年後の理想形はどんなものでしょうか?

3年後、5年後の未来像としては、FinanScope を通じて IPO や M&A を実現する企業が増え、それによってサービスの認知度が高まり、新たな顧客やパートナーが自然と集まってくるような好循環を生み出したいと思っています。同時に、各地方での草の根的な活動を通じて、地域に根ざした形でのサービス展開を目指しています。

── 各地方での草の根的な活動について詳しく教えてください。

まず、地方での活動の重要性について説明させていただきますと、FinanScope の目的である「地方の中小企業の発展に貢献する」というビジョンを実現するためには、各地域に根ざした活動が不可欠だと考えています。例えば、地域のスタートアップイベントへの参加や地方金融機関や地方自治体との連携、地元経営者ネットワークの構築が考えられます。

具体的には、各自治体が主催するスタートアップのピッチイベントなどに積極的に参加したり、地方VC、地方銀行などの金融機関とも協力をして、彼らの顧客である地元企業に対してセミナーや相談会を開催することを考えています。先ほど触れた佐賀銀行の TPM 支援の取り組みのように、経営者の方々に TPM 上場という選択肢があることを知っていただく機会を作りたいです。もちろん、FinanScope を活用して成功した地方企業の事例を取り上げ、同じような課題を抱える他の地方企業に具体的なイメージを持っていただきます。

地域ごとに異なる課題や文化がありますので、それぞれの地域に合わせたアプローチは必要ですが、これらの活動を通じて、「東京の話ではなく、ここ(各地方)の話」という現実感を持っていただくことが重要だと考えていますし、活動は我々だけではなく、各地域で同じ志を持つパートナーと協力して進めていきたいと考えています。

── TPM に関して伺います。これからスタンダードやグロースに上場するのは厳しくなると思いますが、そんな中で TPM というのはどういうポジション、役割になるのでしょうか?

まず、2024年8月現在、東京証券取引所の各市場の上場企業数は、プライム市場 1,644社、スタンダード市場 1,604社、グロース市場 588社、TPM 112社となっています。
(参考:上場会社数・上場株式数 | 日本取引所グループ

ご指摘の通り、スタンダード市場やグロース市場への新規上場は今後厳しくなっていく傾向にあります。特にグロース市場は、当初の目的である「将来の大型成長企業の育成」という観点から、上場基準の厳格化が議論されていますし、TPM の役割はますます重要になってくると考えています。

実際に、TPMへの新規上場企業数は増加傾向にあります。2023年は32社が新規上場し、2024年もさらに増加すると予想しています。私の見立てでは、数年以内に TPM への新規上場数がグロース市場を上回る可能性があると考えています。

背景には、TPM の認知度向上があります。以前は「聞いたこともない市場」と警戒されがちでしたが、徐々に有力な選択肢として認識されるようになってきました。

TPM は、形式基準(売上高や利益、流通株式比率など)が設けられていないため、他の市場と比べて上場しやすい特徴があります。これにより、将来性はあるものの現時点では他の市場の基準を満たせない企業にとって、上場という選択肢を提供できます。

また、TPM に上場することで、企業はガバナンスの整備や情報開示の経験を積むことができます。これは将来的に他の市場への移行を目指す企業にとって、貴重な経験となりますし、地方の優良企業が全国区で認知されるきっかけになり得ます。地方企業にとって、東京の投資家とつながる貴重な機会となります。

FinanScope としては、TPM の特徴と可能性を踏まえて、特に地方の中小企業に対して TPM を有力な選択肢として提案していきたいと考えています。同時に、上場した後の成長支援や、必要に応じて他の市場への移行支援なども行っていく予定です。

── 現在、募集しているスタッフはどんなポジション、業務内容になりますか?

2024年8月7日時点で募集しているのは、IPOコンサルタントとカスタマーサクセスになります。

IPOコンサルタントは、新規顧客の開拓と FinanScope の導入提案を主に担当します。この役割は、潜在的なお客様に対してサービスの価値を説明し、導入を促進する営業的な要素が強いものです。

一方、カスタマーサクセスは、契約締結後のお客様サポートに注力します。具体的には、新規ユーザーが FinanScope を効果的に使い始めるためのオンボーディングプロセスを支援し、お客様がシステムを十分に使いこなせるようになるまで継続的なサポートを提供します。この役割は、お客様との長期的な関係構築と、FinanScope の効果的な活用を促進することを目的としています。

これらの職種に求められるスキルや経験としては、金融や経済に関する基礎知識があることが望ましいですが、必須ではありません。むしろ、コミュニケーション能力や営業スキル、システムへの理解力などを重視しています。

ただし、この仕事には特徴があります。例えば、入社後も継続的に学習が必要です。経営者や金融機関、税理士など、様々な専門家と話ができるレベルまで成長することが求められるので、IPO や M&A に関する知識、財務、法務など、幅広い分野の知識を身につけていく必要があります。

お客様の上場までは早くても2年程度かかるため、長期的な視点でサポートを行う必要がありますが、お客様の大きなイベント(IPO や M&A など)に関われるため、非常にやりがいのある仕事だと考えています。

コンサルタント的なマインドセットを持ち、様々な企業を見てみたい、支援してみたいという意欲のある方が向いていると考えています。また、日々同じ仕事をするよりも、変化のある環境を好む方にも適していると思います。

新規事業であるため、入社後すぐにリーダー的な立場になる可能性もあります。ただし、一人で全てをこなすわけではなく、私を含む経営メンバーと一緒にプロジェクトを推進していくことになります。

── コンサルタントだと専任ではなく、パートナーとして外部の方にお願いするという選択肢もありえますか?

コンサルタントについては業務委託での参画も大歓迎です。専門的なスキルや知識を持つ方々には、柔軟な形で協力いただきたいと考えています。
しかし、社内の中核となるスタッフ、特に営業やカスタマーサクセスの担当者については、専任のメンバーを求めています。

FinanScope の仕事は、単発の取引ではなく、長期的な関係性が重要です。お客様と定期的なコンタクトを取り、リレーションを強化していく必要があります。これは、専任のスタッフでこそ効果的に行えると考えています。また、お客様からの様々な問い合わせや要望に対して、迅速かつ適切に対応するためには、ある程度の権限を持つ必要があります。専任のスタッフであれば、より広範な権限を持って対応できます。

あとは、先ほど申し上げたように、将来的にはこの事業が大きく成長することを期待しています。専任のスタッフであれば、事業の成長とともに自身のキャリアも発展させていくことができます。例えば、自ら企画を考えて実行したり、支援したお客様からリピートで相談を受けたりする機会も増えていくでしょうし、「地方企業の発展支援」という長期的なビジョンに向けて一緒に歩んでいけると考えています。FinanScope の成長に深く関わり、その過程で自身も大きく成長できる。そんな機会を提供したいという思いが、専任のスタッフを求める大きな理由です。

もちろん、状況に応じて柔軟に対応することも考えています。例えば、まずは副業や業務委託から始めて、お互いに合いそうだと感じたら専任に移行する、といったケースも想定しています。
重要なのは、FinanScope の理念に共感し、共に成長していく意欲を持った人材を見出すことです。そのような方々と一緒に、この事業を大きく育てていければと考えています。


FinanScope を通じて地方企業の課題解決に取り組むという和田さんの思いが伝わってきました。IPO は多くの企業にとって未知の領域ですが、FinanScope もまた、この分野での挑戦者です。また、TPM という選択肢を活用し、地方企業の可能性を広げていく取り組みは、私たち自身にとっても新しい挑戦です。地域に根ざした活動や金融機関との連携など、一歩一歩実績を積み重ねていくことで、その未来が拓けるのだと思いました。
この挑戦における新たなメンバーも募集中です。地方創生や Fintech に関心のある方と共に成長していける機会になりそうです。
FinanScope の挑戦がより多くの地方企業の未来を支えることにつながるよう、広報としても尽力していきたいと思います。

それでは、また。