地球規模のゲノム探索により、岩石を呼吸する微生物に新たな知見。環境を劇的に変える微生物たち。
米国のNSF(National Science Foundation/全米科学財団/国立科学財団)は2022年03月29日に、微生物は微小な存在だが、地球とその居住性に大きな影響を及ぼしている。動物や植物などの真核生物とは異なり、岩石など驚くほど広い範囲の表面や物質を「呼吸」することでエネルギーを得ていると報告した。
また、微生物はこれらのエネルギー源を糧として環境を大きく変え、地球上の栄養素の循環や利用可能性を左右する重要な存在となっている。
例えば、光合成を行うシアノバクテリアの代謝(metabolism of photosynthetic cyanobacteriaによって、地球上の酸素が増加することはよく知られている。
近年、微生物が岩石を「呼吸」する新しい仕組みが発見された。EET(extracellular electron transfer)は、岩石など細胞の外にある物質からエネルギーを生み出すことができる。
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微生物が外界と電気的な接続を確立し、その接続によって生育に必要な電力を発生させる。その後、有毒廃棄物の浄化や代替エネルギー源など、EET能力を持つ微生物の画期的な用途が研究者によって発見されている。
mBio誌に掲載されたNSFの資金提供による研究では、ハーバード大学(Harvard University)とミネソタ大学(University of Minnesota)の研究者がEETを探すために生命の木を調査し、これまで考えられていたよりもはるかに広く存在していることを発見している。
NSFの環境生物学部門のプログラムディレクターであるマット・ケイン(Matt Kane, a program director in NSF's Division of Environmental Biology)は、「地球上の微生物ゲノム配列は、地球の生物多様性の新たな側面を明らかにする金鉱のようなものです。(Global microbial genome sequences continue to be a goldmine for revealing new aspects of Earth's biodiversity,)」と語っている。
EETを可能にする遺伝子群の1つであるmtrCABは、シェワネラ菌(bacterium Shewanella)でよく研究されているものである。シェワネラ・ワンデンシス(Shewanella oneidensis)は、EETが可能な生物として最初に発見されたもののひとつである。
ハーバード大学の共同研究者であるイザベル・ベイカー(Isabel Baker of Harvard University)は、「mtrCABに関する我々の理解の多くは、この特定の生物における研究によるものです。(A lot of our understanding of mtrCAB comes from studies in this particular organism,)」「しかし、このような代謝が生命の枝分かれした部分にどれだけ広く存在するかについては、実はよくわかっていません。それを理解することで、この代謝が地球規模の生物地球化学サイクルのどこで作用しているのかを正確に特定することができます。(But we don't really know how widespread this type of metabolism is among life's branches. Understanding that will help us pinpoint where this metabolism is at play in global biogeochemical cycles.)」と語っている。
ベイカーとハーバード大学の共同研究者ピーター・ギルギス(Peter Girguis of Harvard)は、ミネソタ大学の研究者ジェフリー・グラルニック(Jeffrey Gralnick)とブリジット・コンリー(Bridget Conley)と共同研究した。
その結果、この遺伝子はこれまで考えられていたよりも多くの生物に存在し、また世界中の環境に存在することが判明した。「我々が同定した生物はすべて、環境中の基質に直接接続し、そこで利用可能なものを変化させることができます。(All the organisms we identified are capable of plugging directly into the substrates in their environment and changing what's available there,)」とピーター・ギルギスは言う。