メロコアがダサくなった理由【後編】
前編からの続きです。前編ではメロコアが流行っていた当時の熱や流行った理由を僕なりに書きました。そして、なぜ今「メロコア」という言葉がダサくなったのか。その思いを100%主観で書こうと思います。
ちなみに、セゴリータ三世さんは「バンド内の金トラブル」と「ファンのアンチメジャーな気持ち」という2つを挙げていて概ね同意です。「」ないのタイトルだけだと語弊ありそうなので、実際にセゴリータ三世さんの動画を見た方が良いと思うので、みてください。
前提としてメロコアはパンクの言い換え
そもそも論として、メロコアというのはパンクロックの言い換えです。ある日突然現れた音楽スタイルではありません。確かに日本では新しいスタイルではありましたが、速い、キャッチー、ストリートカルチャー、カジュアルなファッションというメロコアの条件とされるようなものを満たしていたバンドは、80年代後半から既にいました。例えばDESCENDENTS、例えばBAD RELIGIONとかです。
90年代の日本では「パンク」は汗臭くでダサいものでした。GLAYやラルク、ミスチル、スピッツなどがもてはやされる時代では当然だと思います。でもその間、パンクロックが死んでいたわけではありません。ハイスタンダードは密かに結成され、フルーティーはオペレーションアイヴィーよろしくな音をシーンから無視されながらも鳴らし続けました。
そして、「パンクという死語」に代わり「メロコアという言葉(ジャンル)」が認知されたのです。平たくいえば、音楽の中身と本質は同じだけど、パンクというパッケージだとダサいからメロコアというパッケージに刷り直したわけです。
パンクと切り離されたメロコア
メロコアという言葉は、パンクロックが世間から注目を集める良いキッカケになりました。しかし同時に、新しいリスナーは皆こういう感覚でした。「俺たちが聴いてるのはパンクなんていうダサい音楽じゃなくて、メロコアというカッコいい音楽」。
前編では「◯◯はメロコアだけど、これは違う!みたいな思想ごっこが楽しかった」という趣旨の話を書きましたが、不幸にも、こういう楽しみが「パンクとの分断」を促進させたのだと思う。
筆者の主観という前提で書くので容赦してほしいのだが、ハイスタの台頭以降、メロコア世代のバンドはたくさん生まれました。生まれたが、ことごとくクソでした。速い、キャッチー、ストリートっぽい、カジュアルなイメージ。条件を揃えてはいるのだけど、何一つとしてパンクではなかった。実際に友人から聞いたのは、「パンクってうるさいだけじゃん。メロコアはカッコいい」と。つまり、あくまで「メロコア」というパッケージで販売されるバンドが量産され、「とりあえずメロコアなら」売れていた瞬間が確かにあったわけです。
「メロコア」はギャル語と同じ
冒頭で「メロコアはパンクの言い換え」と書きました。メロコアはただの言葉です。パンクを隠すための言葉でしかありませんでした。
「チョベリバ」という言葉を知っているだろうか。これは昔使われていたギャル語です。超ベリー・バッド、つまり「超ムカつく」をもとにしたギャル語です。もちろん、その言葉はもう使われていません。理由はギャル以外に大きく広がり、ギャルから飽きられ、ダサくなったからです。今はもう、同じ意味にの別の言葉が使われていることでしょう。
メロコアも同じだと思います。極端に一般で消費されるようになり、パンクというバックボーンを持たない人たちにも広がった。オーディションで誕生したバンドすらいたし、アイドルがとってつけたようなメロコアソングを歌ったこともあった。メロコアがお茶の間で過度に消費された結果、単純に飽きられた。それに尽きると思います。
パッと生まれた造語は、パッと飽きられて捨てられてしまうわけです。メロコアという言葉は、ブームを作ることはできたが、定番にはなれなかったということです。
メロコアは死んだけど生きてる
さて、メロコアは死にました。でも、繰り返しになりますが、メロコアはただの言葉だと思います。速い、キャッチー、ストリートカルチャーとの親和性など、ワクワクさせてくれるカッコいいパンクバンドは、フェイクじゃない限り健在です。
「チョベリバ」は無くなりましたが、「超ムカつく」という言葉も感情も残っていますよね。そういうことです。メロコアと称されていたバンドたちは、パンクロックという本来の家に戻りました。パンクロックのシェアは多分だいぶ冷え込んでると思いますが、以前と同じに戻っただけです。
今はマンウィズとか、ワンオクとか、すごく盛り上がってますよね。彼らは決してメロコアと言われることはないけど、当時活動していたら確実にメロコアと言われていたと思う。望まなくても。
メロコアはダサいけど、ダサいのはその図らずも流行ってしまった言葉や一過性で登場した曲たちというだけ。音楽性がダサいわけじゃない。本物は残ってる。
ちょっと話がゴチャゴチャしちゃいました。あんまりダサいダサいと書くと、メロコアや当時のムーブメントを大切な思い出にしている人がたくさんいる中で心苦しいのだけど。うん。(僕はそういう呼び方が気に入らなくて当時から頑なにパンクロックと呼んでいたw)
本当はもっとね…もっと細かいことたくさんあるんですけど、まとめる自身がないのでやめておきます。
流行りすぎてダサくなった。という僕なりの視点でした。おしまい!
最後に、あんまり「メロコア」のイメージないかもしれませんが、僕が中高生のころに夢中になったスケートビデオ411に使われていたBLINK182の曲でもつけておきます。
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