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「燃やす」からの脱却へ。プラスチックリサイクルの現状と課題|クリーンテック、資源循環に挑む。#01


この記事は、「資源循環がデジタル化した社会」の実現に挑むスタートアップdigglueの新卒社員である草彅(@digglue_moegi)がお届けするシリーズ「クリーンテック、資源循環に挑む。」第1弾です。

4/14(金)にオンラインを開催します(参加受付中)

みなさんは普段、プラスチックごみをどのように捨てていますか?
プラスチックごみと燃えるゴミを分別し、指定の日に収集場所へ。

では、そのプラスチックごみは収集後、どう処理されているのでしょう?
もう一度プラスチックとして再利用されている、と思う方も多いかもしれません。

実際、日本のプラスチックリサイクル率はなんと86%。
一方で、燃やして処理されるプラスチックごみは全体の70%以上。

なんだか違和感がありますね。
この記事では、世間のイメージとはちょっと異なるプラスチックリサイクルの実態と課題、プラスチックリサイクルを変えるための解決策をまとめました。

プラスチックのリサイクル方法は3種類

「リサイクル」と聞くと、使用済みの製品からもう一度製品を作ることを思い浮かべる人が多いかもしれません。

そもそも、リサイクルとは「ごみを原料(資源)として再利用すること」で、「再資源化」や「再生利用」とも言われており、リサイクルにはいくつか種類があるのです。

マテリアルリサイクル:もう一度、製品を作る

使用済み製品や生産工程で排出される廃棄物を回収・処理し、新しい製品の原料としてもう一度使うことです。「材料リサイクル」「再資源化」「再生利用」とも呼ばれています。

具体的な例としては、
・使用済みのペットボトルから衣類を作る
・古紙や牛乳パックから再生紙を作る
などが挙げられます。

「リサイクル」と聞いて多くの人が想像するのがマテリアルリサイクルではないでしょうか。

サーマルリサイクル:燃やしてエネルギーを利用する

廃棄物を焼却する際に発生するエネルギーを回収して利用することで、「熱回収」とも言われています。発生したエネルギーは発電や温水の熱源、冷暖房に利用されており、焼却によって生じた灰はエコセメントに利用される場合もあります。

エコセメントとは?
都市ごみや下水汚泥の焼却灰と、石灰石など従来のセメント原料を混ぜて作ったセメント。
エコセメントは、1300℃以上という高温で焼成されるため、焼却灰に含まれるダイオキシンなどの有害物質は、分解されて無害になる。鉛などの有害金属は塩化物として回収されるため環境汚染を引き起こすことはないとされている。

環境用語集:「エコセメント」|EICネットより引用

ケミカルリサイクル:化学反応で原料を作る

使用済み製品を化学反応によって組成変更させて再利用することです。
例としては以下があります。
・廃プラスチックを油化、ガス化、コークス炉化学燃料化
・廃食用油のディーゼル燃料化、石鹸化、飼料化
・畜産糞尿のバイオガス化

このように、リサイクルは複数の手法で行われています。
気がついた方もいるかもしれませんが、「リサイクル」と「マテリアルリサイクル」の定義は同じです。狭義では「リサイクル」とは、「マテリアルリサイクル」のことを意味しています。広義では「サーマルリサイクル」や「ケミカルリサイクル」も「リサイクル」に含まれます。

日本のプラリサイクルはサーマルが主役

日本の廃プラスチックのリサイクル率は8割を超えると言われています。
では、実際に3つのリサイクルはどのくらいの割合で行われているのでしょうか?
焼却・埋め立て処理の割合(2020年)と合わせて見てみましょう。

プラスチック循環利用協会『プラスチックリサイクルの基礎知識』をもとに作成

1位 サーマルリサイクル62%
2位 マテリアルリサイクル21%
3位 焼却8%
4位 埋め立て6%
5位 ケミカルリサイクル3%

内訳を見ると、廃プラスチック(プラスチックごみ)を焼却するサーマルリサイクルが全体の62%を占めています。通常の焼却処分と合わせると、70%の廃プラスチックが燃やされてしまっているのです。また、埋め立て処分の中に一部焼却後の灰も含まれているとすると、焼却されている廃プラスチックはもっと多くなるかもしれません。

このようにしてみると、「リサイクル」本来の意味で「再生利用」「再資源化」されている廃プラスチックは、たったの24%です。
しかし、日本国内ではプラスチックのリサイクル率が86%となっています。

なぜほとんど燃やされているのか

サーマルリサイクルが多い要因として、自治体の財政難があります。マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを行うための施設を設置するにはお金がかかります。一方、焼却するだけであれば施設を設置するコストが低くなります。したがって、比較的コストがかからないサーマルリサイクル施設を設置する自治体が多いのです。

サーマルリサイクルの懸念点

日本のリサイクルを支えているサーマルリサイクルですが、持続可能な社会の実現においては課題もあるのです。

①CO2排出量が多い
サーマルリサイクルでは、廃プラスチックを燃やしてしまうため、当然のことながら廃プラスチックをもう一度使うことはできません。したがって、製品を製造するには新しいプラスチック(バージン材と言います)を生成しなければなりません。

サーマルリサイクルをして新しいプラスチックを生成した場合、プラスチック1トンあたりのCO2排出量は約1.92トンです。
一方、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルをした場合、プラスチック1トンあたりのCO2排出量は約0.45トンです。つまり、サーマルリサイクルは、マテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの約4倍のCO2を排出してしまいます。

CO2排出量を考えると、脱炭素社会の実現のためには、サーマルリサイクルよりもマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの方が望ましいと言えます。

②バージン材の生成で有限の資源を消費
サーマルリサイクルでは新しいプラスチックの生成が必要になりますが、プラスチックの原料は何でしょうか?

そう、石油です。

石油の可採年数は約53年(2020年時点)と言われています。可採年数は、新たな石油の発見や生産技術の発展により伸びる余地があります。

しかし、地球の埋蔵できる石油の量は限られているうえ、石油が地下で生成されるには長い長い年月がかかります。近年の使用量から考えても、人類が使える石油には限りがあり、持続可能な資源とは言えません。廃プラスチックをマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルし、バージン材の使用量を減らすことが必要なのです。

サーマルリサイクルは最終手段

循環型社会の形成を目的に2000年に制定された「循環型社会形成推進基本法」では、サーマルリサイクル(熱回収)の優先度が低く設定されています。

循環型社会形成推進基本法」をもとに作成

「循環型社会形成推進基本法」では、廃プラスチックの発生をなるべく減らし、ごみになった場合は資源としてもう一度新しい製品に生まれ変わらせることを優先しています。ですが、繰り返し使う中で、プラスチックの劣化を防ぐことは難しいです。再生利用も困難になったとき、処分の過程でも最後まで資源を有効に活用する手段としてサーマルリサイクルがあるのです。

サーマルリサイクルは脱炭素や資源枯渇の観点から、優先度の低い処理方法です。日本のプラスチックリサイクルは、今後、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルへと主軸を替えていくことが必要ではないでしょうか。

欧米ではエネルギーリカバリー
欧米ではサーマルリサイクルをリサイクルと捉えていません。なぜなら、欧米では、リサイクルとは製品を繰り返し使うことを意味しており、「燃やす」はリサイクルの概念から外れているからです。EUでは「サーマルリサイクル」ではなく、「エネルギーリカバリー」と呼ばれています。

サーマルリサイクルが『リサイクルではない』と言われる理由 」より引用

ものづくりの現場から見えるリサイクルの課題

ここまで、日本のリサイクルの現状をお話してきましたが、実際にリサイクルが行われる現場ではどのような課題があるのでしょうか?
今回はものづくりの現場でプラスチックのマテリアルリサイクルに関わる方々が抱える課題をお伝えします。

登場人物
製造業(排出側)
製造業のうち、工場での製品の製造過程において廃プラスチックを廃棄・排出している人たち。「排出事業者」とも呼ばれます。このnoteでは「排出側」と表記します。
マテリアルリサイクル工場
廃棄物を回収してマテリアルリサイクルを行う人たち。このnoteでは「リサイクル工場」と表記します。
製造業(調達側)
製造業のうち、製品の原材料を調達する人たち。このnoteでは「調達側」と表記します。

排出側「リサイクルできることを知らなかった」

排出側では、整形不良の部品、成形の過程で発生する端材、使い捨ての備品といった廃プラスチックが毎日大量に廃棄されています。
廃プラスチックは、工場が処理業者にお金を支払って処分されており、処分コストは月に数百万~数千万円にも上ります。処理業者に回収された廃プラスチックの多くは通常の焼却か、サーマルリサイクルによって処理されます。

しかし、実は、この燃やされてしまっている廃プラスチックの中には、マテリアルリサイクルできるものが多く含まれています。マテリアルリサイクルに回すことができれば、リサイクル工場が廃プラスチックを「買い取る」形になるので、工場はお金を支払うどころか、収入を得られるのです。

ですが、残念ながら、工場はこの事実を知らない場合が多いです。その結果、廃プラスチックの多くが燃やされてしまう上、工場は得られるはずのお金を失ってしまうのです。

リサイクル工場「一定品質の廃プラを継続して調達できない」

次にリサイクル工場です。リサイクル工場では、どこでどのくらいリサイクルできる廃棄物が排出されているのか分からないという悩みがあります。
リサイクル工場では、回収した廃プラスチックを溶かし、不純物を取り除いて、ペレットという小さな粒に加工します。このペレットがリサイクル材と呼ばれており、ペレットを加工して製品が作られます。

廃プラスチックからできたペレット

ペレットを製造するためには廃プラスチックが必要ですが、廃プラスチックの排出場所や排出量を知ることができないため、廃プラスチックを十分に回収できなかったり、回収効率が下がったりしてしまいます。その結果、十分な量のリサイクル材を供給することが難しくなってしまうのです。

さらに、廃プラスチックを回収しても、廃プラスチックの種類が不明なものや、安いプラスチックとごちゃまぜになっているものもあります。この場合、リサイクル材に加工しても低価格でしか販売できなくなってしまいます。先程紹介した、製造業の排出側ではリサイクルできるプラスチックが毎日大量に排出されていることも多くのリサイクル工場は知りません。

このような要因から、質の良いリサイクル材の安定供給ができず、経営が困難になってしまうリサイクル工場もあります。

調達側「良質のリサイクル材を安定して調達できない」

最後に、製造業の調達側でもリサイクルに関して悩みがあります。
それは、リサイクル材を製品に使いたいと思っているものの、質の良いリサイクル材を大量に安定的に調達することができないため、実際に使うのが難しいという悩みです。

プラスチックには、PE、PP、PETなどたくさんの種類があります。プラスチックをマテリアルリサイクルする際、複数種類のプラスチックがごちゃまぜになってしまうと、リサイクル材の品質が下がってしまいます。

また、どの種類のプラスチックがどのくらい混ざっているのかが分からない場合もあります。製品によっては使用できる素材に規格が決められているものもあるため、リサイクル材を使用するハードルが高くなってしまいます。

さらに、質の良いリサイクル材を大量に安定的に調達できない場合、製品の価格も乱高下してしまいます。こうした点から、簡単にはリサイクル材を使用することができないのです。

マテリアルリサイクルの現場では、リサイクル材の需要がある一方で、リサイクル材の供給に役立つ情報が企業を超えて共有されていないため、マテリアルリサイクルが進んでいないのが実情です。

大量の廃プラをマテリアルリサイクルするには?

では、毎日大量の廃棄されている廃プラスチックをマテリアルリサイクルするとともに、排出側やリサイクル工場、調達側の全員が安心してリサイクルに関わるにはどうしたら良いのでしょうか?

排出側:排出状況を可視化する

排出側は、まず現在捨てている廃棄物の中にはマテリアルリサイクルできるものが含まれているかもしれないということを知る必要があります。その上で、どんなものならマテリアルリサイクルできて、どんなものだとできないのかを見極めることも必要になります。

そのためにはどんな種類のプラスチックがどれだけ排出されているかをデータとして記録することが必要です。すると、リサイクルできる廃プラスチックの量や、リサイクルによって削減されたCO2量などを可視化することができ、リサイクル可能な廃プラスチックはリサイクル工場に買い取ってもらうことができます。

また、このデータをリサイクル工場に共有することで、リサイクル工場にもメリットがあります。

リサイクル工場:効率よく大量に回収する

リサイクル工場としては、どこでどんな種類の廃プラスチックがどれくらいの量排出されているのかというデータを把握したいというのが本音です。そのため、先ほどの工場で記録されたデータをリサイクル工場に共有すれば、このデータを基に効率的に廃プラスチックを回収し、安定的にマテリアルリサイクルを行うことができます。

排出側では毎日トン単位で廃プラスチックが排出されています。リサイクル工場は、排出側と繋がることで廃プラスチックを大量に回収することができるようになり、リサイクル材を安定的に供給することができるようになります。

さらに、排出時点で入力されたデータを得られることで、どんな廃プラスチックを回収したのかが分かるので、リサイクル工場で生成されたリサイクル材が、どんな種類のプラスチックなのかが明らかになり、品質の担保に役立てることができます。

調達側:品質の担保されたリサイクル材を選ぶ

調達側としては、高品質なリサイクル材を安定的に調達したいというニーズがありました。

調達側は、排出からリサイクルまでのデータを基にしたリサイクル材の詳細を知ることができるので、安心してリサイクル材を購入することができます。

量に関しても、リサイクル工場が廃プラスチックを大量に回収してリサイクル材を作るため、調達側は大量のリサイクル材を安定的に調達することが可能になるのではないでしょうか。

ものづくりの現場で排出される廃プラスチックのマテリアルリサイクルを促進するには、排出時のデータを可視化することが最初のステップとなります。

digglueでは、排出から加工、調達に至るまでの工程で、廃プラスチックのデータを取りながら、需要のあるところへ廃プラスチック・リサイクル材を流通させることで、リサイクルの課題解決と資源循環の実現に取り組んでいます。

最後に

このシリーズでは、今年digglueに入社した新卒社員が、Clean Techとして走り出したdigglue日本のマテリアルリサイクルの現状や製造現場が抱える課題などをお伝えしていきます。このシリーズが、読者の皆さんがリサイクルを改めて考え直す(Rethink)きっかけになってくれたら嬉しいです。
記事とともに、新卒社員の成長も暖かく見守っていただけたら嬉しいです😊

digglueとは?

「テクノロジーで持続可能な世界を実装する」をパーパスに、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現に向けたサービス開発、コンサルティング、システム開発を行うスタートアップ。
コーポレートサイト:https://digglue.com/
公式Twitter:https://twitter.com/digglue

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次回予告

「クリーンテック、資源循環に挑む。」第2回は、排出側・調達側の両方の視点から製造現場が抱える課題からリサイクルを考えていきます。
次回もお楽しみに!
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