IPEFが始動した。
アジア経済ニュースNNA ASIAは2022年05月27日に米国主導の新経済圏構想「IPEF(Indo-Pacific Economic Framework/インド太平洋経済枠組み)」が、
米国
インド
日本
マレーシア
オーストラリア
ブルネイ
ニュージーランド
ベトナム
シンガポール
フィリピン
インドネシア
タイ
韓国
が発足メンバーに加わり、2022年05月23日に始動したと報告した。
関税引き下げは議題としないで、サプライチェーン(供給網)や脱炭素などの分野でルールを策定する。
IPEFの発足メンバーに含まれる東南アジアの主要国は地域的なRCEP(Regional Comprehensive Economic Partnership/地域的な包括的経済連携)に加盟しているほか、大半がTPP(Trans-Pacific Partnership/環太平洋連携協定)も名を連ねている。中国の対抗軸とも見なされるIPEFの実効性や参加国のメリットをどのようにみているのか。
https://time-az.com/main/detail/76958
RCEPは、
中国
カンボジア
ラオス
ミャンマー
日本
マレーシア
オーストラリア
ブルネイ
ニュージーランド
ベトナム
シンガポール
フィリピン
インドネシア
タイ
韓国が加盟している。
最も古いTPPは、
日本
マレーシア
オーストラリア
ブルネイ
ニュージーランド
ベトナム
シンガポール
カナダ
メキシコ
チリ
ペルーが加盟している。
さらにQuad(Quadrilateral Security Dialogue/クアッド/日米豪印の協力枠組み/四国安全保障対話)には、
米国
オーストラリア
インド
日本が加わっている。
ジョー・バイデン大統領(US President Joe Biden)は2021年10月の東アジアサミットでIPEFの構想を明らかにした。
米国はTPPからの離脱以降、トランプ前政権時にはインド太平洋地域における戦略がなかった。インド太平洋地域で影響力を強める中国に対し、米国内でもTPPに代わる米国主導の枠組みを求める声が上がっていたことが背景にある。
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220523003/20220523003_1.pdf
https://www.meti.go.jp/press/2022/05/20220523003/20220523003_2.pdf
IPEFは、
▽デジタルを含む貿易
▽クリーンエネルギー・脱炭素・インフラ
▽供給網の強靱化(きょうじんか)
▽税・反汚職――の4本柱で構成され、分野ごとに参加を募り、ルール策定を進める。
物品貿易におけるマーケットアクセス(関税)には踏み込まない点で、参加国はTPPやRCEPのように自国市場開放の義務を負うわけではない。
一方で、バイデン大統領がIPEFは「21世紀の課題解決に向けた枠組み」としていることで、インフラ整備やデジタルを含む貿易の円滑化が進むのであれば、「参加しておくことに損はない」という思惑が東南アジアの参加国にはあると言われている。
対立する米中の板挟みにあるとはいえ、逆に挟まれているからこそ、中国に対してはIPEFのカード、米国に対してはRCEPのカードを切れるといった、したたかな戦略を取れるようになったともいえる。
というのは、IPEFはこれからすぐに(一定のルールを想定した)「交渉」が始まるわけではなく、(ルール策定に向けた)「議論」から入ることになる。
各国の思惑をすり合わせながら進めることとなり、「前途多難」である。
米国が労働や環境の分野で押し付けを強めれば、それぞれの合意に参加しない国も出てくるだろう。
高水準のルールを目指すのであれば、まずは日米、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールの6カ国が中核メンバーとなり、第2陣としてその他の国を招き入れるような流れも考えられる。
なぜこのような複雑な構造になったかと言えば、TPPに加盟するときのハードルがあったことが原因である。
イギリスも、どれかに加盟すれないいのだろう。
これで、イギリスのハードルはかなり、低くなった。
IPEFの4本柱は、具体的な内容はまだ見えないが、現時点で「供給網の強靭化」は特定の国を除く包囲網という位置付けではなく、供給網を監視し、混乱が生じた場合、早期に察知して警戒するシステムの運用や、生産や購入、使用までのモノの流れをマッピングするなど、先見的かつ、ASEAN(Association of Southeast Asian Nations/東南アジア諸国連合)諸国やインドが参加しやすいものになっている。
台湾の参加が見送られたのも、反中国色を薄めて、それら諸国が参加しやすくするためとみられるが、半導体を想定した場合、台湾がIPEFに参加していなければ、その意義は大きく損なわれてしまう。
米国は、台湾とは二者関係の強化をIPEFと並行して進める意向を示している。
またIPEFの立ち上げで、4月下旬にインドとEU(European Union/欧州連合)が先端技術や貿易ルールの整備で協力を話し合う「TTC(Trade and Technology Council/貿易技術評議会)」の設立で合意したことの意義が高まった。TTCは先に米EU間で設立されており、今回、EUを介して、米国とインドがそれぞれのTTCを通じてルールの共通化を図れる可能性も出てきた。米EU間のTTCでは輸出管理や投資審査、国際標準、サプライチェーン強靭化などが議論されており、IPEFで掲げる4本柱に取り込んでいくことも考えられる。
TPP、RCEPには加盟していないインドがIPEFでは発足メンバーとして加わった。インドは安全保障や新興技術の共有、人材交流などに重点を置く日米豪印の協力枠組み「クアッド」の構成メンバーでもある。インドのIPEF参加の狙い、またクアッドとのバランスをどのように取っていくのかと言うことである。
また、フィリピンは新大統領に就任予定のフェルディナンド・マルコス(Ferdinand Marcos Jr.)が中国との関係を重視する姿勢を示しており、インドネシアはTPP参加よりもASEANの中心性や一体性を重視し、RCEPを優先してきた。
インドは対中貿易での赤字が大きく、中国が参加する広域協定にはこれまで後ろ向きだった。IPEFには中国が含まれない上、市場開放も議題とならず、柱として半導体などの供給網の強靭化が打ち出されている点で実利的に参加を決め、さらに、クアッドでの立場からも、インド太平洋地域の大国として、ルール策定に関わっていくことを重視したと考えられる。ただ、クアッドは、これまでのものとは異なり、IPEFが同心円的に広がるのではなく、分野ごとに複数の輪が交わる構図になると考えられている。
インドは直近では、UAE(United Arab Emirates/アラブ首長国連邦)とCEPA(Comprehensive Economic Partnership Agreement/包括的経済連携協定)を締結した。
また、EUやイギリス、カナダ、イスラエルなどとそれぞれFTA(Free Trade Agreement/自由貿易協定)交渉を進めているほか、オーストラリアとは暫定FTAで合意した。離脱したRCEPに代わる交易圏拡大の手段として、IPEFもその一環なのかもしれない。
インドにとって、RCEPからの離脱決定は貿易赤字のさらなる拡大や国内産業への打撃を懸念してのことだが、その点では中国の存在が大きかった。RCEPからの離脱で経済における孤立化の懸念があったことから、現在のインドの動きについては、その穴埋めとも言える。
韓国は域内貿易で存在が埋没しないよう、自国を中心拠点(ハブ)として、放射状(スポーク)にFTAを結ぶ「ハブ&スポーク」戦略を取った。第三国にとって、中国、EU、米国という大市場と個別にFTAを結ぶ韓国をゲートウェイとして、効率的なサプライチェーンの構築が実現できるようにすることを目指した。
インドは地理的に、日本にとって対アフリカビジネスの玄関口ともみられている。IPEFを活用し参加国との関係を深化させれば、インドはFTAを締結する国・地域へのハブとして売り込めるようになるとの見方もできるだろう。
これは、バスコ・ダ・ガマ戦略として、アフリカには、インドの大きな基盤がすでにできている。
今、中国がアフリカに入っていくを都を計画しているが、インドとの歴史が違う。
アフリカに行くと、そのインド人の基盤の大きさに驚くことだろう。さらにアフリカの先、ヨーロッパと中南米や北アメリカにもインドの基盤がある。
中国のアフリカ。中南米、よーろっぱの基盤は、まだ小さなものである。
ただし、今回のIPEF、RCEP、TPP、思惑が多すぎるようにも感じる。
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