【2020–2023年】短編アニメーション映画ごく私的ベスト50
どうにも中途半端なタイミングではあるが、2020s前半の振り返りもかねて、2020–2023年完成の短編アニメーション映画のなかから、ごく私的ベスト50作品を順不同で選出してみた。なお、ひとりの作家につき1作品までとしている。トレーラー/本編のリンクも公開されている範囲で挿入した。あわせて参照されたい。
まず、リストの信頼性にかかわるであろうから、筆者について簡単に紹介しておきたい。ちょうど2020年からアニメーション映画祭の選考に携わり、以降、世界中の新作短編アニメーション映画を年間平均1000作品以上、鑑賞している。2020sの新作に限定するならば、おそらく日本国内でも5指に入る鑑賞数を誇るとおもわれる。むろん、量を鑑賞してさえすればいいと主張したいわけではない。そうではなく、筆者はけっして「初生ヒナ」ではないということだ。
ところで、なぜ「2024年」ではなく「2023年」なのか疑問に感じた読者もいるだろう。その理由は、短編アニメーション映画の場合、ワールドプレミアを応募条件に含める映画祭へ出品する都合上、完成の翌年に初上映を迎える作品が少なくないためだ。
また、わざわざ「短編アニメーション映画」としたのは、このリストでは対象範囲を狭義の「映画」に限定しているためだ。したがって、MVやIDなどのコミッションワークは除外している。
それから、これがもっとも重要な前提なのだが、「ごく私的」と冠するとおり、このリストは筆者の個人的な嗜好に偏っている。つまり、2020s前半の「カノン(=代表作)」を摘要したリストではないということだ(いずれ「カノン」のリストも作成したいと考えているが……)。したがって、このリストを導きの糸にして2020s前半の短編アニメーション映画をわかった気になるのは誤りだ。よくよく注意されたい。リストから漏れている作品のほうが劣っていると考えるのは軽率にすぎる。
とはいえ、なにかしら学びとれるものもあるだろう。このリストでは、筆者の嗜好が色濃く反映された帰結として、「カノン」からはこぼれ落ちてしまうであろう前衛的な作品こそを、むしろ積極的にとりあげている。「アニメーションとはこれこれしかじかな芸術である」というような伝統を重んじる者には不愉快きわまりないリストであろうし、反対にアニメーションの本質とはなにかを批判的に探求する者にとっては──自分でいうのもなんだが──興味深いリストに違いあるまい。
もっとも、「カノン」と形容しうる普遍的な魅力を有した作品も複数選出している。あまり身構えずにチェックしてもらえればさいわいだ。
ちなみに、学生作品には「S」を、近年のシーンを俯瞰する際に陸標となるであろう作品には「☆」を、あまりにもユニークすぎる作品──あるいは問題作──には「★」をつけている。こちらもあわせて参考にされたい。
①Lizard Ladder ★
(Ted Wiggin、アメリカ、2020年)
②Au bord ★
(Sylvie Denet、フランス、2020年)
③Wood Child & Hidden Forest Mother
(Stephen Irwin、イギリス、2020年)
④ホッキョクグマすっごくひま
(山村浩二、日本、2021年)
⑤The Mistress of the Copper Mountain ★
(Dmitry Geller、ロシア、2020年)
⑥Ardent Other ★
(Alice Brygo、フランス、2022年)
⑦十二月
(周小琳、日本゠中国、2020年)
⑧Abandoned Village ★
(Mariam Kapanadze、ジョージア、2020年)
⑨Ecorce
(Samuel Patthey & Silvain Monney、スイス、2020年)
⑩The Wild Cow ★
(Tom Schroeder、アメリカ、2021年)
⑪DING ★
(Malte Stein、ドイツ、2021年)
⑫Easter Eggs
(Nicolas Keppens、ベルギー、2020年)
⑬Flowing Home
(Sandra Desmazieres、フランス゠カナダ、2020年)
⑭HIDE
(Daniel Gray、カナダ゠フランス、2020年)
⑮飯縄縁日
(榊原澄人、日本、2021年)
⑯ガスー
(ひらのりょう、日本、2021年)
⑰Night Bus ☆★
(Joe Hsieh、台湾、2020年)
※IMDbでは2019年完成となっている。が、各映画祭では2020年。映画祭の作品データは、原則、ディストリビューターの申告にもとづく。なので、ここでは映画祭のほうを信用した。
⑱ORDERS ★
(Aleix Pitarch、スペイン、2020年)
⑲Something in the Garden
(Marcos Sánchez、チリ、2021年)
⑳Squirrel Fulfillment ☆★
(Xi Chen、中国、2020年)
㉑Steakhouse
(Špela Čadež、スロベニア、2021年)
㉒The Fourth Wall ☆★
(Mahboobeh Kalaee、イラン、2021年)
㉓ミニミニポッケの大きな庭で
(幸洋子、日本、2022年)
㉔Chimes Era #1.2 : the Seat in Judgment (Assessment following the sacrifices of CE #1.1 : the Benching). ★
(Paul Jacques Yves Guilbert、ベルギー゠フランス、2020年)
㉕変形して奇形する S
(中澤ふくみ、日本゠エストニア、2021年)
㉖On Time Off Time
(岩崎宏俊、日本、2020年)
㉗Backflip ☆★
(Nikita Diakur、ドイツ゠フランス、2022年)
㉘半島の鳥
(和田淳、フランス゠日本、2022年)
㉙Green S★
(Karolina Kajetanowicz、ポーランド、2021年)
㉚Bestia
(Hugo Covarrubias、チリ、2021年)
㉛Los Huesos ☆
(Cristóbal León & Joaquín Cociña、チリ、2021年)
㉜Lantern Room with Stairset and Sky ★
(Eric Ko、アメリカ、2022)
㉝Sliver Cave ☆★
(Caibei Cai、中国、2022年)
㉞Tiger Stabs Tiger ★
(Jie Shen、中国、2022年)
㉟Swallow the Universe ★
(Nieto、フランス、2021年)
㊱The Debutante
(Elizabeth Hobbs、イギリス、2022年)
㊲The Flying Sailor
(Wendy Tilby & Amanda Forbis、カナダ、2022年)
㊳ZOON S★
(Jonatan Schwenk、ドイツ、2021年)
㊴The Loach
(Chen Xi & An Xu、中国、2022年)
㊵Wander to Wonder
(Nina Gantz、オランダ゠ベルギー、2023年)
㊶HYSTERESIS
(Robert Seidel、ドイツ、2021年)
㊷A Kind of Testament
(Stephen Vuillemin、フランス、2023年)
㊸Eeva
(Lucija Mrzljak & Morten Tsinakov、エストニア、2022年)
㊹Epicenter ★
(Hahm Heeyoon、韓国、2022年)
㊺Compound Eyes of Tropical ☆
(Zhang Xu zhan、台湾、2022年)
㊻Ghost of the Dark Path ☆★
(Fish Wang、台湾、2023年)
㊼みじめな奇蹟
(折笠良、フランス゠日本゠カナダ、2023年)
㊽Scale
(Joseph Pierce、フランス゠イギリス゠ベルギー゠チェコ、2022年)
㊾Hardly Working ☆★
(Total Refusal、オーストリア、2022年)
㊿Such Miracles Do Happen S
(Barbara Rupik、ポーランド、2022年)
以上。
もしもこの記事を興味深いと感じたら、「チップ」機能で支援してもらえると、今後、同様の記事を執筆する際のモチベーションになります。