人体のほぼ全てのタンパク質の構造をAIで予測。
AI(Artificial Intelligence/人工知能)は、科学者になって、研究の未来まで予測し始めた。
MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)は2021年07月22日に、2020年12月、ディープマインド(DeepMind)は、タンパク質の構造を予測する人工知能(AI)ツールである「アルファフォールド(AlphaFold) 」を使用して、生物学における50年越しの難問を解決し、生物学界を驚かせた。
イギリスの科学誌ネイチャー(Nature)は、ロンドンに拠点を置くディープマインドは2021年07月15日に、「アルファフォールド」の全容を明らかにし、ソースコードを公開したと報告した。
つまり科学が、AIで猛スピードで進化し始めた。
危険なのは、科学研究室が消えるのではないかと言うことである。
さらに、AIの予測の検証である。
検証されないまま利用することは危険である。
そして、その混在は、さらに危険である。
今回、ディープマインドは、「アルファフォールド」を使用して、人体に存在するほぼすべてのタンパク質の形状を予測し、さらに、酵母、ミバエ、マウスなど、最も広く研究されている20種類の生物に存在する数十万ものタンパク質の形状も予測したと発表した。
この飛躍的進歩により、世界中の生物学者が病気をより深く理解し、新薬を開発できるようになるかもしれない。
これまでのところ、このデータの宝庫には、新たに予測された35万個のタンパク質構造が格納されている。ディープマインドは、今後数カ月のうちに、さらに1億個以上のタンパク質の構造を予測し、公開する予定だという。これは科学的に知られているほぼすべてのタンパク質になる。
「タンパク質の折り畳みは、私が20年以上にわたって注目してきた問題です」と、ディープマインドの共同創業者でCEO(最高経営責任者)デミス・ハサビス(Demis Hassabis)は、
「私たちにとって大きなプロジェクトでした。私たちがこれまでにした中で最も大きなプロジェクトです。なぜなら、AI以外の世界で最も大きな影響を与えるはずだからです。そして、ある意味、最も刺激的なことです。」と、述べている。
ワシントン大学タンパク質設計研究所のデイビット・ベイカー教授(Professor David Baker, Institute for Protein Design, University of Washington)は、このデータベースにより、生物学者の仕事は楽になるはずである。生物学の研究者が「アルファフォールド」を利用できるようになるかもしれないが、誰もが自分でソフトウェアを実行したいと考えるわけではない。「自分のコンピュータで実行するよりも、データベースから構造を取得するするほうがはるかに簡単です」と言う。
インペリアル・カレッジ・ロンドンで酵母ゲノムを研究している合成生物学者のトム・エリス教授(Professor Tom Ellis, a synthetic biologist working on yeast genomes at Imperial College London)は、「驚くほどすばらしいことです」と述べ、このデータベースを試すことに興奮している。しかしエリス教授はまた、予測された形状のほとんどが、まだ実験室で検証されていないことについて警告している。
コロンビア大学のシステム生物学者で、タンパク質の構造を予測する独自のソフトウェアを開発したモハメッド・アルクライシュ助教授(Mohammed Al-Quraish, a systems biologist at Columbia University and assistant professor who has developed unique software to predict the structure of proteins)は、「『アルファフォールド』がこのレベルの品質で使えるという事実はすばらしいことです」と述べる。
さらに、ある生物に含まれるほとんどのタンパク質の構造がわかれば、それらのタンパク質が単独ではなく、システムとしてどのように機能するかを研究することが可能になると指摘する。「それがこそが最も興奮すべきことだと思います。」と述べている。
ディープマインドは、同社のツールと予測結果のデータベースを無料で公開するが、将来的にそれらを利用して利益をあげる計画があるかどうかについては明らかにしないだろう。しかし、その可能性を否定しているわけではない。
ディープマインドは、このデータベースを設置・運営するために、タンパク質情報の大規模なデータベースをすでに提供している国際的な研究機関EMBL(European Molecular Biology Laboratory/欧州分子生物学研究所)と提携している。
モハメッド・アルクライシュ助教授は現在、研究者たちが新たなデータを使って何をするのかを待ちきれない思いだ。「かなり見応えがあります。こんなに早くここにたどり着くとは、誰も思っていなかったでしょう。度肝を抜かれました。」と述べている。
宗教が異なると、研究の規制も異なる。
以前、倫理概念が異なるエジプトの研究者が、ある医学部門で飛び抜けたことがある。
しかし、先を急ぐ研究者は、暴走することで事故になる危険性が放置されている。
つまり、実験室で検証されるまでは、病気の治療や新薬の開発に利用してはいけないと言うルールが必要だろう。