アジアには数十種類の未確認コウモリが生息している可能性が高い。
Nature Briefingは2022年03月29日に、アジアには数十種類の未確認コウモリが生息している可能性が高い。
それらのコウモリが新種ウイルスを宿主とする可能性もある。
この地域のカブトコウモリの約40%がまだ正式に記載されていないことを示唆する研究。
ゲノム解析の結果、東南アジアにはおそらく数十種の未知のカブトコウモリが生息していることが示唆された1。
カブトコウモリ(Horseshoe bats/Rhinolophidae)は、重症急性呼吸器症候群やCOVID-19を引き起こしたウイルスの近縁種を含め、動物から人へ移る多くの人獣共通感染症ウイルスの保菌者とみなされている。
中国武漢ウイルス研究所のウイルス学者で、「バットウーマン(Batwoman)」とも呼ばれたことがある石正麗(Shi Zhengli, a virologist at the Wuhan Institute of Virology in China)は、コウモリの種類を正しく特定することは、人獣共通感染症のリスクが高い地理的ホットスポットを特定するのに役立つかもしれないと言う。「この研究は重要です」と彼女は言う。
https://time-az.com/main/detail/76576
この研究は、2022年03月29日にFrontiers in Ecology and Evolution誌に掲載された。
未知のコウモリの種をよりよく識別できれば、ウイルスの近縁種を保有している可能性のあるコウモリを探す場所を絞り込むことによって、SARS-CoV-2の起源の探索を支援することもできる、と研究共著者の香港大学の保全生物学者であるアリス・ヒューズ(co-author Alice Hughes, a conservation biologist at the University of Hong Kong)は述べている。SARS-CoV-2の近縁種は、中国南西部の雲南省(Yunnan province, in southwestern China)のRhinolophus affinisコウモリ2、およびラオスの3種のカブトコウモリで発見されている3。
アリス・ヒューズは、東南アジアに生息するコウモリの多様性をより深く理解し、標準的な同定方法を見出したいと考えていた。そこで、彼女と同僚たちは、2015年から2020年にかけて、中国南部と東南アジアでコウモリを捕獲した。
コウモリの翼と鼻葉(ヒューズが言うところの「鼻の周りのファンキーな組織の集合」)の計測と写真を撮り、エコロケーション・コールを記録した。また、コウモリの翼からごくわずかな組織を採取し、遺伝子データを抽出した。
研究チームは、捕獲した205匹のコウモリのミトコンドリアDNA配列と、オンラインデータベースから得た655の配列から、コウモリ科の合計11種の遺伝的多様性を明らかにした。
一般に、2つのコウモリのゲノムの差が大きいほど、その個体は遺伝的に異なるグループ、つまり別の種である可能性が高いとされている。
その結果、11種のそれぞれが実際には複数の種であり、サンプル全体では数十種の隠れ種を含んでいる可能性があることがわかった。隠れ種とは、一見同じ種に属しているように見えるが、実は遺伝学的に異なる動物(Hidden)のことで、「隠微種(cryptic species)」とも呼ばれる。例えば、Rhinolophus sinicusの遺伝的多様性(genetic diversity)は、このグループが6つの別種(six separate species)である可能性を示唆している。全体として、アジアに生息する種の約40%が正式に記載されていないと推定される。
ニューヨークのアメリカ自然史博物館の学芸員であるナンシー・シモンズ(Nancy Simmons, a curator at the American Museum of Natural History in New York City)は、「悲痛な数字ではありますが、それほど驚くことではありません」と、シモンズ学芸員は言う。「サイホウアカコウモリ(Rhinolophid bats)は複雑な種族であり、これまで限られた数の動物しか見つかっていないのです。
しかし、ミトコンドリアDNA(mitochondrial DNA)に頼ることは、ミトコンドリアDNAは母親からしか遺伝しないので、重要な遺伝情報が欠落している可能性があるから、隠れた種の数が過大評価であることを意味する可能性がある。とナンシー・シモンズは言う。それでも、この研究がきっかけとなって、この地域の新しいコウモリの種を命名する研究が一気に進むかもしれないという。
この研究では、捕獲した205匹のコウモリのミトコンドリアDNA配列と、オンラインデータベースから入手した655個の配列から、合計11種のコウモリのミトコンドリアDNA配列を抽出した。一般に、2つのコウモリのゲノムの差が大きいほど、その個体は遺伝的に異なるグループ、つまり別の種である可能性が高いとされている。
今回の発見は、東南アジアに多くの隠蔽種が存在することを示唆する他の遺伝子研究を裏付けるものである。オタワにあるカナダ環境気候変動局カナダ野生生物局の生物学者で、この地域のコウモリを研究しているチャールズ・フランシス氏はそう語る。しかし、この推定は少数のサンプルに基づいている、と彼は言う。
アリス・ヒューズのチームは、中国南部とベトナムで見つかった190匹のコウモリについて、形態学的データと音響学的データを使ってより詳細な分析を行い、これらの地域では多くの種が確認されていないという彼らの発見を裏付けるものであることを突き止めた。この研究は、「種の境界を決める際には、複数の証拠を用いる」ことを強く主張するものである、とシモンズ氏は言う。
アリス・ヒューズのチームは、コウモリの鼻孔のすぐ上にあるセラ(sella)と呼ばれる組織のひらひらが、遺伝子データを必要とせずに種の同定に利用できることも発見したという。ブダペストにあるハンガリー自然史博物館の分類学者であるガーボル・チョルバ(Gábor Csorba, a taxonomist at the Hungarian Natural History Museum in Budapest)は、このことは、隠れた種を、邪魔な形態学的研究や高価なDNA分析をすることなく特定できることを意味している、と言う。
オタワにあるカナダ環境気候変動局カナダ野生生物局の生物学者で、この地域のコウモリを研究しているチャールズ・フランシス(Charles Francis, a biologist at the Canadian Wildlife Service, Environment and Climate Change Canada, in Ottawa, who studies bats in the region)は今回の発見は、東南アジアに多くの隠蔽種が存在することを示唆する他の遺伝子研究を裏付けるものであると語る。しかし、この推定は少数のサンプルに基づいている、と彼は言う。
アリス・ヒューズのチームは、中国南部とベトナムで見つかった190匹のコウモリについて、形態学的データと音響学的データを使ってより詳細な分析を行い、これらの地域では多くの種が確認されていないという彼らの発見を裏付けるものであることを突き止めた。この研究は、「種の境界を決める際には、複数の証拠を用いることを強く主張するものである。」と、ナンシー・シモンズは言う。
doi: https://doi.org/10.1038/d41586-022-00776-2
References
Chornelia, A., Jianmei, L. & Hughes, A. C. Front. Ecol. Evol. 10, 854509 (2022).
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Zhou, P. et al. Nature 579, 270–273 (2020).
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Temmam, S. et al. Nature https://doi.org/10.1038/s41586-022-04532-4 (2022).
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2021-08-06---武漢の「バットウーマン」石正麗研究員、COVIDのさらなる変異を警告。
2021-07-16---米中関係が悪化したのは、実験室での漏洩事故が原因だった。
2021-07-15---危険なコウモリ・ウイルス研究をなぜ武漢で行ったか?
2020-12-10---新型コロナウイルスの近縁種が発見された中国のウイルスが潜む山。
2020-05-25---武漢のバットウーマン、中国国営メディアに登場。
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