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現存する「最後の野生馬のゲノム」が、ミネソタ大学のチームによって解析された。

米国の経済誌「フォーブス(Forbes)」は2024年06月17日に、ミネソタ大学のチームに(team from the University of Minnesota)よって解析され、ForbesJapanは、それを翻訳して2024年09月08日に公開した。

G3 (Bethesda)
. 2024 Aug 7;14(8):jkae113. doi: 10.1093/g3journal/jkae113.
The genome of Przewalski's horse (Equus ferus przewalskii)

Nicole Flack 1 ,
Lauren Hughes 2 ,
Jacob Cassens 3 ,
Maya Enriquez 4 ,
Samrawit Gebeyehu 5 ,
Mohammed Alshagawi 4 ,
Jason Hatfield 4 ,
Anna Kauffman 4 ,
Baylor Brown 4 ,
Caitlin Klaeui 4 ,
Islam F Mabrouk 4 ,
Carrie Walls 5 ,
Taylor Yeater 4 ,
Anne Rivas 6 ,
Christopher Faulk 5
Affiliations expand

Affiliations

1 Department of Veterinary and Biomedical Sciences, College of Veterinary Medicine, University of Minnesota, Saint Paul, MN 55108, USA.
2 Department of Veterinary Population Medicine, College of Veterinary Medicine, University of Minnesota, Saint Paul, MN 55108, USA.
3 Division of Environmental Health Sciences, School of Public Health, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
4 ANSC 8520 Students, University of Minnesota, Minneapolis, MN 55455, USA.
5 Department of Animal Science, College of Food, Agricultural and Natural Resource Sciences, University of Minnesota, Saint Paul, MN 55108, USA.
6 Minnesota Zoo, Apple Valley, MN 55124, USA.

PMID: 38805182
PMCID: PMC11304947
DOI: 10.1093/g3journal/jkae113

絶滅危惧種のモウコノウマ(蒙古野馬/Equus ferus przewalskii)の全ゲノム解析を完了したことをミネソタ大学の研究者チームが報告した。

一時は野生絶滅した同種は、さまざまな保護活動のおかげで、現在、飼育下あるいは再導入された群れの中で約2000頭の個体が生存している。

絶滅したマンモスまで復活するというチームもいる。
アメリカで絶滅しかけたバッファオーも、さまざまな保護活動のおかげで、群れになっている。

モウコノウマは、プシバルスキーウマ(Przewalski's horse)とも呼ばれ、中央ユーラシア高地の草深いステップを原産とする絶滅危惧種だ。歴史的にこれらのウマは多くのモンゴル民話に登場し、神が乗る馬として知られていた。モンゴル人はモウコノウマを、聖霊あるいは聖人を意味する「タヒ(takhi)」と呼んでいた。

1899年から1902年にかけて、ある動物商と数人の大地主が野生の子馬を多数捕獲し、飼育下繁殖プログラムを行った。残念なことにモンゴルから欧州への厳しい旅で生き残ったのはわずか53頭だった。到着した子馬たちは多数の動物園や民設の公園へと分散された。現在、飼育下にあるモウコノウマはすべて、わずか13頭の子孫だ。

1959年に正式な繁殖プログラムが開始されたが、残念ながらその時でさえ、動物園や民設の公園の間で行われていたモウコノウマの取引を管理する公的な政策は1980年になるまで整備されなかった。その結果、近親交配が進み、集団全体にさまざまな遺伝病が蔓延する結果となった。モウコノウマの平均寿命は著しく短くなり、子馬の死亡率も増加した。純血種の雌ウマで出産できる個体はわずかだった。

飼育下における繁殖プログラムに加えて、種の保存を目的とした複数の保護活動が実施され、再導入(野生復帰)および監視システム、野生馬の自生地の保護およびクローニングが行われている。その結果、野生のモウコノウマは2008年に「野生絶滅種」(野生絶滅)から「近絶滅種」(絶滅危惧IA類)に、2011年には「絶滅危惧種」(絶滅危惧IB類)になっている。

専門家の中には、モウコノウマは絶滅した野生の馬であるノウマ(Equus ferus)の亜種で、家畜ウマはその子孫だと考える者もいるが、独自の種だと考える者もいる。この議論にはいくつか研究例がある。たとえば、モウコノウマは33の染色体対を持つのに対して家畜ウマは32対だ。さらに、モウコノウマの祖先系統は16万〜38万年前に共通祖先から分かれており、これはウマが家畜化されるよりずっと前のこととなる。とはいえ、モウコノウマは家畜ウマと交配されると繁殖可能な雑種を産むことができる。その交配は、モウコノウマの遺伝子プールに少数の家畜ウマを導入することによって深刻な近親交配問題をわずかでも軽減させるために行われた。

現在、モウコノウマの分類は依然として議論の対象となっており、独立種なのか、家畜ウマや絶滅したターパンと同じノウマの亜種なのか、あるいは家畜ウマの亜種個体群なのかについて、コンセンサスは得られていない。

ミネソタ動物園にいる10歳の雌ウマ、バルシュカがゲノム解析に貢献した(Minnesota Zoo)
ゲノム解析に貢献したミネソタ動物園にいる10歳の雌ウマ、バルシュカ(Minnesota Zoo)

モウコノウマのゲノムは最新テクノロジーによって解明された

モウコノウマの遺伝子地図を作るために使用された血液サンプルは、ミネソタ動物園に住む10歳の飼育下の雌ウマから提供された。同動物園は長年、モウコノウマの繁殖と管理を積極的に行っており、1970年代以来50頭以上の子馬を誕生させ、1992年に開始されたモンゴル・ホスタイ国立公園における再導入活動にも雄ウマを提供した。他にも中国、ハンガリー、カザフスタンおよびロシアでも群れの再導入が行われてきた。

https://forbesjapan.com/articles/detail/71918/page3
https://www.forbes.com/sites/grrlscientist/2024/06/17/genome-of-the-last-living-wild-horse-species-has-now-been-mapped/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38805182/
https://www.technologynetworks.com/genomics/news/endangered-wild-horses-genome-mapped-for-the-first-time-387820
https://msi.umn.edu/news-and-events/msi-news/msi-researchers-sequence-wild-horse-genome
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2024.02.20.581252v2.full.pdf

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