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選ばれる自治体2024

昨年のことですが、12月22日に国立社会保障・人口問題研究所が「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」を公表しました。
日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)|国立社会保障・人口問題研究所 (ipss.go.jp)

推計結果のポイントでは以下のように述べています。
・2050 年の総人口は東京都を除いたすべての道府県で 2020 年を下回り、秋田県など 11 県では 2050 年の総人口 が 2020 年と比較して 30%以上減少する。
・2050 年の総人口が 2020 年より減少する市区町村数は1,651(1,728市区町村数の95.5%)で、うち0~3割減少するのが605(同35.0%)、3~5割減少が705(同40.8%)、5割以上減少が341(同19.7%)となっている。

都道府県レベルでは総人口が東京を除く全ての道府県で減少し、3割以上減少する県も11県あり、市町村レベルになると95%の市区町村で人口が減少し、半分以下となる市区町村も2割あるということで、なかなか衝撃的な内容です。

そのため、報道はどこも悲観的な内容が目立ちます。
<社説>地域の人口減少 暮らしの基盤が揺らぐ (msn.com)
栃木県内15市町、50年に高齢化率4割超 東部で顕著、地域差拡大 社会経済維持課題に 厚労省推計|県内主要,政治行政,社会|下野新聞「SOON」ニュース|下野新聞 SOON(スーン) (shimotsuke.co.jp)
2050年の地域別将来推計人口、46道府県で2020年下回る推計公表 厚労省(テレ朝news)|dメニューニュース(NTTドコモ) (docomo.ne.jp)

人口減少の主な理由は少子化です。婚姻数の減少や教育費用の増加などから子どもが減ります。そして子育て世帯は、仕事や子どもの進学等を考慮して東京や大阪など大都市へ流入するケースが多いようです。

ただ、そのような中でも東京や大阪以外で人口を伸ばし、2050年になっても総人口が減らない市区町村もあります。

代表はやはり千葉県の流山市です。2020年の総人口を100としたときの2050年の総人口指数は120.9と東京都中央区に次ぐ全国第2位の伸びです。30年近くなっても人口が減らない理由はやはり、子どもの数が増えているからだと言えます。

様々なメディアでも取り上げられていますが、流山市は「母になるなら、流山市。」「父になるなら、流山市。」として、ターゲット層を絞って子育て世帯の移住を積極的に呼びかけて、子どもの数を多く伸ばしています。
母になるなら、流山市。父になるなら、流山市。|地域ブランドNEWS (tiiki.jp)
だから6年連続人口増加率1位の街になった…流山市長が「駅前再開発」で何よりもこだわったこと - ライブドアニュース (livedoor.com)

今回の調査でも、流山市における子ども(0歳~14歳)の数の増加は目立ち、子どもの数が31,444人(2020年)から34,674人(2050年)と、東京以外では唯一1.1倍以上に増加する市区町村という結果を出しています。

調査を見ると、そんな流山市と同様に、東京大阪以外で、子どもの数を伸ばしている市区町村はいくつかあります。

今回は、ネクスト流山市ではないですが、子育て世帯に選ばれていそうな自治体をnoteにまとめておきたいと思います。

1 印西市(千葉県)

流山市と同様に都心へのアクセスを生かして、積極的に子育て世帯を呼び込んでいるのが印西市です。都心の日本橋駅まで最短40分、東京駅周辺で働く方にとって十分通勤できると思える距離感です。
市の概要 | 印西市ホームページ (inzai.lg.jp)

都心へのアクセスがしやすい市町村であれば東京に隣接する4県をはじめとしていくつもある中で、なぜ、印西市が目立っているのか。都心に通うための利便性以外にも理由がありそうです。

大きな理由は、下記の記事にもあるように、国内外の企業を積極的に企業誘致し、そこから得た税収を子育て施策に還元していることのようです。
千葉・印西市の板倉市長、企業誘致で税収増 子育て支援 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

印西市の市の概要にもある通り、印西市は都心に近いだけでなく、国内最大級の空港である成田空港にも電車でわずか20分という立地の優位性があります。加えて、市の周りは沼や利根川に囲まれていながら、市の大部分は関東ローム層が厚く堆積し平坦な台地となっています。

そこに、国内外の数多くの企業が目をつけて、データセンターの集積地帯となっているようです。災害のリスクが低く、アクセスが良い割に平坦で土地を大規模に確保できることから、建設ラッシュが起きています。
なぜグーグルが印西市にDC設置?注目の千葉ニュータウン中央駅、どんな場所? | ビジネスジャーナル (biz-journal.jp)
千葉・印西で巨大データセンターの建設ラッシュ、クラウド大手をひき付ける秘密 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
NTTと東電がデータセンターで新会社 千葉・印西市に開設へ 生成AI需要見込む - ITmedia NEWS

データセンターが蓄積すれば、そこから固定資産税が徴収できるほか、雇用が生まれ、人が集まってきます。印西市の令和4年度の決算資料の歳入欄を見てみると、地方交付税は減になり、市税収入は10%の増加と理想的な状況です。
決算審査特別委員会資料 (inzai.lg.jp)

増額した税金は市民のために使用できます。先ほどと同じ資料に歳出の欄もありますが、人件費などの義務的経費の割合が減って投資的経費の割合が増えています。その投資的経費は市内の中学校や小学校の施設整備改修事業に利用されており、子育てしやすい市への更なる投資が図られています。

そんな印西市の14歳未満の人口推計は
16,797人(2020年)→17,508(2040年)→17,451人(2050年)と、2020年からの20年間で大きく数を伸ばすことが想定されているようです。

95%以上の市町村が人口を減らす中、特に14歳以下の子どもの数を5%近くも伸ばすとされており、近隣の流山市と同様に、選ばれる自治体となっています。

2 大山崎町(京都府)

大山崎町は上記の印西市と比べて人口の少ない町です。2020年時点の人口は15,953人で、14歳未満に限定すると2,338人と印西市の七分の一ほどです。

しかし、この町は割合でいえば、印西市にも負けないくらいの勢いで、人口が増加しています。特に25歳から35歳の流入が多いようです。

市の人口ビジョンによると、平成18年(2006年)の15,280人を底に、人口は上昇トレンドを描いており、20年弱で5%の増加です。

しかもその増加は働き盛りの世代の流入に支えられており、若い世代が定住して家族を持ったことで、大山崎町の令和元年の合計特殊出生率は1.85(日本全体は1.34)と他の市町村を大きく引き離しています。

この町が働き盛りの世代に選ばれている理由も、立地の面が大きいように思えます。京都駅までは電車でわずか15分、大阪駅からも25分です。

町にインターチェンジもあり、名神高速道路、京滋バイパス、京都第二外環状道路と主要な道路からのアクセスも良く、大阪や京都から鉄道・車いずれもアクセスしやすい立地となっています。
大山崎町へのアクセス/大山崎町 (town.oyamazaki.kyoto.jp)

若い世代は住むにあたって雇用をまずは気にします。働かなくては食べていけません。テレワークがあると言っても万人が毎日使えるはずもなく、可能な限り通勤先は近くて通いやすいところから選ぶはずです。

通勤環境が良ければおのずと通学環境も良くなります。京都駅や大阪駅から近ければ、主要な大学へのアクセスも容易であり、「子どものために引っ越そう」とは思わなくなって教育面から見てもメリットは大きいです。

また、大都市に寄りかかるだけでなく、町自体にも電池や光学部品の製造販売を行っている東証一部上場企業のマクセル株式会社の京都本社があるほか、東洋製鉄株式会社の工場など、町自体の産業も力強いものがあります。

そんな大山崎町の昨年度決算を見てみると、町税収入は増加し、自主財源(町税などの町が自主的に収入できるお金)の割合は50%強で、財政規模に対する借入金の割合である実質公債費比率も危険水域の18%に基準を大きく下回り、年々割合も減っています。
令和4年度決算(令和5年11月13日更新)/大山崎町

町税収入もしっかりと住民に還元しており、橋梁の長寿命化や町立学校の給食等整備事業など、しっかりとやるべきことをやっている印象です。

そんな大山崎町の14歳未満の人口推移は
2,338人(2020年)→2,442人(2040年)→2,320人(2050年)です。
30年後も安定して人口をキープできており、関西の中でも目立つ存在なのではないかと思いました。

3 まとめ

今回、国立社会保障・人口問題研究所が日本の地域別将来推計人口を発表したときに、個人的に目を引いた自治体が印西市と大山崎町でした。

2050年になっても、年少人口数が変わらないまたは増加する自治体はほんのわずかしかなく、その多くは東京や大阪など区が中心です。

もちろんそうした大都市の他にも人口を伸ばしているまたはキープしている市町村もありましたが、都道府県の中で移動した先のものであることが多く、この2自治体は他の都道府県の若い世代からも選ばれて定住している様子が伺えて、同じ公務員として非常に参考になりました。

きっと、少子化は死活問題であり、人口を伸ばそうと必死に取り組んでいる自治体も多くあります。もちろん立地の優位性はありますが、そこに胡坐をかくことなく、得た成果を積極的に住民に還元している姿も非常に好感が持てます。

自分の自治体は何をやるべきか、今年もしっかり考えていきたいと思います。

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