ゲーム屋人生へのレクイエム 93
会社をつぶしたのになぜか気分爽快だったころのおはなし
「会社をつぶした翌日から新しい職場に勤務をはじめたんだよ」
「はやいですね。休めばよかったのに」
「そんな暇はなかったんだよ。新しい勤務先、G社とO社の間に代理店契約を結ばなければならないからね。それが採用の条件でもあったからこれを最優先にしなければならなかったんだよ」
「そうでしたね。社長に宣言してましたもんね」
「そうだ。91話でのはなしだ」
「北米代理店契約を急いで結ばなければならない理由がもうひとつあってね。それはO社がテストに使うゲーム機械を北米に送りたいって言ってきたんだ」
「テスト?」
「そう、ロケテストだよ。たしか24話で説明したぞ」
「ああ、これですね。ずいぶん昔のはなしですね」
「そうだね。三か月も前の話になるね。
それで、テスト機械を北米向けに用意したのでロケテストの準備をして欲しいって依頼があったんだよ。
O社はこのテストにM社に協力を依頼してたから、このMが持つゲーセンの店舗を使ってテストをすることになったんだ。Oは北米事業から撤退してしまったから北米事業を継続しているMにテストも、販売もサービスも委託する契約をすでに結んでいたんだ」
「でもOとMって競合するんじゃないですか?同じゲーム会社ですよね?」
「そう。そのとおり。ライバル関係にあるね。不安はあったけど、まあこの時はうまくやっているように見えたよ。Oからタダで商品を手に入れるMと、Mに販売からサービスまでやってもらえるOとのお互いに補完しあう関係はあれはあれでありかなと思ったよ。
Oとの北米代理店契約も無事に締結してそしてテストの機械が届くころ、Oの開発担当者が北米に出張してくることになったんだ。
企画屋さんとソフト屋さんの二人が2週間の予定で出張してね。
開発のひとたちと直接会って話をするのは久しぶりでいい刺激になったよ。
出張中はゲーセンに張り付きになって朝から晩までテスト機で遊ぶ人を観察するんだ。年齢性別人種とかも記録して、ゲームの内容を直感的に理解できているか、遊んでいるときの表情はどうか、ゲームが終わった時の反応はどうか、またお金を入れてリプレイするか、などなど細かくチェックするんだ」
「へえ。それをチェックしてどうするんですか?」
「出張にはソフト屋さんも同行してるから少しでもゲームが面白くなるように、わかりやすくプレイできるようにその場でソフトを変更するんだよ」
「それで企画屋さんとソフト屋さんが一緒に出張したんですね」
「そう。業務用の開発の面白いところはその場でどんどん対応していいものを作りこんでいくところなんだよ」
続く
フィクションです