イギリスの秋季予算案、シンクタンク分析。保険料増、低所得層に打撃
ヨーロッパ経済ニュースEUROPE NNAは2024年11月01日に、イギリス政府が2024年10月30日に発表した秋季予算案における国民保険料の引き上げは、低所得者層により大きな打撃を与える。
イギリスの民間シンクタンクIFS(Institute for Fiscal Studies/財政研究所)とシンクタンクのレゾリューション基金(Resolution Foundation)が2024年10月31日までに、こうした調査結果を発表した。
イギリス政府は「働く人々」の保護を強調し、国民保険料についても事業主負担率を引き上げる案を掲げているが、最終的に影響を被るのは低所得者であると分析されている。
イギリスのChancellor of the Exchequer(財務大臣): Rachel Reeves(レイチェル・リーブス)が2024年10月30日に発表した秋季予算案では、国民保険料の事業主負担率を2025年04月から1.2ポイント引き上げ15%とし、事業主負担の発生する所得額を現行の£9,100から£5,000に引き下げる内容となっている。公約通り、所得税やVAT(Value Added Tax/付加価値税)を含め、直接的な労働者向けの増税は回避されたことになっている。
ただしIFSは、この政策が雇用主側だけでなく労働者にも大きな影響を与えることになると指摘した。所得水準で上位20%の人々の雇用コストは約1.5%の上昇にとどまるが、下位20%の雇用コストは4%超上がるとして、「最も肩幅が広い人々に税負担を強いる」という公約に反すると異論を唱えた。
レゾリューション基金によると、今回の過去最大規模となる総額£400億の増税案は、富裕層世帯にも貧困層世帯にもほぼ均等に影響を及ぼす。世帯所得の上位50%は平均で年収が0.6%減るのに対し、下位50%では平均0.8%減になるという。
同基金でリサーチ・ディレクターを務めるジェームス・スミス(Resolution Foundation Research director James Smith)は「初日からいきなりは給与に反映されなくても、最終的には賃下げにつながる」として、「この予算案は間違いなく働く人々に対する増税だ」と警鐘を鳴らしている。
Putting the Autumn Budget 2024 decisions on tax, spending and borrowing into context
31 October 2024 · Author: Camron Aref-Adib, Mike Brewer, Molly Broome, Tom Clark, Nye Cominetti, Adam Corlett, Emily Fry, Sophie Hale, Lindsay Judge, Zachary Leather, Jonathan Marshall, Charlie McCurdy, Louise Murphy, Felicia Odamtten, Cara Pacitti, Simon Pittaway, Hannah Slaughter, James Smith, Greg Thwaites, Lalitha Try
2024年10月30日---イギリス政府、秋季予算案を発表
https://europe.nna.jp/news/show/2723262
https://ifs.org.uk/events/autumn-budget-2024-ifs-analysis
https://www.resolutionfoundation.org/about-us/team/james-smith/