中国の欧州ブランデー輸入調査で、かつて切望されていた酒への熱意が冷める可能性。
香港の英字新聞「SCMP(South China Morning Post/サウス・チャイナ・モーニング・ポスト/南华早报/南華早報)」の香港のアマンダ・リー(Amanda Lee)と広東省のヘ・フエフェン(He Huifeng)そして香港のラルフ・ジェニングス(Ralph Jennings)は2024年01月15日に、過去数十年にわたり、フランスのコニャックは中国のビジネスエリートにとって富、権力、洗練の象徴であった。
しかし、EU(European Union/欧州連合)からのブランデー輸入に対する中国の反ダンピング調査や消費者の嗜好の変化を受けて、中国の成長する中流階級にとって頼りになる高級品としてのこの酒の見通しは一変した。
2024年01月05日に、中国商務省は中国酒類協会からの要請を受けて反ダンピング調査を開始し、同協会は輸入品の価格が推定15.88%引き下げられたと発表した。
この動きは主に、中国のブランデー輸入の大部分を占めるフランスのコニャックに影響を及ぼし、すでに緊張している中国とブリュッセル(Brussels)の貿易関係に影を落とすことになった。
業界関係者は、この調査が他のヨーロッパの赤ワインブランドにも拡大する可能性があると懸念している。
「中国が調査を発表すると、それはフランス産コニャックの禁止、つまり事実上の禁止の始まりとなる。これは、コニャックがもはや好まれていないということを中国社会に示している」と、アジアで販売されるアルコールのブランドおよび販売管理会社である上海に拠点を置くニンビリティ(Nimbility)の創設者兼最高経営責任者イアン・フォード(Ian Ford, the Shanghai-based founder and chief executive)は語った。
「したがって、政府関係者をもてなす大規模な宴会に出席している場合、コニャックを飲んだり、贈答したりすることは現在タブーです。」
広東省に本拠を置く蒸留酒専門ディーラー、フランク・リン(Frank Lin, a Guangdong-based dealer specialising in spirits)は、中国にはヘネシー(Hennessy)、マーテル(Martell)、レミーマルタン(Remy Martin)などのコニャックに代わるブランデー生産者はほとんどいないと語った。
「中国のアルコール消費におけるヨーロッパのブランデーの市場シェアは比較的小さいが、最近の反ダンピング調査は市場に広範な影響を与えることが予想される。」とリンは述べた。
「業界関係者らは、この調査が他のヨーロッパの赤ワインブランドにも拡大し、アルコール飲料分野における中国とヨーロッパの全面的な対立を引き起こす可能性があると懸念している。」
商務省報道官シュー・ジェティン(Ministry of Commerce spokeswoman Shu Jueting)は2024年01月11日木曜日の記者会見で、反ダンピング調査は「WTO(World Trade Organization/世界貿易機関)の規則および関連する中国の法律および規制に従っている」と述べた。
「EUから輸入される関連ブランデー製品の量が急増し、価格が下落傾向にあるため、国内産業の経営に困難を生じさせていると言われている。」とシュー・ジェティンは付け加えた。
EUは2023年10月、中国からの電池式自動車の輸入に対する反補助金調査を開始した。
中国政府は、この主張を「裏付ける十分な証拠が不足」しており、調査は「関連するWTO規則と矛盾している。」と述べた。
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中国のブランデー輸入量は2017年から2021年にかけて大幅に増加した。
中国輸出入商工会議所の酒類輸出入支部のデータによると、ブランデーの輸入総額は2021年から16.5%減少し、2022年にはUS$14億2000万となった。 食料品、国産農産物、動物副産物の輸出。
2023年01月から09月までの最新データによると、ブランデーの輸入総額は2022年の同時期と比べて36.38%増加し、US$11億2000万となった。
中国の消費者は伝統的に白酒(発酵させたソルガムから蒸留した強い酒)を好んできたが、中国は厳しい法的条件の下でフランスで生産される樽熟成ブドウブランデーであるフレンチコニャックの主要な輸出市場でもある。
しかし、広東省に拠点を置く新エネルギー技術会社の政府関係・マーケティング部門のディレクターであるマイク・マイ(Mike Mai, a director of the government relations and marketing department at a Guangdong-based new energy technology company)によると、中国におけるフランス産コニャックの消費傾向は長年にわたって変化しているという。
近年では傾向が変わり、当局者や国営企業幹部らは7、8年前から国産白酒を好むようになった。
「コストの観点からは、(実業家は)コニャックを好んでいましたが、たとえば、XOの3リットルボトルは約2,000元( US$281)で販売されており、これは高級国産酒の1リットルボトルに相当します」とマイは述べた。
「しかし、近年傾向が変わり、当局者や国営企業幹部らは7、8年前から国産白酒を好むようになった。」
マイ氏は、宴会ではブランデーがほとんど姿を消し、ビジネス界では白酒が一番の選択肢になっていると語った。
60代のベテラン輸出業者、朱瑞(Zhu Rui)によると、1980年代、香港の実業家が中国南部の広東省に資本と輸出の注文をもたらした際、同地域にフランス産コニャックも導入したという。
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「華僑は親戚を訪ねて中国に帰国する際、贈り物としてブランデーを持参することが多く、フランスのブランデーは高級贈り物の象徴となった」と朱は語った。
「しかし、今日の中国の若い世代は他国の赤ワインやウィスキーを好み、かつてほどヨーロッパブランドのブランデーに熱心ではなくなっています。」
9月、フランスの高級品グループLVMHのワイン・スピリッツ部門であるモエ・ヘネシー (Moët Hennessy)は、中国の若者の間で最も人気のあるソーシャルメディアおよび電子商取引プラットフォームの1つである小紅書(Little Red Bookとしても知られる)に旗艦店をオープンした。
この店では、ワイン、シャンパン、コニャックをさまざまな価格で提供しており、最も高価なものは、ファッションデザイナーのキム・ジョーンズ(Kim Jones)と共同で昨年発売されたヘネシーXOで、価格は2,500元以上だった。
中国の反ダンピング調査のさなか、フランスのコニャックメーカー3社は、中国のオンラインショッピングプラットフォーム淘宝網(タオバオ)でいくつかの製品に30~50パーセントの割引を提供している。
2024年02月10日に始まる旧正月は、伝統的に中国では贈り物のピークシーズンである。
レミーマルタンの次の祝日を祝う「ドラゴン年(year of dragon)」エディションのコニャックは、売り切れ表示となっているものの、1,019元から710元に値下げされた。
香港を拠点とする輸入小売会社ワインワールドの創設者マリアナ・ラム(Mariana Lam)は、中国の消費者が国内ブランドを購入する傾向は今後も続くだろうと考えている。
「外国企業は中国の消費者への魅力を高めるために自社製品をローカライズする努力をしてきた」とマリアナ・ラムは述べた。
「しかし、消費傾向も変化しており、贈り物であれ自分用であれ、顧客はコストも考慮するようになっています。」
ニンビリティのフォードは、高級白酒や高級ブルゴーニュ、ボルドーワインが中国でのコニャック販売の一部に取って代わる可能性がある一方、山東省に本拠を置くチャンギュー(Changyu/長裕)社の中国製ブランデーも市場シェアの一部を獲得する可能性があると述べた。
「長裕は非常に堅実なブランデー事業を展開している。」「初期の頃は近づこうとはしませんでしたが、随分と進歩したと思います。」とフォードは語った。
私個人は、フランスのブランデーが好きだ。
ただし、私の兄のように、ガバガバ飲むのを見ると、悲しくなる。
猫がミルクを飲むよりゆっくりと、香りを楽しみながらチョビチョビと時間をかけて飲む。