今回のパンデミックで、何100ものAIツールが開発され、全滅した。

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MITテクノロジーレビュー(MIT Technology Review)日本語版は2021年08月04日に、英語版で2021年07月30日に今回のパンデミックでは、現場の医師を支援することを目指したAIツールが数多く作られた。しかし、役に立つツールがどれ一つとしてなかっただけでなく、中には誤診やリスクの過小評価によって有害になり得るツールすらあったと報告した記事を紹介した。

全てが解決できる未来へのツールとして注目されてきたAIが、これほど悲惨な結果になった原因は、どこにあるかをウィル・ダグラス・ヘブン(Will Douglas Heaven)が、「AIツールがパンデミックで「役立たず」に終わった理由(Hundreds of AI tools have been built to catch covid. None of them helped.)」として解説した。

https://time-az.com/main/detail/74921

2020年03月、当時まだ情報の乏しかった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がヨーロッパを襲い、多くの病院が医療崩壊に陥った。
「医師たちは患者をどう治療すればいいか、見当もつきませんでした」と、オランダのマーストリヒト大学(Maastricht University in the Netherlands)で予測ツールを研究する疫学者のローレ・ワイナンツ(Laure Wynants)助教授は言う。

しかし、その4カ月前からパンデミックと戦ってきた中国のデータはあった。
このデータをもとに機械学習アルゴリズムの訓練をすれば、医師たちが目の前の症例を理解し、医学的判断を下し、命を救うのに役立つかもしれない。「AI(Artificial Intelligence/人工知能)の有用性を証明する、またとないチャンスだと思い、大きな期待を抱いていました。」と、ワイナンツ助教授は話していた。

結局、AIが新型コロナウイルス感染症の治療に貢献することはなかった。
だがそれは、そうした取り組みがなされなかったからではない。世界各地の研究チームが協力を申し出た。なかでもAIコミュニティは、即座にソフトウェア開発に乗り出した。こうしたソフトウェアは、患者の診断やトリアージを迅速化することで、少なくとも理屈の上では、最前線の医師たちが切実に求めている支援を提供できるはずだった。

こうして相当数の予測ツールが開発された。

だが、本当に役立ったものはひとつもなく、有害になり得るものすらあった。

こうした否定的な結論が、ここ数カ月で発表された複数の論文で得られている。データサイエンスとAIに特化したイギリスの国立研究機関であるチューリング研究所(Turing Institute)は2021年06月に、2020年後半に開催されたいくつかのワークショップでの議論をまとめた報告書「The Turing convenes data science and AI experts to assess the UK’s response to the COVID-19 pandemic---Lessons for future emergencies」Wednesday 09 Jun 2021を発表した。

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新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)との戦いにおいて、AIツールはまったくといっていいほど事態を改善しなかったというのが満場一致の結論だった。

AI診断で、何人かが死んだかもしれない。

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