映画『ナイル殺人事件』感想
先月の『大怪獣のあとしまつ』に続いて観に行った映画。原作は読んでおらず、映画についても予告編程度の予備知識しかなかった。
形態としては「字幕版」と「IMAX字幕版」があり「吹き替え版」はなかった。私は「字幕版」を観たが、平日の午前中でもあり、観客は私を含めて3人。
何と言っても、ガル・ガドットが美しかった。最初の犠牲者だが、開始から1時間は生きていたので、見せ場は十分あった。何度かあったダンスシーンは妖艶で、一方で富豪としてのシビアな面の演技も説得力があった。
事件が起きて、名探偵が解決するフォーマットで、最初「2時間のサスペンスドラマみたい」と思ったが、よく考えなくてもこちらが起源だ。
特に海外のドラマの場合、登場人物の描き分けが悪いと、映画は小説と違って読み返せないので、「これ誰だっけ?」と混乱することがある。ただ、この作品は、各人特徴があり人数的にもちょうど良くて、混同せずに観られた。
クリスティーは、最近のアンソニー・ホロヴィッツへの評価で言われているように「フェアな推理小説」(読者にすべての要素を明示)の代表者だが、この映画もその原則に沿っている。
そのせいもあり、特にミステリーマニアでない私でも、「絵の具が…」のセリフで、トリックについてはほぼわかってしまい、同時に犯人の目星も付いた。ただ、読者の裏をかくことだけが推理小説(映画)の楽しみではないと思うので、それについては、特に悪いことだと思わない。
良質なドラマと、このご時世に、エジプト旅行に行った気分になれるのは、大画面の有効な使い方だと思う。
2時間7分の上演時間は、駆け足でもなく中弛みもなく、ちょうどいい感じ。
ポアロの過去と、現在の恋、その結末が用意されたラストシーンも美しかった。
謎解きについては、上に書いたように意表を突かれないが、エジプトの壮大な風景とガル・ガドットを大画面で観る価値はある映画。