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ゲーム屋人生へのレクイエム 105

本社からの製品供給がストップされたころのおはなし

「本社だけに製品供給を依存できない理由がもうひとつあってね」

「どんな理由だったんですか?」

「本社開発は海外向け大型タイトルの開発を受託してたから開発スケジュールの空きがほとんどなくって、どう頑張ってもらっても年間に1タイトルしか子会社向けの開発はできなかったんだ」

「年間1タイトルじゃ全然少ないですね」

「そう。1タイトルでは商売できない。だから本社に商品供給を依存できなかったんだ。本社が供給をストップするという決定をしたことでこっちは開発に遠慮することなく外部の開発会社と交渉ができるようになったんだ。

前回もはなしをしたけど問題は次々とプロジェクトを立ち上げないと会社としては安定した経営ができないという事だったんだ。それで開発タイトルのラインナップを増やすことを考えた。

まず複数の外部の開発会社に企画を持ち込んで制作をしてもらう。そのうえで本社の開発にも制作を依頼する」

「あれ?本社は製品開発できないんじゃないですか?」

「そうだ。本社発の開発はしない。そこで子会社から企画を持ち込んで製品開発を発注するということであればできるんじゃないかって考えたんだ」

「子会社が親会社に開発を発注するってことですか?」

「そう。ふつうは親会社が企画、開発した製品を子会社は強制的と言ってもいい状態で売りつけられる。PS3で赤字を出したタイトルみたいにね。それを子会社からの企画発注にする。しかもプライスプロテクションの心配がない方法でだ」

「プライスプロテクションの心配がないって、そんな事できるんですか?」

「できる。それは小売りを通さないで販売することだ」

「小売りを通さずにどうやって売るんです?」

「オンラインで売ればいい」

「あ!そうか。そうですよね。それがあった」

「当時はオンラインでのゲーム販売はまだ黎明期でね。オンライン向けのタイトルはサイズも小さいし、単純な企画が多かった。今のスマホゲームに近いイメージかな。

まだまだ未知の部分が多かったけど、リスクを取って先鞭をつける事で市場のシェアを確保できるんじゃないかって考えたんだ。

しかもオンラインで販売するだけじゃなくてオンラインマルチプレイのゲームを企画したんだよ。友達同士で同じゲームをオンラインで遊ぶことで販売の促進も狙う。

ただオンラインマルチプレイの技術は難しくて、小さい開発会社では開発は無理だった。幸いなことに本社開発はオンラインゲームの開発を受託した実績があった。この難易度の高い製品開発を本社開発ならできる。他社に先んじてオンラインゲーム市場のシェアを取ってしまおう。そう考えたんだ」

続く

フィクションです





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