公務員の老後資金を考える
以前に、公務員の年金というnoteで、公務員の年金がどのようになっているのかをまとめました。しかし、公務員の年金の仕組みが分かっても、結局、年金をはじめとした65歳以降の収入で老後を慎ましくでも暮らしていけるのか心配です。
また、FPの勉強の一環として35歳から創る自分の年金(是枝俊悟著)や知らないと損する年金の真実(大江英樹著)を読み、老後の資金繰りについて興味がわきました。
実際のところ自分の老後はどのように生活するのか、誰かから相談を受ける前に自分の老後を考えてみようと、自分の年金について具体的に試算し、支出と突き合わせて、老後破綻が起きないか調べてみることにしました。
1 老後もらえる収入はどれくらい?
老後の収入は年金が中心になります。公務員の年金は基礎年金、厚生年金、退職等年金給付の3階建てになっており、それぞれもらえる額が異なります。
基礎年金は20歳になってから60歳まで、必ず支払うものです。厚生年金と同様に給料から天引きになっており、上限の40年間支払い続けると、約79万円がもらえることになっています。
厚生年金は、サラリーマンや公務員など給料をもらっている人が支払うものです。厚生年金は上限が決まっておらず、天引きされた額が多ければ多いほど、長く働けば働くほど、後にもらう年金額も高くなります。
退職等年金給付は公務員独自の制度です。企業における企業年金のようなもので、毎月一定額(1~2%)が給与から引かれて退職まで積み立てられ、退職した際に、それまでの運用益とともに支払われることになります。
以上の3階建てで公務員の年金は構成されており、具体的にもらえる予定の額は計算でも出すことができますが、地方公務員共済組合連合会に登録すれば、将来の年金の見込み額をすぐにサイトで知ることができます。(公務員はねんきんネットでは基礎年金の額しか分かりません。)
実際に自分のを確認すると、基礎年金と厚生年金は以下のとおりです。
基礎年金:約79万円
厚生年金:約128万円
合計:約207万円(今の給料のまま60歳まで勤め上げた場合)
退職等年金給付は、自治体のイントラネットの職員厚生課のサイトで確認することができ、年間23万円ほどの支給があるようです。つまり、私一人の年金額はおよそ230万円です。
これに、妻の基礎年金が加わります。妻は今は第三号保険者ですが、10年以上の給与所得者でもあったため、厚生年金も入りそうです。このまま再就職せずに年金をもらった場合、基礎年金と厚生年金合わせて90万円をもらえそうです。
夫婦合計で、今のまま働き続ければという条件付きですが、年金で320万円の老後収入がありそうです。
2 老後の支出はどれくらい?
老後の生活費は現役時代のおよそ7割だと言われることが多いように思います。
参考
FPと税理士が考案「本当に必要な老後資金」がわかる、すごい"エクセル術" 見える化で漠然とした不安が消える (3ページ目) | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
自分の老後資金を計算してみよう!「人生設計の基本公式」再説 | トウシル 楽天証券の投資情報メディア (rakuten-sec.net)
65歳となれば子どもも独立していて教育費がかからなくなることやアクティブな趣味を選ばなくなること、住宅ローンを支払い終えている人が多いから老後生活費は7割と減るのだと思われます。
わが家の税金等を抜いた昨年の純生活費が340万円でした。これに0.7をかけると、約240万円です。大体月20万円が、老後の支出の目安になります。
一方で、これは生活のために最低限必要な費用であるため、ゆとりを求めると、もう少し支出がかさみます。生命保険文化センターの調査によると、「ゆとりある老後生活費」の金額で一番多かった回答は30万~35万円でした。
「ゆとりある」は人によって異なると思いますが、退職をすれば仕事に行かなくなり、時間に余裕が生まれ趣味等に精を出すことになるかもしれません。その場合は予想以上に出費があるでしょう。
ゆとりのために月10万円を上乗せすると、支出額は年間で360万円です。収入と比べると40万円の赤字です。
3 足りない分をどう賄う?
ゆとりはないよりあった方が良いでしょう。足りない分を賄う方法を考えると、初めに思い付くのはiDeCoです。
iDeCoは自分で金融商品を選んで掛金を拠出して運用します。 掛金とその運用益の合計額を老後に受け取ることができる上に、毎月の掛金が所得税等から控除されたり、受け取るときの運用益が非課税になったりと、様々な税制上の優遇措置が講じられています。
公務員の拠出限度額である年間14.4万円を30年間積み立てた場合、運用益と合わせて、およそ800万円を受け取ることができます。
64歳でiDeCoによる年金を受け取ったとして、男性の平均余命が64歳だとおよそ20年です。800万円を20年で割ると40万円、ちょうど赤字の分を賄うことができます。
なお、平均余命は男性の方が4年ほど短いので、遺された妻がのことを考えると、老後に4年分の年間生活費が賄えるネット加入の生命保険に入っておけばよいと思っています。生命保険の保険金は一定額まで相続の際に非課税にもなり、相続のことを考えても有効です。
まとめると
基本的な生活費は夫婦二人分の年金で賄うことができる
ゆとりある生活を行うために早めにiDeCoに積み立てを行っておく
この二つだけで今のところ老後の心配はなさそうに思います。
4 本当にそう上手くいくのか?
一方で、この仮定は、物価が今の水準であることを前提にしています。私が年金をもらうであろう30年後は現役世代の賃金が上がっており、その分物価も上がっているはずです。
年金の額は自分でコントロールができないため、物価が上がってしまえば、自身の購買力が落ちて、必要なものを買えなくなる懸念があります。
ただし、国もその懸念に対処しています。財務省が公表している財政検証では、年金の所得代替率を出しています。所得代替率とは現役世代の手取り収入に対して、給付される年金がどの程度購買力があるかを示す割合です。
例えば、2019年は現役世代の平均手取り収入が35.7万円で、夫婦の年金は22万円です。22÷35.7≒61.7%となり、現役世代のおよそ6割を年金で得ることができ、国は、この所得代替率を将来的にも50%を下回らないことを目標にしているようです。
財政検証では、これから30年間日本が全く成長しない(実質成長率0%)かなり悪い想定でも、年金の所得代替率は50%を確保しています。ただ、2019年と比較すると2割ほど年金の実質額が減ることになるようです。
わが家の場合だと、2割減った年金額だと約260万円です。実質成長額が0%ならばインフレの心配はなさそうなので、必要生活費は変わらず240万円とすると、これでも何とか生活はできそうです。
また、iDeCoの運用は海外株式を中心にしているため、日本が成長しなくてもある程度の収益性は期待できそうですし、ゆとりあるとはいかずとも、衣食住に困るということはなさそうです。
ただ、2019年の検証のためコロナの影響は加味されていないですし、少子高齢化は予想以上に進んでいます。財政検証は5年おきであるため、来年また年金の所得代替率が更新されるはずですが、もしかするとさらに悪化しているかもしれません。
ただ、これは自分ではコントロールできないことなので、今できることは
・一年でも長く働いて将来の年金額を高くすること
・iDeCoに加えつみたてNISAなどの税制優遇制度を使って将来に備えること
・退職金は将来のバッファとして考えてあてにしすぎないこと
来年の財政検証で大きく見通しが変わるかもしれませんが、一般的な公務員でも最低限の生活費は賄えそうなので、iDeCoをやっていないなど全くのノープランでなければ、老後の収支は常にプラスとはならずとも貯金が底をつくということはないのではと思います。
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