【小説】ゲーム屋人生へのレクイエム 67話
2週間以内での転職を決めるために子会社の社長との一騎打ち面接に臨んだころのおはなし
「さあ面接だぞ」
「そうですね。子会社の社長と面接ですね」
「そうだ。履歴書はメールで送ってあるのであとは直接会って話をしたんだ。そうだ履歴書といえばアメリカの履歴書は日本と全然違うんだぞ」
「そうなんですか?履歴書って書いたことないから全然知らないです」
「まず、写真は必要ない。仕事に容姿は関係ないからな」
「どうして日本では写真がいるんですか?」
「どうしてだろうな。能力よりも見た目が大事なのかもしれん。ミスコンのエントリーじゃあるまいし。実にくだらないことだ。
そして生年月日を書かなくてもいい。仕事ができるかどうかが重要で年齢は関係ないからな。性別も書かなくていいぞ。家族構成も必要ない」
「じゃあ何を書くんですか?」
「名前、連絡先、学歴、職歴、特技。職歴には業務で得た成果を具体的に数字を使って書かないといけない。これが一番重要だぞ。
特技は仕事に関連するスキルのことだ。ゴルフとかフルマラソンなどと書いてはいけない。特定のパソコンソフト、例えばパワーポイントとかエクセルとかどの程度使えるのかを書く。決まった書式はないのでレターサイズに2ページくらいにまとめるのが通例だぞ。少なすぎても多すぎてもいけないんだ」
「へえ。詳しいですね」
「履歴書は何度も書いたし、他人の履歴書も山ほど見たからな。では本編に戻るぞ。
本社の社長の了解をもらった翌日に会いに行ったんだ。その社長はゲーム業界に長くいる人で、このAの子会社に入るまでは別の日系ゲーム会社で家庭用ゲームの業界では珍しい女性のセールスをやってたのよ。かなりのやり手っていう事で俺も名前は聞いたことがあったけど会うのは初めてでね。英語での面接も初めてで、緊張の中、面接は始まったのよ。
以下そのやりとり。日本語訳でお楽しみください。
社長「初めまして。履歴書は見せてもらったわ。アメリカに長く住んでいるのね」
俺「はい。もうかれこれ10年です」
社長「ずっとゲーム業界に働いているけど、この業界の何が好きなの」
俺「時代の最先端に常にいる感覚を持ち続けることができるからです」
社長「プロダクトマネージャーの経験があるみたいだけどマーケティングはできるの?」
俺「経験はありませんができると思います。プロダクトマネージングと大きく変わるところはないと思います」
社長「今、この会社ではイギリスの開発会社からゲームボーイアドバンス用の複数タイトルをアメリカ市場で販売する交渉をしているところなんだけれど契約成立にはマーケティングプランが必要なの。あなた、作れるかしら?」
俺「マーケティングプランですか?その開発会社のタイトルってどんなジャンルですか?」
社長「この契約は一年間に5タイトルをリリースする、ということは決まってるけどどんなゲームかは何も決まってないのよ。だからどんなゲームをどう開発するかはこちらから提案するのよ。あなたこのプランを作れるかしら?そのプランを見てあなたの採用を決めるわ」
俺「できます。やります。ご安心ください。それでいつまでに作ればいいんですか?」
社長「期限は二日後よ。できるわよね」
俺「で、で、できま・・・す」
社長「じゃあ楽しみにしてるわよ」
俺「では・・・しつれいします・・・」
続く
この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体とは一切関係ありません