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食物アレルギーの予防と離乳食、保育所の対応

こんにちは。管理栄養士のTany.(タニィ)です。
食と健康に関する、小難しい国の基準や法令をわかりやすく伝えています。
今回も食物アレルギーをテーマにしていきたいと思います。

食物アレルギーを予防するためには

日本小児アレルギー学会によると、食物アレルギーを発症するリスクに影響する要因として重要なものがアトピー性皮膚炎で、その他、遺伝的な要因、出生季節などが検討されています。
食物アレルギーを持つとその後の食生活に大きく影響することから、子どもが食物アレルギーにならないために、妊娠中・授乳中のママが特定の食物を除去したり、子どもの離乳期に特定の食物だけ摂取開始時期を遅らせたりする方もいますが、その効果は否定されており、また栄養状態が悪くなる可能性があるためおすすめしていません。
その他の意見もまとまっている表がありますのでご確認ください。

表1 食物アレルギー発症予防に関するまとめ

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https://www.jspaci.jp/allergy_2016/index.html
日本小児アレルギー学会/食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版より

前回のnoteでも食物アレルギーを持つのは0歳児が約30%と一番多く、続いて1歳児、2歳児とお伝えしました。

ここから言えることは、0歳で食物アレルギーになったとしても、成長していく中で解消する可能性が大いにあるということです。

そうとは言いつつもできるだけ子どもが食物アレルギーを持つのは避けたいことです。
そのためにはアレルゲンとなり得る食品(卵や小麦、牛乳など)の摂取を適切に行うことが何より大切です。
子どもの口の運動、消化吸収機能等の準備できていないうちに新しい食べ物が矢継ぎ早に口に入ってくると、身体が対応できず異物認定してアレルギー発症、ということになりかねません。

安心安全に離乳を進めるために

アレルギーの発症を防ぐためには適切な時期に離乳を開始すること、適切に進めることが重要であることをお伝えしました。そこで子どもの授乳・離乳のガイドライン等の紹介をしたいと思います。
2019年に「授乳・離乳の支援ガイド」が改定され、その内容を広く普及するためにわかりやすい資料も多く用意されています。

こちらは医療従事者等も確認する資料のため内容を理解するには難しいかもしれませんが、大元のガイドです。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
厚生労働省/授乳・離乳支援ガイド(2019年改訂版)

このガイドによると、2015年時点ではその10年前に比べて離乳の開始や完了のピークが遅れています。
調査では、離乳の開始時期が「6か月」が44.9%で最も高く、離乳の完了時期が「13か月~15か月」で33.3%となっています。ただしこれはあくまで目安なので、子どもの成長具合を見てじっくり取り組んでいくこととなります。
ガイド内でも離乳完了の時期の目安は「12か月~18か月」と半年の幅を持たせています。

以下の資料は、適切に離乳を開始できるように、かむ力や舌の運動の成長目標、使う食材や硬さなどできるだけわかりやすく具体的に書かれているパパママ向けのリーフレットです。

https://cancerscan.jp/wp-content/uploads/2020/04/75327d0051825be178867df25baa3f68.pdf
厚生労働省/生後5か月からの「離乳スタートガイド」
https://cancerscan.jp/wp-content/uploads/2020/04/b51e8b04f48b85bdd639da27adb075ef-1.pdf
厚生労働省/生後5か月からの「離乳スタートガイド」別添スケジュール(ざっくり)

一つピックアップしてみます。
離乳初期のものです。

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時間のある方は、こちらの動画がおすすめです。離乳の注意点がより詳しく説明されています。
(子どもの離乳食や食物アレルギー対応に携わってきた管理栄養士の方が話しています。)

独立行政法人 環境再生保全機構公式動画チャンネルより
https://www.youtube.com/watch?v=HJsxN-iL7a8
食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方② ~離乳食の基本の進め方~
https://www.youtube.com/watch?v=TvnFHNIHN7g
食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方③ ~食物アレルギーに配慮した離乳食のポイント~

今回は食物アレルギーの話をしつつ、離乳の進め方の情報も紹介しました。
「初めての食材を食べるときは、朝ではなくて昼か夕食の機嫌がいい時を選ぶ。その時はひとさじからにする。」
このような小さなことが、食物アレルギーを防ぐために日々できることです。

我が子が食物アレルギーかもしれない、と思った時は

特定の食物を摂った後に何らかの症状が出てくると、びっくりしてしまうかと思います。食物アレルギーかもしれないと思った時には、自己判断せず、いつ、どんな食べ物を、どのくらいの量食べたか、どんな症状が出たのかなどの記録をつけ、医療機関に相談しましょう。もしかしたら単に体調が悪かっただけなのかもしれませんし、別の理由で症状が出たのかもしれません。

医療機関を受診して食物アレルギーと診断された場合、原因食物の除去食についての基本的な方針は「必要最小限の除去にする」です。
食べられる量(症状が出ない量)を確認して、食べられる量までは食べる、ということです。
なぜなら特定の食物を食べないようにと全部除去すると、その代わりに何で栄養補給するのか?という問題が出てくるからです。例えば牛乳アレルギーと診断された時にはカルシウムの補給源をどうするかを考えていきますが、カルシウムをすべて牛乳以外のもので補給しようとなると、現実的にはとても難しいことがわかります。必要以上の除去をしないでおくことで、栄養補給ができること以外にもメニューの幅が広がったり、気づいたら周りと同じように食べられるようになっていたりすることもあります。

保育所等での食物アレルギー対応

共働き家庭が多くなっていることもあり、年々保育所等に子どもを預ける家庭が増えています。
保育所等は生活の場と位置づけられているため、給食(食事)やおやつの時間があり、基本的にはみんな同じメニューです。
ただし近年食物アレルギーを持ったお子さんが入園することも増えてきたこと、園内で誤食事故が起こっていることがあり、保育所等での食物アレルギー対応のガイドラインが改定されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/000511242.pdf
厚生労働省/保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)

そのリーフレットがこちらです。
https://www.mhlw.go.jp/content/000615694.pdf
厚生労働省/保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版・リーフレット)

保育所運営上の原則は、食物アレルギーが判明した児へは原因食物を完全除去したものを提供します。
これが家庭での食事と保育所とで異なるところです。

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保育所での除去食提供等の対応の流れは以下の通りです。
①保育所等で特別な配慮が必要と判断した家庭に対して保育所等が「生活管理指導表」を配布する
②保護者が児の診察時に医師に依頼し生活管理指導表を書いてもらう
③生活管理指導表の内容をもとに保護者と保育所等で協議を行う

子どもの安全を最優先にどのように給食提供を行うか、緊急時の対応や連絡方法等を確認していきます。食物アレルギーの原因食物が途中で食べられるようになることも多いので、1年に1回は見直しや確認、生活管理指導表の再提出等行っていきます。

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何でもおいしく食べられるのが一番ですが、今は大丈夫でも子どもが食物アレルギーになってしまった時にどのように対処したらいいのかを知っておくと、安心感につながるのではないかと思い、対処内容も含めて書かせていただきました。

以上、参考となれば嬉しいです。

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≪参考資料≫

https://www.jspaci.jp/allergy_2016/index.html
日本小児アレルギー学会/食物アレルギー診療ガイドライン2016 ダイジェスト版

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_04250.html
厚生労働省/授乳・離乳の支援ガイド(2019年改訂版)

https://www.mhlw.go.jp/stf/ninpu-02_00001.html
厚生労働省/授乳や離乳について、令和元年子ども・子育て支援推進調査研究事業「『授乳・離乳の支援ガイド』の普及啓発に関する調査研究」(一般市民向け資料)
https://cancerscan.jp/wp-content/uploads/2020/04/75327d0051825be178867df25baa3f68.pdf
厚生労働省/生後5か月からの「離乳スタートガイド」
https://cancerscan.jp/wp-content/uploads/2020/04/b51e8b04f48b85bdd639da27adb075ef-1.pdf
厚生労働省/生後5か月からの「離乳スタートガイド」別添スケジュール(ざっくり)

https://www.jsaweb.jp/huge/allergic_manual2020.pdf
一般社団法人 日本アレルギー学会/アレルギー疾患の手引き(2020年改訂版)

https://www.mhlw.go.jp/content/000511242.pdf
厚生労働省/保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版)
https://www.mhlw.go.jp/content/000615694.pdf
厚生労働省/保育所におけるアレルギー対応ガイドライン(2019年改訂版・リーフレット)

≪Youtube動画≫
独立行政法人 環境再生保全機構公式動画チャンネルより
https://www.youtube.com/watch?v=14tkQ7_IMXI
食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方① ~食物アレルギーの診断・治療~ 
https://www.youtube.com/watch?v=HJsxN-iL7a8
食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方② ~離乳食の基本の進め方~
https://www.youtube.com/watch?v=TvnFHNIHN7g
食物アレルギーに配慮した離乳食の進め方③ ~食物アレルギーに配慮した離乳食のポイント~

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