プランクトンがパンデミック防止の秘密を握る。

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米国のNSF(National Science Foundation/全米科学財団/国立科学財団)は2021年06月01日に、動物種内および動物種間の病気の伝播に関する新発見をしたと報告した。

宿主が宿主内の病気のダイナミクスをコントロールする:無脊椎動物のシステムからの洞察。

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コロラド大学ボルダー校の新しい研究9new University of Colorado Boulder research suggests)で、寄生虫にさらされたプランクトンであれ、病原体にさらされた人間であれ、宿主の初期免疫反応は、感染が発生するかどうか、また集団内でどの程度広がるかを決定する上で重要な役割を果たしていることが、示唆された。

https://time-az.com/main/detail/74525

NSFが助成したこの研究成果は、『The American Naturalist』誌に掲載され、動物種間での病気の伝播を理解し、予防するための貴重な知見となる。

発展途上国でカタツムリから人間に伝染する寄生性ヒラメムシから、COVID-19や西ナイル・ウイルスのような世界的な大流行を引き起こした哺乳類や昆虫から人間への人獣共通感染症の波及現象まで、感染した生物の免疫反応は、次に何が起こるかを計算する上で重要な変数である。

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この論文の筆頭著者であるタラ・スチュワート・メリル(Tara Stewart Merrill, lead author of the pape)は、「病気の生態学や疫学で見られる最大のパターンの一つは、全ての宿主が同じではないという事実である。

「感染症の研究では、病気がどのように広がるのかを理解するために、宿主の免疫力を高めたいと考えています」と述べている。
論文の共著者は、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校(University of Illinois Urbana-Champaign)のゾイ・ラプティ(Zoi Rapti)とカルラ・カセレス(Carla Cáceres}である。

NSFの環境生物学部門のプログラムディレクターであるベッツィ・フォン・ホレ(Betsy von Holle)は、「研究チームは、実験で得られたデータをもとに、多段階プロセスを用いて評価された感染の数学モデルを作成した。」「このモデルは、宿主が感染に抵抗する可能性が最も高い段階を指し示しており、研究者は集団の中で病気がどのように移動するかについて、より深い洞察を得ることができます」と述べている。

無脊椎動物は一般的な病気の媒介動物であり、感染性の病原体を人間同士、あるいは動物から人間に伝えることができる。
マラリアなどの媒介性疾患は、全世界の感染症の約20%を占め、毎年70万人以上が死者んでいる。

しかし、これまでの疫学研究では、人間の病気の媒介となる生物の無脊椎動物の免疫や回復についてはほとんど考慮されてこなかった。

病原体にさらされると、無脊椎動物の宿主は感染すると考えられているからだ。

しかし、もしも無脊椎動物が病気を撃退し、人間に病気を移す連鎖を断ち切ることができるとしたらどうだろうか。

研究者たちは、小さな種類の動物プランクトン(Daphnia dentifera)の一生と、真菌の寄生(Metschnikowia bicuspidata)への曝露を観察しながら、この可能性を実際に目にした。

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プランクトンの中には、真菌の胞子が体内に侵入するのを阻止するのが得意なものもあれば、胞子を摂取しても限られた時間で感染を解消するものもあった。

スチュワート・メリルは、「今回の結果は、無脊椎動物が感染の可能性を減らすために利用できるいくつかの防御策があることを示しています。また、感染パターンを理解するためには、これらの免疫防御策を理解する必要があります」と語っている。

新しい治療法が、開発される可能性がある。
しかし、それを発見するには、また膨大な時間が必要だろう。

それぞれの機能のマッピングと、その組み合わせの効果。さらにそれが人間にどう反応するかなど、気の遠くなるような研究が必要である。

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