これまでの AI と生成 AI って何が違うの?クラウドアーキテクトの佐々木さんに訊く
どうも、デジタルキューブグループ 広報のタカバシです。
株式会社ヘプタゴンが生成 AI を活用したソリューションの提供を開始しました。
これまでもヘプタゴンは AI を活用していろいろな課題を解決してきていますが、生成 AI では何が変わるのでしょうか? 生成 AI の活用方法やこれまでの AI と生成 AI との違いをクラウドアーキテクトの佐々木さんに訊いてみました。
━━ まずは先日リリースされた「生成AI社内文書検索システム構築支援サービス」について教えてください。
生成 AI 社内文書検索システム構築支援サービスは、生成 AI を活用したソリューションです。AWS の Amazon Bedrock や Amazon Kendra といったサービスを利用して、顧客のニーズに合わせたシステム構築を支援します。
たとえば、大量の社内文書に埋もれた情報を探す場合、これまではピンポイントで検索キーワードを指定する必要がありました。しかし、表記のブレや使用する語彙の個人差などがあり、皆が同じように検索キーワードをピンポイントで指定するのが難しい状況にありました。そこで、生成 AI を活用したシステムで検索することで、近い意味合いのキーワードからでも、情報にたどり着きやすくなりました。我々は社内文書を効率的に検索できる環境を整え、チームを活性化させるお手伝いをします。
もちろん、具体的なシステム構築は、各企業の状況や課題に応じてカスタマイズいたします。企業ごとに異なる文書管理の方法やセキュリティ要件に対応するために、柔軟に対処いたします。
さらに、生成 AI は検索結果を基に新たなコンテンツを生成する能力も持っているため、レポートの作成や情報の整理にも役立ちます。
━━ これまでにも AI を活用した事例がありましたよね。
はい。生成AIではありませんが、最近の事例ですと、大青工業株式会社では 3Dカメラと IoT センサーを組み合わせて、冷蔵冷凍設備の省エネ化を図りました。具体的には、3D カメラとAIによる画像判定を使って庫内の状況を可視化し、 これに基づき適切な熱供給と風量制御を行っています。これにより、電力消費量を削減し、運用コストが低減したとお聞きしています。
このプロジェクトでは、庫内状況の可視化の部分に AI(正確には機械学習による画像分類)を用いています。
特許も取得して話題になったのは、株式会社 KAWACHO RICE 様の「Rice Tag」プロジェクトです。こちらは、米の銘柄を判別するスマートフォンアプリを開発しました。このプロジェクトでは、Amazon SageMaker を使用して、米粒の画像から米の銘柄を判定できるモデルを作成しました。KAWACHO RICE 様が取り扱う青森県と秋田県の主要銘柄については、検査員と同等以上の精度で米の銘柄を識別できるようになりました。
他にも、青森県三沢市や青森県平内町の移住促進プロジェクトでは AI チャットボットを導入しました。LINE を通じて自治体と移住希望者が非対面でコミュニケーションを取ることができるので、職員の負担を軽減しました。こちらは Amazon Bedrock や Pinecone といったベクトルデータベースを活用して、運用コストを抑えつつ、効果的な情報提供を実現しました。こちらは生成 AI の事例と言えますね。
━━ これまでの事例で活用した AI と今回の生成 AI の違いについて教えてください。
既存の事例で紹介した AI と呼ぶものは、実際はあるタスクに特化した機械学習のプログラムです。例えば、大青工業株式会社様の事例では庫内の物を認識する画像分類です。「Rice Tag」では、輪郭画像をもとにした画像分類で米の銘柄を識別しています。
このように、特定のタスクに焦点を当てており、それぞれの分野で優れたパフォーマンスを発揮しています。対して生成 AI は、大規模言語モデル(LLM)を活用したもので、自然言語処理による文書生成や検索が可能です。生成 AI は広い用途に対応していて、コンテンツ作成や情報引き出しの能力が大幅に向上しています。例えば、今回の社内文書検索システムでは、膨大な文書データの中から必要な情報を迅速かつ正確に検索できるようになります。生成 AI は、従来の特定タスクに特化した 機械学習の手法とは異なり、より広範囲で柔軟な対応が可能です。
━━ 野球に例えるとすると、従来の AI はピッチングマシーンみたいなことでしょうか?
特定のタスクを正確にこなすことに優れているという点ではそうですね。野球全体の試合運びには関与しません。
一方で生成 AI は、例えは難しいですが「上位の目的を与えれば、目的達成の手段を提案として生成することができる」のでプレーヤーや監督、コーチのような存在とも言えますね。ピッチング、バッティング、守備といった個々のプレーを理解し、試合全体の戦略を立てる、戦略に基づいた行動方針を導き出すことができます。つまり、より広範囲にわたって様々なタスクをこなす能力を持ち、状況に応じて柔軟に対応できるのです。
生成 AI は多岐にわたる業務に応用可能です。例えば、社内文書の検索システム、カスタマーサポートのチャットボットの他にも、コンテンツ生成、デザイン支援、データ分析など、多様な分野での活用が期待されます。これにより、業務効率の向上や新たな価値創出が可能となります。
━━ ちなみに、佐々木さんが生成 AI に期待していることはありますか?
生成 AI はツールのひとつとして捉えているので、「AI に期待する」というのは少し違うかもしれません。ただ、今後、AI の活用範囲はさらに広がっていく… 生成 AI が人間の想像を超える使い方をされることは予想しています。実際、AI が自律的に活動する未来も見えてきました。
例えば、現在はインターネットを介して重機の操作が可能ですが、AI がこれを担当することで、トンネルの開通や山の切り開きといった作業を、人手を介さずに上位の目的、目標を設定するだけで実現できるようになります。気が付いたら火星に都市ができているような展開もあるのではないかと思えてきます。AI が与える社会への影響は質と量ともに今後も爆発的に伸びていきそうです。
━━ では、ヘプタゴンが考える生成 AI の活用方法や未来について教えてください。
ヘプタゴンとしては、お客様の課題解決が最優先事項です。そのため、生成 AI を用いた手法が課題解決にもっとも役立つと判断した場合には活用しますが、別の適切なツールや方法が最適な場合には、そちらを選びます。私たちの使命は、お客様に最も効果的な解決策、最適解を提供することです。生成 AI はひとつの手段であり、本質的な価値を見定めて活用していきます。
ヘプタゴンは、表面的な目先の解決ではなく、中長期も見据えた本質的な解決策を提供することに注力していきます。今後も生成 AI をはじめ先端技術のキャッチアップをしつつ、お客様としっかりコミュニケーションをとり、共に最適な解決策を考え、伴走しながら支えていきたいと考えています。
個人的にも 生成 AI はほぼ毎日活用していますが、AI を意識したのは30年以上前、『ドラゴンクエストIV』の時でした(今でも時々使われる「ガンガンいこうぜ」は AI に指示するためのプロンプトですからね)。
その時から永らく AI に対するイメージは変わっていなかったんですが、この数年で一気に変わりました。そして、これからも飛躍的に活躍の場が増えていくでしょうし、これからの生成 AI の進化とその活用がとても楽しみです。
個人的には公私ともに「ガンガン取り入れていこうぜ」と思っていますし、ビジネスシーンで「AI があったら…」なんて思うことがあったら、ぜひご連絡をいただけたら幸いです。
それでは、また。