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インドで半導体のサプライチェーンを支援する、タイ初の半導体前工程、2027年に稼働

アジア経済ニュースNNA ASIAは2024年09月24日に、インドで半導体のサプライチェーン(供給網)が立ち上がりつつある時に合わせるように、タイ初となる半導体前工程工場が早ければ2027年第1四半期(1~3月)中に稼働する見込みであることが、2024年09月23日までに分かったと、BOI(The Board of Investment of Thailand/タイ投資委員会)が報告した。

タイ国営石油PTTと電子機器のEMS(Electronics Manufacturing Services/受託製造サービス)のハナ・マイクロエレクトロニクス(Hana Microelectronics PCL/HANA)の合弁事業で、初期の投資額は115億バーツ(約502億円)。技術は韓国から移転する。車載向けなどのパワー半導体を生産するものと見られると伝えている。

Hana Microelectronics Public Co., Ltd.[タイ] - 自動車産業
所在国, タイ. 所在地, 65/98 Soi Vibhavadi Rangsit 64 Yaek 2, Talat Bang Khen, Lak Si, Bangkok 10210, Thailand. TEL, +66-2-551-1297. 設立, 1978年.

https://www.hanagroup.com/

BOIのナリット・タートサティーラサック(Narit Therdsteerasukdi)長官率いる一行がこのほど、PTTとハナ・マイクロエレクトロニクスの合弁会社、「FT1」が進めている前工程プロジェクトの進捗(しんちょく)状況を確認した。ハナ・マイクロエレクトロニクスが2024年02月にBOIに同プロジェクトの事業認可を申請。2024年08月に認可を取得した。

BOIによると、FT1は現在、工場の設計を行っており、早ければ年内にも北部ランプン県のサハ工業団地内で建設工事を開始する。サハ工業団地はチェンマイから車で約45分と近く、周辺には電子部品工場が数多く進出している。建屋の建設と設備の搬入には約2年を要する見込みで、27年第1四半期の稼働を予定している。

BOIの広報担当者はNNAの取材に対し、FT1について「半導体の基となるウエハーは外部から調達する」と述べた。ウエハーに絶縁膜の役割を担う酸化膜(SiO2)を形成する酸化工程やウエハーに回路を描く露光工程などの前工程技術は、韓国から移転する。

直接投資額は中国が158件のプロジェクト数でその総額は774億バーツで首位となり、日本は293件のプロジェクト数で508億バーツ、米国は33件のプロジェクト数で503億バー ツ、台湾は68件のプロジェクト数で452億バーツ、そしてシンガポールが178件のプロジェ クト数で443億バーツと続いた。

チョンブリ(Chonburi)県、チャチェンサオ(Chachoengsao)県、ラヨーン(Rayong)県を含むタイの主要な工業地域であるEEC(Eastern Economic Corridor/東部経済回廊)は2021年比で 84%増加の3,588億バーツ相当の投資を誘致し、地域ランキングのトップに立った。

タイやマレーシア、ベトナム、フィリピンといった東南アジアの国々が半導体のグローバルサプライチェーンの中で担っているのは主に、前工程よりもコストメリットの恩恵を受けやすい後工程だ。

ところが、ハイテクを巡る米中の対立が深まり、米国が半導体のグローバルサプライチェーンの多様化を進める中、東南アジアの各国は半導体の上流工程に乗り出すようになった。

タイ政府の場合、EVのエコシステム(生態系)を構築していく上で、半導体のサプライチェーンの上流工程の誘致は必須との認識だ。EVは、内燃機関車よりも多くの半導体を使用すると言われている。タイが低所得段階から高所得レベルに達する前に成長が停滞する「中進国の罠(わな)」から脱却する上でも、より付加価値の高い産業への投資が必要不可欠となっている。

BOIは、半導体関連の投資先に必要な条件として、
(1)中立的な立場で地政学上のリスクを緩和できる
(2)製品のコスト競争力を提供できる
(3)将来的に生産能力を拡大できる余地があるの3つを挙げ、「タイは全ての条件を満たしている」とした。
ナリット長官は声明で「韓国からの技術移転とタイの大学と共同で進める人材育成を通じて、タイの半導体産業の発展につなげたい」とコメントしている。

地政学的なリスクが高まる中、タイの半導体企業には海外に進出する機会も訪れている。タイのOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly and Test/後工程請負会社)のスターズ・マイクロエレクトロニクス(Stars Microelectronics)は、日本の半導体大手ルネサス・エレクトロニクス(東京都江東区)とともに、インドの複合企業ムルガッパ・グループ(Murugappa Group)傘下の電機企業CGパワー&インダストリアル・ソリューションズ(CG Power & Industrial Solutions)が主導する最先端のOSAT工場をインドに設立するプロジェクトに参画する。3社合わせた合弁会社への出資額はUS$2億2,200万(約331億円)で、スターズの出資比率は0.90%と低いものの、従来型パッケージ技術やトレーニング・人材育成プログラムなどを提供する。

スターズのプロンポン・チャイクル(Prompong Chaikul)会長は声明で、「専門知識と経験を生かし、インドでのプロジェクトの成功を確実なものにするため、強力なサポートを提供する」と述べている。

この東南アジア、台湾、日本、インド、中国の連携には、ドイツが追いつけそうにない。

https://www.nna.jp/news/2708266
https://www.boi.go.th/index.php?page=press_releases_detail&topic_id=133546&language=ja
https://www.boi.go.th/upload/content/PR5-2566_EN.pdf
https://www.boi.go.th/upload/content/PR5-2566_JP.pdf
https://www.renesas.com/ja/about/newsroom/cg-power-and-industrial-solutions-limited-renesas-and-stars-microelectronics-jointly-build
https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP668972_R00C24A3000000/
https://investor.starsmicro.com/en/shareholder-info/major-shareholders/

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