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30代公務員の進む道

初めて異動することになった時や初配属された時、どういった感想を持ったでしょうか。新入社員や初めての異動の時は、とても緊張しますが、ワクワクしていたと思います。

私も、もう15年も前のことですが、入庁式の際、初めての配属先を首長から告げられたときは、どんな仕事をするか、全くわからなかったのですが、高揚感があったことをしっかりと覚えています。
 ・どんな人と何の仕事をするのだろう?
 ・早く仕事を覚えないと!
 ・優しい人が周りに多いといいなあ

異動が1~2回目の時は、新しい環境への期待や希望がある一方で、30代半ばになると異動に対して、ワクワク感はなくなってきます。
 ・また根回しのための工程表作成するのか
 ・似たような内容の要望への回答かな
 ・どうせ少し額が上下する程度の予算編成作業

4~5カ所目の異動になると、「まっこんなことをやるのだろう。」と何となく想像がつくので、とりとめもないことを考えながら人事異動を待つことになります。

もちろん、一緒に働く人は重要なので、同僚に恵まれるといいなとは思いつつも、仕事に対しては、飽きや慣れ、徒労感といったものがついてきます。新入職員の時とは、対角線にあるものです。

そして、年数が経つにつれて、心の中にある疑問が大きくなってきます。
「もしかして10年後も似たようなことをやっているのではないか?」

今回は、自分と同じ30代の公務員は、今後どんな道があるのか考えていきたいと思います。

1 なぜ同じことの繰り返しなのだろう?

私は、公務員が黒子であるからだと思います。

公務員は全体の奉仕者であり、所属する社会(自治体)がうまく回るように日々支えていくことが役割です。9割は昔から行われたことを繰り返し、裏方の作業に日々従事します。

残りの1割ですが、新規の予算がついて、新たな取り組みを行うことがあります。しかし、その一割も、国から示されたガイドラインの通り行うものや、近隣の自治体に連絡を取って、歩調を合わせながら行うものが大半です。

進歩的な自治体が、独自のスタイルを見せることもありますが、それも住民に伝達するのは首長であり、議会との公開の場での討論の末に、実行に移されます。

つまり、光が当たるのは常に首長か議会であり、公務員はどんな階級であろうとも、ほぼ裏方の作業に徹して、表には出てきません。

支える仕事、裏方の作業は、大抵が地味で同じような業務であることから、同じような仕事が、ずっと続くように思えます。

2 これからもずっと続いていくのか。

「裏方に徹する。」
文字にすれば短いですが、とてつもなく難しいことです。

誰もが承認欲求を持っていて、自分の仕事を認められたいと思っています。
・建設者であれば、自分が携わったビルや建築物が形として残ります。
・福祉職であれば、利用者からの感謝の言葉で報われることがあります。
・営業職であれば、売上高という数字で成長を実感するができます。

もちろん全ての仕事に、それぞれの辛さや苦労があります。ことさらに公務員が大変というわけではありません。ただ、公務員としてずっと裏方に徹するのは簡単ではなく、とてつもない自制心が必要です。

前もnoteに書いた通り、公務員は先読みがしやすい職業です。自分のキャリアも何となく想像がついてきます。40歳であれば、係長となり、今自分が行っているような業務をチェックする立場になるだろうと予想ができます。

今、35歳としたら、定年まで残り25年間働くことになります。「ずっと似たようなことをしている。」という思いを抱えたまま、走り抜けられるでしょうか。

3 これから進むであろう4つの道

自分が報われるような仕組みを整える必要があると思います。私は、多くの人が以下の4つの道のいずれかを選択していくのではないか、40代~50代の上司にあたる方々もいずれかの道に属しているのではないかと考えます。
 ・現状維持
 ・専門性を磨いて職人となる
 ・外に希望を見出す
 ・出世競争に身を費やす

全部が全部当てはまるわけではありませんが、「自分は今、この道に進みたい。」「今後はこうしたい。」と腹落ちしてから進むことで、日々の業務に対する見方も変わってくるのではないかと思います。

① 現状維持

高くを望まないタイプです。「不安定なこのご時世、職があるだけありがたい。」と謙虚に業務に励んで、穏やかな日常を過ごします。多くのことを求めないために、予想外のことが少なく、波乱がほとんどありません。

この道を行けば、目立たずに、淡々と業務を行うため、劇的に評価が高くなるわけではありませんが、悪目立ちもしないために、とても安定しています。

新規の仕事を頼まれても、基本はあまり受けず、日々のスケジュールに、同じような項目が並び、少しずつですが、給料が増えていくといったルートになります。

「早く帰りたい。」「私生活を充実させたい。」といった人には向いており、給料をもらうこと、安定した生活を送ることで報われると実感が持てるのであれば、このルートは良いと思います。

日々同じような仕事をひたすら続けることになったり、年齢が上がるにつれて年下の上司のもとに配属されることになるなど、高い自制心が要求されることになることにもなります。

② 専門性を磨く

自分の自治体で求められている専門性に活躍の場を見出すタイプです。
・自分に向いているのは産業労働分野の予算編成
・教育関係の人事領域を掘り下げていきたい
・水道事業の特別会計の経験が豊富 など
人に負けない分野をもっているため、特定の部局に必要とされ続けることになります。

このルートの場合、30代の早い時期、できれば20代の後半には、自分の得意分野を自覚したうえで、周囲に上手くPRしていく必要があります。

人事異動の際に、得意なことしっかりと伝える、自己評価の際に実績を事細かに書くなど、周囲の評価と自分の実績をしっかり一致させておく必要があり、ある程度の準備期間が必要となります。

一方で上手くいけば、自分が苦も無くできることをしているだけで評価が上がり、給料や人事にも反映されてきます。そして、得意なことを行っていると、日々の業務のストレスが少なくなります。自分の裁量で自由に業務を動かせる幅が大きくなるからです。

結果として、「自分の好きなことが、組織の役に立っている。」という満足感を得ることができます。

このルートのリスクは、外部環境です。自分の得意なことを評価しない人が上司となった場合、自分はこうしたいのに、上手くいかない、評価もされないと、困難に直面することになります。

③ 出世競争に身を費やす

ともかく「仕事」をして、出世することに意義を見出すタイプです。
激務に身を置いて、仕事を頼まれれば積極的に引き受けて、繁忙とされている課を人事異動で希望し、飲み会というにも必ず顔を出すという、自分自身をブラック会社化することになります。

推奨はできませんが、高い確率で自分の能力は上がり、周囲の覚えもめでたくなります。結果、一目置かれる存在となって、出世もしやすくなります。

皆が皆望んでそうなるわけではないですが、俗に言うエース級職員となり、経歴を見れば、大変な職場ばかりを転々として、他局の幹部までが「ああ、●●さんだよね。」と注目されるようになります。

個人的には、出世がすべてだとは思いませんが、出世した先にしか見えない景色は必ず存在することは理解しています。出世の結果得た肩書は、誰かに認められたという証であり、上に行けば行くほど、今までの苦労が報われたという実感を大きくするのではないでしょうか。

一方で、リスクもあります。プライベートを犠牲にしがちになるため、心身の負担が大きくなること、そして、評価は運も左右するため、評価されなかったときに、どう自分の中で折り合いをつけるかが難しいところです。

④ 外に希望を見出す

副業・転職・課外活動など、新しい世界に目を向けるタイプです。
①の現状維持とも似ていますが、もう少し野心的な面があります。今の仕事に魅力を感じなくなっているのは、事実なので、そこを受け止めて新しい収入源や夢中になれるものを探すタイプです。

投資でも英語でも、ボランティアでも、何か面白そうだと思った新しい刺激に手を付けて、それを楽しむと、日常生活に新たな彩りが加えられます。

②の専門性が、公務員の世界の中で生きていくために力を磨き、満足感を得ようとするのに対して、このルートは外で、自分が報われる道を探します。

公務員という世界では当たり前と思っていたことが、通用しなかったり、安定した場所から不安定な場所に身を投じるだけでも新鮮で、冒頭に合った飽きや慣れを吹き飛ばしてくれるでしょう。

公務員を辞める、転職するというわけではなく、副業扱いとならない投資を始めてみたり、ボランティア活動や勉強からスタートしてみてもよいかもしれません。いずれも今まででは得られない充実感を経験できるかもしれません。

このリスクは、元に戻れないことです。すべてがうまくいって、黒子としての自分でなく、スポットライトが浴びれる場で活躍できることがわかったら、公務員として再び全力投球することはもうできないでしょう。

本人が望むのであれば、外野が口をはさむことではありませんが、転職という選択肢も、結果として視野に入ってくるようになります。

4 まとめ

どのルートを進むにしても、間違いではなく、貴賤があるわけではありません。大事なことは自分の人生をどうやって充実させるかであり、どのルートを選んだとしても叶えられます。

さらに言えば、どの人もいずれかのルートに当てはまるわけではなく、私自身も②と④の間にいるなと(ここまで書いておいてなんですが)思っています。

いずれにしても、日々の業務や生活から、飽きや徒労感をなくして、自分自身が気持ちよく過ごすために、この先、どういったスタンスで仕事をすればいいか、そんな指針を考える一助になれば幸いです。

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