洗濯機で真空調理できるミールキットを開発。

画像1

Forbes JAPANは2021年09月04日に、イスラエルのクリエイターが、「洗濯機」を鍋や電子レンジ代わりにして加熱、調理できるミールキットを開発したと報告した。

プロダクト名は「Sous La Vie(フランス語で「それが人生さ」の意)」。

私には、どうも洗濯と料理を一緒にすると、汚れが料理に染み込むようで、受け入れられないが、徴兵制があるイスラエルという戦場の国では、受け入れられるのかもしれない。

画像3


それに、どこの戦場の兵舎にも調理機がなくても、洗濯機はある。

カップヌードルがあっても、お湯も沸かせないのが戦場である。

戦場の野営では、暖かいものが食べたくなるようだ。確か缶詰も焚き火に入れて温かくするはずだ。

画像4

肉、魚、野菜の3種類がある。
パッケージにはそれぞれ、「野菜にはスピード洗濯」「肉には合成繊維用のコース」といった表示がある。

https://time-az.com/main/detail/75126

この作品は、イスラエルの由緒ある国立美術学校、「ベツァルエル美術デザイン学院」の卒業プロジェクトのためはエフタ・ガジット(Iftach Gazit from the Bezalel Academy of Arts and Design in Israel)が開発した。

画像5

食べる前にTシャツやジーンズと一緒に洗濯機に放り込むだけで、袋を開ければ、湯気のたつ主菜や副菜が楽しめる。
そもそもは「ホームレスの人たちがコインランドリーを『公衆台所』として使い、温かい料理を食べられるように」、が発想の発端だったという。

画像6

このプロダクトが発表され、世界で話題になった2017年から4年。

画像6

その間に襲ったコロナ禍の外食制限で、いまや中食全盛の時代だ。加熱するだけで食べられるミールキットも売れている今、改めて、この発明品の誕生秘話、製品化について、開発者のガジットにメールインタビューした。

画像7

──「Sous La Vie」はどんなきっかけで発案し、実装したのか。

「Sous La Vie」開発者、イスラエルのクリエイター、エフタ・ガジット

ベツァルエル美術デザイン学院(Bezalel Academy of Arts and Design)4年生のとき、リオラ・ロジン(Liora Rosin)教官のもと、フードデザインを学んだ。料理についてまったく無知だったのにこのコースの履修を決めたのはふつうじゃない決断だったけれど、結果的にすごくよかった。

最初リオラに、エルサレムから30分ほど離れた森の中にある「ハンター・ギャザラー・ワークショップ(Hunter-Gatherer Workshop、直訳すれば「狩猟採集民の作業場」)」に連れて行かれた。そこでガイドがわれわれに、木の枝や地面からさまざまなものを収穫して見せてくれたんだ。その後、半日、森の中で過ごして、自分たちで収穫したものを使って料理をした。「真空調理」とは正反対の環境で、実に目からうろこの体験だった。

肉、魚、野菜、3種の「Sous La Vie」プロトタイプ

画像8

そしてこのコースを修了するにあたって、われわれ学生たちは各々でプロジェクトを立ち上げることになった。

僕は実用とはほど遠いアプローチで、完全に「アート」を追いかけている学生だった。だからこそ、その時は普段と正反対のことがしたくて、ホームレスの人たちが料理する方法を創出することに全力を傾けることにした。
そもそも、「ホームレスの人たちが温かい料理を食べられる方法はないか」と思っていたんだ。

そして建築学科の学生だったガールフレンド(現在の妻)に話したら、彼女が、「電気代を払えないホームレスの人たちでも料理ができるように、料理に必要な電力は都市の電力網から入手できるのでは」と言い出した。そして2人で「コインランドリー」に行き着いたんだ。

ネット検索をして、ホームレスの人たちがコインランドリーをサンクチュアリとしていることも知った。ここなら24時間365日オープンしているし、1人になれることも多い。

──しかし、料理はまったくの専門外だったのでは?

先に話した料理ワークショップ上級コースで、熱湯中で長時間真空調理するのに適した食材や組み合わせについてアドバイスをもらえた。自宅の洗濯機でいろいろ試したりもしたしね。

──「Sous La Vie」の開発でもっとも苦労した点は?

袋内部の環境を維持するため、完全に密封する技術に苦労した。いくつもいくつも素材を変え、試作を重ねた。

──「Sous La Vie」を実際に使った経験は?

フードテックを活用したエコシステムの実現に情熱を燃やす「スウェーデン・フードテック」創始者、ヨハン・ジョーゲンセン(Johan Jorgensen)に招かれて、世界最大のフードフェスのひとつ、35万人が集まるストックホルムの「SMAKA(グッドフードフェスティバル)」に参加した。会場に洗濯機を持ち込んで1日じゅうマシンを回しながら料理をしたのは、クールな体験だったよ。

──商品名の「Sous La Vie」に込めた思いは?

商品名の「Sous La Vie」は真空調理を意味する「Sous vid」から取っている。フランス語で「それが人生だ」の意味だ。真空調理はフランスで生まれた技術だしね。ファストフード、ホームレス、資本主義の現代でこのプロダクトを発表するにあたって、一種皮肉な思いも込めたつもりだ。

──「Sous La Vie」の商品化は考えなかったか? スポンサーを探したりはした?

思いがけず世界から注目されたが、商品化は考えなかった。

「Sous La Vie」はホームレスの人たちの生活環境に合った調理キットだと思うし、コロナでますます家で食べることが多くなった今、夏の暑い中、コンロを使うのが不快なときに、洗濯ついでに料理できたら便利じゃないか、と思う気持ちには変わりはない。

でも「Sous La Vie」は、「いつもと正反対に実用的なことを」と思ったとはいえ、結局はあくまでも「アート」として完成した。僕自身の仕事は、コンセプトを開発したことと思っている。ここから誰かがヒントを得て、自分の得意分野でこのコンセプトを伸ばして行ってくれるかもしれないしね。

そうだ、この考えは、そのままアートスクールの課題にできる。

ドイツで最初に、紙の間に入ったパンを見た時も思ったが、これも結局、単価が高くなることだろう。
ホームレス向けではない。
しかし、フードフェスのひとつにはなるかもしれない。

いいなと思ったら応援しよう!