超入門『デジタルツイン』第1回 従来型のシミュレーションとの違い 川合雅巳
私は、政府(外郭団体を含む)、製造業、ベンダーが連携して推進しいている製造業のサービス化に強い関心を持っているのですが、製造業のサービス化を実現していく上で極めて重要な概念であるデジタルツインについて書いていこうと思います。
なぜ製造業務のサービス化にデジタルツインが重要な概念なのかという視点で解釈していきます。
デジタルツインとは、その名の通り、デジタルな双子という意味で、現実世界の情報をリアルタイムでサイバー空間に送り、サイバー空間内に現実空間の現象をリアルタイム(かそれに近い時間で)再現します。
サイバー空間上に現実世界の情報を再現することから“双子(ツイン)”と表現されています
「シミュレーションのことか!」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
その通り、デジタルツインはCAE(Computer Aided Engineering)などのシミュレーションツールを活用して実現するのですが、従来のシミュレーションより、ずっと進化した概念です。
① 使用中の現象を考慮したリアルなシミュレーション
デジタルツインでは、市場で使用されている製品の情報をサイバー空間に送り、シミュレーションを実施するので、従来型のCAEシミュレーションより現実に近い検証になります。
いかなる製品も、工場で製造され市場に出荷され、使用されだせば、経時変化を起こします。使用期間が長くなれば、経時変化も大きくなるため、従来のCAEシミュレーションでは、現実を正確に反映できていないのです。
これに対して、デジタルツインのシミュレーションでは、製品が使用されている段階のデータを設置されたセンサーで吸い上げ、クラウドにアップロードし、CAEシミュレーションに反映します。そのため、経時変化や使用環境を考慮した、現実に近いシミュレーションが可能になります。
② 製品ライフサイクルのあらゆるプロセスが対象
また、デジタルツインのシミュレーションは、製品ライフサイクルのすべてを対象としています。従来のCAEを用いたシミュレーションが設計フェーズ、技術開発フェーズを対象としています。従来のCAMを用いたシミュレーションが製造フェーズを対象としています。
これに対して、製品ライフサイクルのあらゆる「プロセス」をシミュレーションの対象としています。例えば、市場での製品の現象に関するデータを吸い上げて活用することで、不具合を未然に防ぐためのシミュレーション検証が可能です。こういったシミュレーションによって、「ダウンタイムゼロ」のサービスを顧客に提供することを期待できます。
(第1回了)