GA4を活用しユーザー好感度の分析を行う方法(イベントレポート)
ITを活用した企業ブランディングの優れた手法や事例を学ぶ《デジタルブランディング勉強会》では、企業のマーケティング担当者を中心とした人々の交流を促し、デジタルブランディングへの理解を深めるための活動に取り組んでいます。
今回はそうした活動の一環として開催されたイベント「デジタルブランディング勉強会 SPRING 2023」の中で行われた、伊藤辰也さん(株式会社サードスコープ 代表取締役)による講演「GA4を活用しユーザー好感度の分析を行う方法」の様子をご紹介します。
Google Analytics4 (GA4)とは?
Webサイトの効果測定を行うためのツールとして、従来はGoogleによるUniversal Analyticsと呼ばれるツールが広く使われてきました。しかし2023年7月に登場したGoogle Analytics4 (GA4)はUniversal Analyticsを完全に置き換えることになります。
GA4が登場した背景
GA4が登場する背景の一つにプライバシー問題への対応があります。2018年5月にEUで施行された一般データ保護規則(GDPR)では、メールアドレス・SNSへの書き込み・IPアドレスなど全てが個人情報であると明文化され、Cookieなどで「仮名化」された情報も保護の対象となりました。同様の方針はGDPR以外にも広がりを見せており、こうした規程に抵触しかねないデジタルツールは代替手段を用意する必要に迫られています。
また国内外のマーケターの間でマーケティングオートメーション(MA)のためのツールが普及しつつあることも背景の一つです。Webサイトの分析を行う際、従来はページ単位での効果測定が中心でしたが、MAツールではページ単位ではなくユーザー単位での効果測定を行うことができます。「ユーザーを正しく理解・把握するために、ページ単位ではなくユーザー単位でその行動を正しく分析する」「正しい分析がWebサイトのより正しい改善に繋がる」といった考え方は、MAツールの普及とともに支持を広げています。
こうした背景から、GA4はGDPRなどのデータ規制に準拠するとともに、(個人を特定する計測手法を利用規約で禁止しつつ)ユーザーの行動履歴の把握を重視するなど、MAに近い思想を取り込んだツールとしてリリースされることになりました。
「結果」ではなく「過程」を中心とした分析へ
GA4はユーザーの行動を総合的に正しく把握することを目指して設計されています。従来はページビュー(PV)やアクセス数の分析を通じてWebサイトの効果測定が行われる傾向が強かったのですが、GA4ではそうした指標の重要度が下がり、クリックやスクロールといったユーザーの行動を把握することが重視されています。
「エンゲージメント」を中心としたパフォーマンスの測定
GA4では「エンゲージメント」という新しい概念が導入されます。エンゲージメントの指標にはいくつかの要素があり、Webサイト毎の最終目的に到達するコンバージョン(CV)やWebサイト内のページを閲覧する回遊に加え、10秒滞在したかどうかといった指標も設けられることになっています。
これらによって構成されるエンゲージメント率を改善することで、Webサイトをより正しい姿に改善できるわけです。Google社から見ても「ユーザーから見て価値のあるサイトをより高い精度で提供する」ことは大変重要で、エンゲージメント率の高いサイトが増加していくことは様々な面で価値が高いと言えます。
なお、Webサイトの分析では以前から「直帰」という用語が使われていましたが、GA4とそれ以前ではその意味合いが変化している点に注意してください。従来は分析対象のWebサイトを回遊しなかった場合(「再訪問までに30分を超過」「ブラウザを閉じる」など)を指す用語でしたが、GA4ではエンゲージメントしていない場合を「直帰」と呼ぶことになっています。
ブランディングにおける計測ポイントとは?
マーケティングとブランディングの違い
GA4についてもう少し掘り下げるために、マーケティングとブランディングについて考えてみましょう。マーケティングとブランディングはそれぞれに類似点を持ちながらも、異なる方向性を目指しています。
マーケティングでは「認知・集客」から始まり、次に「興味・関心」や「比較・検討」を経て「成約」を目指すことができると考えられています。効果測定にあたっては「成約」に至るまでの各段階でどの程度の離脱があったのかを測り、その結果に応じてコンバージョン率やエンゲージメント率を増やすための施策を考えていくことになります。
しかし、ブランディングはやや様子が異なります。ブランディングの起点である「認知・認識」こそマーケティングの第一段階に似ていますが、以降は「理解・印象」や「好評価」を経て、最終的にユーザーとの関係性を高めて「ファン」の獲得に至ることを目指します。マーケティングとは異なり、ブランディングでは最終的にファンをつくることが大切なのです。
連続したユーザー行動の促進
ブランディングにおいてファンの獲得を実現するためには、連続的な好感を持ってもらうことが大切です。そのためには連続したユーザー行動を促せるかどうかが重要になります。GA4においてエンゲージメントの概念が導入された理由の一つに、この「連続したユーザー行動の計測・分析」への対応がありますが、GA4を活用することで連続したユーザー行動を促す施策も行いやすくなります。
ただし「10秒の滞在」によって何らかの価値が生まれたか否かを判断するのは簡単ではありません。今後は「10秒の滞在」の内訳をさらに詳細に分析し、最適化していくことも大切になっていくでしょう。
Webサイトの種類に応じた設計パターン例
メディアの種類が異なれば、最適な分析のための仮説もそれぞれ必要です。ここではWebサイトをメディアのタイプによって分類し、それぞれに最適だと思われる指標の一例をご紹介します。
LPタイプ: スクロール率を興味関心の指標とする
LPなどに代表される極端に縦長のWebサイトでは、ユーザーがページをスクロールしながら縦に並んだコンテンツを閲覧していきます。こうしたWebサイトはユーザーと「一期一会」になることが多く、繰り返し訪れるリピーターはあまり想定されないなど、概ね下記のような特徴を持っています。
LPタイプのサイトでは、ユーザーの持つ興味関心の度合いを「スクロール」を指標として測定すると良いでしょう。ブランディングでは「連続的な好感」をいかに生み出すかが大切ですが、LPタイプのサイトでは適切な順番でコンテンツのセクションを配置し、各セクションに到達したかどうかを計測することで「連続的な好感」を測ることが出来ます。
記事タイプ: どれだけの文章が読まれているかを指標とする
記事タイプのコンテンツを沢山用意しているWebサイトの場合、文章量が非常に多いため、それらをいかに読みやすくするかということが大切です。こうしたタイプでは定期的に新しい記事やニュースが追加される頻度が高いサイトや、多くの記事の中からキーワードで検索できる機能が備わっているサイトもあり、概ね下記のような特徴を持っています。
こうしたサイトでは広告を掲載することで収益を上げることが一般的で、 LPのように主張の強いCTAポイントはあまり見られません。また、アクセス数を重視するため、記事がどれだけ読まれているかということを指標にすると良いでしょう。例えば「記事本文の読まれるスピード」や「どこまで読んで次のページへ移動したか」といったユーザー行動を計測することが有効だと考えられます。
動画タイプ: どれだけの文章が読まれているかを指標とする
動画コンテンツ中心のサイトの場合、外観のデザインは比較的シンプルであり、余計な要素が省かれていることが多いです。収益ポイントとしてサイト内に広告枠を設置するのではなく、動画再生中や動画一覧ページへの広告表示が一般的ですし、動画が多くのジャンルやカテゴリに分けられており、ユーザーが興味のある動画を簡単に探せるなど、概ね下記のような特徴を持っています。
こうしたサイトでは、ユーザーが滞在している時間や動画を再生している時間を把握し、時間の総計がどこで伸び悩んでいるかを計測すると良いでしょう。
計測可能なイベントの事例
今回はLPタイプ、記事タイプ、動画タイプのサイトに焦点を当てましたが、Webサイトの種類によって計測すべき指標は異なります。GA4を活用したWebサイトの分析にあたり、計測可能なユーザーによる操作(イベント)には下記のようなものがありますので、Webサイトの種類に応じて使い分けていくことが大切です。
なお、GA4には特定のWebサイト上で行われたクリック/ページ閲覧/スクロールなどの計測を行う機能が標準で備わっていますが、標準機能に加えてGoogle Tag Manager(GTM)と連動させるための設計・設定を行うことで、詳細なイベントやコンバージョンの計測を行うことも可能です。またJavaScriptを活用することで、ブラウザ上での様々なイベントを制御することもできます。
こうした手法を組み合わせながら、対象のWebサイトにユーザーが好感を抱くポイントを計測する場所を埋め込み、ユーザーが確実に「連続的な好印象」を持つようにWebサイトの改善を施していくことが、GA4を活用したデジタルブランディングにおいて、大変重要になっていきます。
以上、「デジタルブランディング勉強会 SPRING 2023」の中で行われた、伊藤辰也さん(株式会社サードスコープ 代表取締役)による講演の様子をご紹介しました。
《デジタルブランディング勉強会》はデジタルブランディングへの理解を深めるとともに、企業のマーケティング担当者を中心とした人々の交流を促すことを目的としており、どなたでもご参加いただけます。今後のイベントについてはPeatixで都度告知を行いますので、イベント情報を見逃すことの無いよう、是非《デジタルブランディング勉強会》のPeatixグループをフォローしてください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?