遺伝子ネットワークは電子回路を模倣し、新しいDNAコンピューターが水質を評価。
米国のNSF(National Science Foundation/全米科学財団/国立科学財団)は2022年03月03日に、ノースウェスタン大学の合成生物学者(Synthetic biologists at Northwestern University)は、低コストで使いやすい携帯型装置を開発したと報告した。
この装置は、自分の飲んでいる水が安全かどうかを数分以内に知らせてくれる。
この装置は、電子回路を模倣した強力でプログラム可能な遺伝子ネットワークを使って、さまざまな機能を実行する。
例えば、DNAベースの回路では、無細胞分子を、ほとんどすべての電子機器に見られる回路タイプであるADC(Analog-to-Digital Converter/アナログ・デジタル・コンバータ)に工学的に変換している。水質検査装置では、ADC回路がアナログ入力(汚染物質/contaminants)を処理し、デジタル出力(ユーザーに知らせるための視覚信号/a visual signal to inform the user)を生成している。
「このプロジェクトは、合成生物学の発見がもたらす驚くべき可能性を示すものです。」と、NSFの分子・細胞生物科学部門のプログラム・ディレクターであるデビッド・ロッククライフ(David Rockcliffe)は述べています。
この装置には8本の小さな試験管が取り付けられており、汚染物質を検出すると緑色に光る。光る試験管の数は、汚染物質の量に依存する。1本だけ光れば、その水の汚染は微量である。しかし、8本すべてが光れば、その水はひどく汚染されていることになる。汚染濃度が高ければ高いほど、信号も高くなる。
この研究を率いたノースウェスタン大学のジュリアス・ルックス教授(Northwestern's Julius Lucks)は、「私たちは、それぞれのチューブが汚染物質に対して異なる閾値を持つようにプログラムしました。」と語る。
「最も低い閾値を持つ管は、常に点灯します。もし、すべてのチューブが点灯したら、大きな問題があることになります。」回路を構築し、プログラム可能なDNAコンピューティングは、他のタイプのスマートな診断のための多くの可能性を持っています。」
この新システムは、これまでの研究を土台にしたもので、この研究では、化学者ロザリンド・フランクリン(chemist Rosalind Franklin)の名を冠した体外バイオセンシングシステム(vitro biosensing system)「ROSALIND(RNA Output Sensors Activated by Ligand Induction)」を発表し、一滴の水から17種類の汚染物質を検出した。
このたびの新バージョン「ROSALIND 2.0」では、ルックス教授と彼のチームは「分子脳(molecular brain)」を追加したのである。
「最初のプラットフォームはバイオセンサーで、味蕾のような働きをするものでした」ルックス教授は言う。「そして今、脳のように働く遺伝子ネットワークが加わった。バイオセンサーは汚染を検出しますが、その後、バイオセンサーの出力は、脳のように働いて論理を実行する遺伝子ネットワーク、または回路に供給されます。」
研究者達は、再プログラムされた「分子脳」を保存がきくように凍結乾燥させ、試験管に入れた。各試験管に一滴の水を加えると、一連の反応が起こり、最終的に凍結乾燥したペレットは、汚染物質の存在下で発光するようになる。