古い氷床コアに関する新たな研究によると、北大西洋の海洋生産性は低下していない可能性がある。
NSF(National Science Foundation/全米科学財団/国立科学財団)は2024年01月05日に、より大きな生物が依存する植物プランクトンは、信じられているよりも安定している可能性があると報告した。
マーク・トウェイン(Mark Twain)の言葉を借りれば、北大西洋における植物プランクトンの減少に関する報告は非常に誇張されていた可能性がある。
以前の研究では、南極の氷床コアを使用して、北大西洋の海洋生産性が工業化時代に10%低下したことが示唆されており、この傾向が続く可能性が示唆されていた。
しかし、ワシントン大学の科学者らが主導した米国国立科学財団の支援による研究(U.S. National Science Foundation-supported research led by University of Washingtonscientists)は、海洋生態系全体のより大きな生物が依存している海洋植物プランクトンが、北大西洋で考えられているよりも安定している可能性があることを示している。
800年前に遡る氷床コアの研究チームの分析は、より複雑な大気プロセスが最近の傾向を説明できる可能性があることを示している。
NSFが支援した研究結果は、米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)に掲載された。 「この研究は、人間活動の影響下にある陸地、海洋、氷床、大気といった地球システムの複雑な相互作用を理解する上での基礎研究の重要性を示す好例です。」とNSFの極地プログラム事務局のプログラムディレクター、ライナー・アモン(Rainer Amon, a program director in NSF’s Office of Polar Programs)は述べた。
植物プランクトン(phytoplankton)として知られる小さな浮遊光合成生物(Tiny floating photosynthetic organisms)が海洋生態系の基盤を形成している。
これらの微細な生物は地球にとっても重要であり、地球の大気中の酸素の約半分を生成する。
植物プランクトン(Phytoplankton)は数えることが難しいため、科学者は他の方法で植物プランクトンの存在量を測定しようとしている。植物プランクトンは、海岸に独特の臭いを与える臭気ガス(odorous gas)である硫化ジメチル(emit dimethyl)を放出する。 硫化ジメチルは空気中に浮遊すると、MSA(methanesulfonic acid/メタンスルホン酸)と硫酸塩(sulfate)に変換される。これらは最終的に陸地や雪の上に落下し、氷床コアが過去の個体数規模を測定する1つの方法となりる。
「グリーンランドの氷床コアは産業時代を通じてMSA濃度の低下を示しており、これは北大西洋における一次生産性の低下の兆候であると結論づけられた。」「しかし、グリーンランド氷床コアの硫酸塩に関する私たちの研究は、一次生産性に関してはMSAだけではすべてを知ることができないことを示しています。」とウィスコンシン大学の筆頭著者ウルスラ・ジョンゲブラッド(North Atlantic," said UW lead author Ursula Jongebloed)は述べた。
1800年代半ば以来、工場や排気管からも硫黄含有ガスが空気中に噴出している。
これらのガスはわずかに異なる形態の硫黄原子を持っているため、氷床コア内の海洋起源と陸上起源を区別することが可能になる。
新しい研究は、以前の研究よりもさらに遡り、1200年から2006年にわたる層を持つグリーンランド中央部の氷床コア内のいくつかの硫黄含有分子を測定した。著者らは、人間が生成した汚染物質が大気の化学的性質を変化させたことを示している。 これにより、植物プランクトンが放出するガスの運命も変わった。
「氷床コアを観察したところ、植物プランクトンに由来する硫酸塩が工業化時代に増加したことがわかった」とジョンゲブラッドは語った。 「言い換えれば、MSAの減少は植物プランクトン由来の硫酸塩の同時増加によって『相殺』されており、植物プランクトン由来の硫黄排出量が全体的に安定していることを示している。」
上席著者でウィスコンシン大学の大気科学者であるベッキー・アレクサンダー(senior author Becky Alexander, a UW atmospheric scientist)は、「MSAと植物プランクトン由来の硫酸塩の両方を測定することで、海洋の一次生産者からの排出量が時間の経過とともにどのように変化したか、あるいは変化しなかったかについて、より完全な状況が得られる。」と付け加えた。
MSAの減少は植物プランクトン由来の硫酸塩の同時増加によって『相殺』されており、植物プランクトン由来の硫黄排出量が全体的に安定していることを示している。と言うことは、多くの人が訴えるような自然破壊は起こっていないということだろう。
Research areas
Directorate for Geosciences (GEO)
https://new.nsf.gov/geo
Office of Polar Programs (GEO/OPP)
https://new.nsf.gov/geo/opp
https://new.nsf.gov/news/north-atlantics-marine-productivity-may-not-be-declining
https://www.eurekalert.org/news-releases/1007867
https://www.nsf.gov/awardsearch/showAward?AWD_ID=1904128&HistoricalAwards=false
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2307587120
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