イギリスのEU離脱、サービス輸出に影響。4年間で£1100億縮小。

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ヨーロッパ経済ニュースEUROPE NNAは2021年06月02日に、イギリスのアストン大学経営大学院(Aston University School of Management, UK)の研究者の調査で、イギリスのサービス輸出高が、EU(European Union/欧州連合)からの離脱(Brexit)決定以降の4年間で£1,100億超縮小していたことが明らかとなったと報告した。

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ボリス・ジョンソン首相(Prime Minister Boris Johnson)が、体力任せで実現した「Brexit」であったが、現状では、大変なことになっている。

研究者らは、IT(情報技術)や金融などのサービス産業の輸出高について、「Brexit」を巡る国民投票が実施された2016年06月以前の傾向が続いた場合の予想値と、実際の数値を比較した。
その結果、2019年末までに累計で£1,130億の格差が生じていたことが分かった。

https://time-az.com/main/detail/74520

この数値には、2020年に始まった新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響は含まれていない。

研究者らは、パンデミックが世界貿易に響いていることは事実だが、イギリスがEU域外での競争力を強化しない限り、パンデミック収束後も状況は改善しないと警告している。

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イギリスがEU域外での競争力を強化するため、TPPなどで模索しているが、効果が出るまでに時間が必要である。

日本経済新聞 電子版は2021年06月02日に、TPP(Trans-Pacific Partnership/環太平洋経済連携協定)の参加11カ国は2021年06月02日に、閣僚級会合であるTPP委員会をテレビ会議形式で開いた。2021年02月に加盟を申請したイギリスの加入に向けて交渉を始めると決めた。参加すれば発足11カ国以外で初めての新規加盟国になる。

イギリスが加盟基準に適合するかを判断する作業部会も設置した。
日本が議長、オーストラリアとシンガポール両国が副議長となる。実際に加盟するまで1年近くかかるとの見方もある。

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一方、アイルランドのサービス輸出高は同じ期間に£1,260億拡大した。
2016年以前の水準から24%増加したことなる。

アストン大学経営大学院のジュン・ドゥ教授(Jun Du - Aston Research Explorer - Aston University)は調査結果について「イギリスのサービス貿易への打撃と、経済や雇用へのその波及が深刻に懸念される」とコメント。
データ共有や、金融サービス事業の「パスポート制度」を巡っては困難な交渉が予想されるとした上で、「サービス貿易の損失を回避するためには、これらの分野でEUとできるだけ緊密な関係を目指すべき」と指摘している。

さらに、米国との交渉が、待っている。

リズ・トラス (Liz Truss)国際貿易相(Secretary of State for International Trade and President of the Board of Trade)は、大変である。

イギリスとTPP参加11カ国との2019年の貿易高は£1,110億で、2016年以降、年8%のペースで伸びている。
ただ、これらの国がイギリスの輸出に占める比率は8.4%と、ドイツ1カ国への輸出と同水準にとどまる。またイギリスは既に、日本など一部のTPP参加国とFTAを結んでいるほか、参加各国とは地理的に離れているため、同協定への加盟による効果は限定的となる見通しだという。

イギリスの経済新聞FT(フィナンシャル・タイムズ/Financial Times)は、、ジョンソン首相は、米国のバイデン新政権もTPPへの参加を目指すと期待している。イギリスは、米国とのFTAの早期締結を目指しているが、EU離脱から1年が経過しても、実現のめどは立っていない。こうした中、イギリス政府はTPPを通じた米国との貿易関係強化を狙っているとみられる。

現在のところ、イギリスの未来は、スーパー・ウーマン。リズ・トラスにかかっている。


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