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高齢になった時の生きがいについて

この間、仕事で令和6年度の高齢社会白書を読んでいたのですが、今更ながら、65歳以上の就業率の高さに驚きました。
令和6年版高齢社会白書(全体版)(PDF版) - 内閣府 (cao.go.jp)

65歳~69歳の就業率は、令和5年は53.5%と半数以上が働いています。2003年が34.7%であり、2013年は39.8%と20年前から10年前は緩やかな伸びだったのが、この10年で急激に上昇しました。

そして、70~74歳は34.5%と3人に一人が働いており、75歳以上になっても11.5%と就業に意欲的です。特に男性は、65~69歳で6割以上、65歳を過ぎても4割以上の人が働いています。

その理由は、20年前の60歳と比べて現在の60歳は、健康寿命が男女ともに3年以上伸びるなど、働ける体力や気力があることも考えられます。

また、令和3年の4月に高年齢者雇用安定法が改正され、70歳までの就業確保の機会を事業主に対する努力義務とし、希望があれば70歳まで働ける環境が整ったことも影響しているように思います。

一方で、少し前のFIREの盛り上がりに代表されるように、日本人の勤労意欲は国際的に高くはないように思います。海外の調査によると、日本人の仕事への熱意(エンゲージメント)はワーストレベルです。
「熱意ある社員」「働く幸福度」最下位 日本の数字が低いカラクリ:日経クロストレンド (nikkei.com)

仕事への熱意は低いが勤労意欲は高いという興味深い状態です。シンプルに考えれば、経済的な理由で仕方なく働いていることになります。

調査の結果でも、そのように出ており、(独)労働政策研究・研修機構が行った「60代の雇用・生活調査結果」では、仕事をしている理由は、「経済上の理由」が 76.4%を占めます。
記者発表(令和2年3月31日)『「60代の雇用・生活調査」結果』|労働政策研究・研修機構(JILPT)

一方で、高齢社会白書を見ると、現在収入のある仕事をしている60歳以上のうち、「働けるうちはいつまでも」働きたいと回答した方が約4割います。

これを見ると経済的な理由はもちろんだけれども、働く理由はそれだけではないように思いました。やはり、男性は特に、働いて稼ぐことを続けた方が健康的なのではないかと感じます。

長く働いていると理不尽なことがいろいろあります。
・家庭よりも仕事を優先した結果、退職後に孤立した。
・リストラにおびえ出世するしかなかったが、その結果、自分が働き始めた当初忌避していたようなビジネスパーソンとなってしまった。
・再雇用になったはいいが、かつての部下に顎でつかわれるのに耐えられない。
こうしたケースは枚挙にいとまがありません。

最近、「等身大の定年後」(奥田祥子著)と言う本を読みました。著書が、数十年に渡って、複数の人に継続的に長期取材を行い、転職、再雇用、女性の社会推進等、様々な角度から定年後のケースを描いた新書です。

中々長期間にわたって同一人物の心境やキャリアの変遷を追った書籍はないため、個人的にはとても新鮮に感じました。いくつものビジネスパーソンの定年後までの葛藤や苦悩する姿が描かれているのですが、なかなかリアルな悩みが描かれています。とても学びの深い本です。

自分の周りのケースやこうした書籍や記事を見ても、長く働き続けることは大変なことばかり起きます。しかし、それでも働き続けるのはお金以外の理由があるように思います。

確かに、お金がないから働くも真実ですが、特に男性は心身の健康のために働き続けた方がよいと感じます。

高齢社会白書を見ると、65~74歳の運動習慣のある人の割合は減少傾向にあります。年齢を重ねても健康を維持するには運動は不可欠ですが、運動習慣のある人は4割弱です。

また、認知症の高齢者数が増えてきています。高齢になればなるほど、認知症のリスクは高まるので、高齢化が進む日本では自然なように見えます。
令和6年版 高齢社会白書(全文)(PDF版) (cao.go.jp)

仕事があると、自然に運動習慣も叶うことになります。通勤のために電車にも載るでしょうし、オフィスに行くには階段を上ったり歩いたりします。激しい運動ではないですが、健康維持するための立派な運動です。

何かを作ったり、書類を整理したり、帳簿をつけたりと、頭で考えながら作業をすることになり、認知症の防止にも寄与しそうです。

精神の安定にも良いでしょう。

仕事をして対価をもらうということは、単純に社会において必要なことをしたことによる報酬です。

「何のために仕事をしているのだろう?」という疑問は、若い人を中心にぶつかる仕事の悩みですが、「お金のため」は答えになりえます。

年を重ねても仕事をして、毎月年金とは別に給与が入ると、自分は社会に必要とされているという自己肯定感を持てるように思います。

もちろん、孫の世話やボランティア、自分の趣味など、意識・無意識にかかわらず、自分を肯定してくれる何かがある人は素晴らしいことです。

しかし、定年後に何するかが固まっていない人にとっては、とりあえず仕事を続けてみるは、自分を肯定するシンプルな答えになるのではないかと思います。

また、仕事をするのは個人事業であれ会社勤めであれ、社会と接点を持つことになります。顧客や同僚と会話もするでしょうし、時に怒ったり悔しい思いをすることもあります。それはすべて刺激であり、年を重ねたからこそ必要になるものではないでしょうか。

仕事一本やりだった人が、定年を境にやることがなくなってしまい、どうしたらよいかと悩むということはよく聞く話です。

私の近い親類でも、定年後にやることがなく、タバコとテレビ中心の生活をしていたら、70前後で体調が急変し亡くなってしまいました。

定年後も自分は仕事しかない、それはそれでよいのだと思います。仕事は大変ですが、一生をかけられる最高のエンターテイメントにもなりえます。

まだまだ先の話ですが、私自身はどうでしょうか。公務員の定年延長が決まった以上、65歳までは働き続けるでしょう。

また、可能であれば、公務員の延長上かは分かりませんが、その先も働き続けたいと思います。

私は何ものでもない人間です。妻のように仕事以上に情熱を注げるものがあるわけでもありません。サッカーや投資、読書は好きですが、週5日、一日8時間以上向き合い続けられるかと言えば無理な話です。

もちろんこれから後20年ありますし、一生をかけられるものが見つかるかもしれません。

ただ、ワーカーホリックではありませんが、それなりに仕事は好きであり、自分と社会の関係を保っている価値のあるものです。

可能な限り働き続けられるように健康を保ちつつ、社会に「お金を出してもいいから、これをやってほしい。」と言われる様であり続けたいなと思います。

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