イギリス、30年超ぶり大規模金融改革。
ヨーロッパ経済ニュースEUROPE NNAは2022年12月12日に、イギリス政府は2022年12月09日に、金融サービス部門の改革に向けた規制緩和策を公表したと報告した。
リテール(小口金融)部門と投資銀行部門を分離する「リングフェンス規制(ring fence regulation)」など2008年の金融危機後に導入されたルールの見直しを含め、30件以上の措置を打ち出している。
EU(European Union/欧州連合)離脱(Brexit)の恩恵を生かして投資を促し、国際的な金融拠点としてのロンドンの地位を維持する狙いがあり、1986年にサッチャー政権下で行われた金融大改革以来の大規模な規制改革になるとしている。
「リングフェンス規制」は、リテール顧客の預金をリスクの高い投資銀行業務などの損失から守る目的で導入された。大手行のほとんどは既に多額のコストをかけて対応を済ませているが、政府は今回、リテール業務を主力とする小規模な金融機関は対象外とすることを決めた。
コスト負担を軽減することにより、大手行との競争を促すとしている。
また、金融機関に個々の業務活動の責任者となる幹部の指名を求める「SM&CR(Senior Managers and Certification Regime/シニア・マネジャーおよび認証レジーム)」も見直す。
この規則は、金融危機後に大手行の破綻を回避するため巨額の公的資金が投じられた反省から、高リスク業務に対する幹部の個人的責任を明確化するために導入された。ただロイター通信によると、当局による責任者の審査に時間がかかり過ぎることに対して批判があった。
政府はこのほか、EUの金融規制である「MiFID2(Markets in Financial Instruments Directive Second Act/第2次金融商品市場指令法)」を改訂する方針。
これにより、「EUが課す負担の大きい義務」を取り除くとしている。
ジェレミー・ハント(Jeremy Hunt)財務相は一連の規制緩和について、「世界有数の競争力のある開かれたダイナミックな金融サービス拠点としてのイギリスの地位を固めるもの」と説明した。「EU離脱がもたらした自由を生かし、イギリスの国民や企業の利益にかなう独自の規制を機敏に提供していく」と述べた。
EU離脱を受けてロンドンは株式取引高でアムステルダムに抜かれるなど、ヨーロッパ各国の金融拠点との競争が激化している。イギリスは独自に規制を策定できるようになったが、ロンドンには世界的な金融機関が数多く拠点を置いており、EUをはじめとする国際的な基準からさほど大きく逸脱することはできない。また、規制緩和を進めれば金融危機の教訓を忘れることになると警戒する声もある。
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https://europe.nna.jp/news/show/2450304
https://questions-statements.parliament.uk/written-statements/detail/2022-12-09/hcws425