先進国は、一斉に利上げ。FRB編。
慎重論が先行している中、米国のWSJ(Wall Street Journal/ウォールストリート・ジャーナル)(電子版)は2022年02月05日に、米国のFRB(Federal Reserve Board/連邦準備理事会)のジェローム・パウエル議長(Chairman Jerome Powell)は、大半のFOMC(Federal Open Market Committee/米国連邦公開市場委員会)メンバーは利上げの用意があると述べていると報告した。
2022年01月の米国雇用統計(US jobs report)で着実な雇用拡大が確認されたことで、FRB(Federal Reserve Board/連邦準備理事会)は来月のFOMCで計画通り利上げ開始することができそうだ。そればかりか、さらに2022年05月と2022年06月の会合でも連続利上げする可能性が出てきたと伝えている。
実は、米国は、慎重論が先行している中、一発逆転が大好きな国である。
さて、本当に一発大逆転は起こるのか?
https://time-az.com/main/detail/76179
米国では2022年01月に、新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株(Omicron Variants)」の感染者数が急増したことで雇用の減速が警戒されており、FRBは2022年01月の雇用統計についてはすでに受け流す用意があるとの姿勢を見せていた。ところが、実際は先月ばかりでなく、過去数カ月にわたって雇用が予想外に力強く拡大したことが示された。
2022年01月の雇用統計で、現時点においては経済の短期的な変化を予測することがいかに難しいかが浮き彫りになった。
2022年01月は就業者数が46万7000人増加した一方で、失業率は4%に小幅上昇した。失業率は2021年06月の5.9%から2021年12月までに3.9%に急低下していた。
また、2021年分の改定では、昨年の就業者数がわずかに下方修正されたものの、年末にかけては好調で、2021年11月と12月の就業者数は先月発表分から合わせて70万9000人上方修正された。
FRBのジェローム・パウエル議長は先週のFOMC後の記者会見で、大半のメンバーは2022年03月15~16日に開催されるFOMCで短期金利の引き上げる用意があると述べた。ただ、彼らは「最近のオミクロン株の感染者数急増が今四半期の経済成長の重荷となることは間違いないだろう」と予想していると指摘した。
また、「感染の波がすぐに過ぎ去れば、経済に与える影響も同様になるはずで、(中略)基調的な景気の堅調さはすぐに表れるだろう。」との見方を示した。
FRBは、2022年03月の利上げ開始後も利上げを継続する可能性が高い。労働需要が堅調で、インフレ率がFRBが目標とする2%を大きく上回っていることから、過去10年間よりも速いペースで利上げを実施する可能性があることを示唆している。
これは、FRBが金利を中立的な水準付近に戻すことに寄与するだろう。中立金利とは景気を過熱も減速もさせないと考えられる金利水準で、2~3%と推定されていると報告した。
ビジネス・インサイダー(Business Insider Japan)は2022年02年02月04日に、米国金融大手JPモルガン・チェース(JP Morgan Chase & Co.)の資産運用部門JPモルガン・アセット・マネジメントのボブ・ミシェル最高投資責任者(Bob Michel, Chief Investment Officer, JP Morgan Asset Management)は、FRBの利上げについて、アメリカの株式市場は2009年以来最悪の1月を過ごしたと言い。「景気後退を誘発」「大惨事は不可避」と、衝撃予測をしていた。
さらに、インフレの抑制には金利引き上げが必須とは言え、ペースを急ぎすぎても、タイミングが早すぎても、あるいはその両方であっても、経済を悪化させる可能性があると指摘していた。
米国の新聞「ブルームバーグ(Bloomberg)」日本語版は2022年02月02日に、2022年の米利上げ回数を巡り、見通しを引き上げる投資家に対し、金融当局者はそれほど急ピッチの引き上げを想定していないとのメッセージを発していた。
今週これまでに発言した6人のうち、2022年03月の0.5ポイント利上げのアイデアに支持を表明した当局者はおらず、引き締めに最も積極的なセントルイス連銀のジム・ブラード総裁(St. Louis Fed President Jim Bullard)の発言は、年内5回の利上げ見通しについて「それほど悪くない予想だ」というものだった。
もう1人のタカ派であるカンザスシティー連銀のエスター・ジョージ総裁(Esther George - Federal Reserve Bank of Kansas City)も、理想的には金融当局として漸進的な引き締めが望ましいと話しており、こうした慎重な見通しは最高7回の年内利上げや1回で0.5ポイントの引き上げもあり得るといったウォール街(Wall Street)の予想とは対照的なものとなっていた。
約40年ぶりのインフレ高進を背景に、パウエルFRB議長は、FOMCが2022年03月15、16両日の会合での利上げの準備を整えたと述べる一方、0.5ポイント利上げの可能性を排除したり、追加利上げのペースの概要を示したりすることはなく、必要に応じ急速な引き締めの選択肢を残した。
しかし、その後に自身の考えについて発言機会のあった当局者は、あまりにも性急に引き締めを進めるべきではないとの強い願望を明確にしていた。
マクロポリシー・パースペクティブズ創業者のジュリア・コロナド(Julia Coronado, Founder of Macro Policy Perspectives)は米金融当局者について、「彼らは落ち着いたかじ取りを望んでいる。パニックに陥ったり、せかされたりしているように受け止められたくない考えだ」とし、市場に「余計なボラティリティーを引き起こしたくないと望んでいる.」と解説していた。
東洋経済も2022年02月03日に、みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト唐鎌 大輔は、金融市場のテーマは依然としてアメリカのFRBの正常化プロセスの現状および展望に集中している。
「資産価格の影響はどうあれ、手を緩めることはなさそう」という見方が正しそうだが、本当にこれを貫けるかどうかはいまだ予断を許さない。
2022年01月28日にニューヨーク連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of New York/NY連銀)のブログ「Liberty Street Economics」が『The Global Supply Side of Inflationary Pressures』と題した論考を掲載している。
ここでは同行エコノミストが開発した定量分析の手法を用いてアメリカ、ユーロ圏そしてOECD加盟国で発生しているPPI(Producer Price Index/生産者物価指数)やCPI(Consumer Price Index/消費者物価指数)の上昇に関し、どの程度が供給制約に起因しているのかが明らかにされている。
サプライチェーン崩壊という「供給」不足に起因する物価高に対して、FRBがやろうとしていることは引き締めを通じて「需要」超過を軽減しようとする行為である。
つまり、減少した供給量に合わせて需要量も減少させようという縮小均衡の発想で、当然、景気は減速する。
しかし、需要は徐々にしか減らないのでインフレ圧力も徐々にしか後退しない。「患部と処方箋が若干ずれている」というのが今のFRBの金融政策姿勢に対して抱かれる違和感の正体であると指摘している。
アトランタ連銀のリアルタイムGDP予想「GDPNow」は2022年01月28日時点の推計で前期比年率0.1%のほぼゼロ成長と試算している。
年内の利上げ回数を増やしたところで最終的に行き着く利上げの終点は変わらないというのが市場の見方である。「最終的に行き着く水準は同じ」と考えられている事実は、短期的に数多くの利上げを押し込む政策運営は持続性がないと思われている証しでもあるとの場ていた。
気の腰折れ(オーバーキル)を回避するという観点からすれば、供給能力の復調を待ちつつ、今後3年間で年2~3回の利上げを実施するといった姿勢が、物価と成長率の安定を両立させるうえでは無難な選択肢となってくるように思えると述べていた。
さて、実際はどうなる。
経済は、一歩先は闇である。
2022-02-03---先進国は、一斉に利上げ。イギリス編。
2022-02-03---先進国は、一斉に利上げ。欧州中央銀行編。